市民オーケストラ
国分寺フィル第68回定演 - 市民オーケストラの楽しみ
国分寺フィルハーモニー管弦楽団は、"国分寺にオーケストラを!"を発端に、1987年に結成された市民オーケストラ。年2回の定期演奏会を、多摩地区の幾つかのホールで開催している。2025年5月18日に、第68回定期演奏会を、日野市の"ひの煉瓦ホール(日野市民会館)"で開催した。このホールは多目的ホールだと思うが、構造的にはシューボックス型。左右の壁側に2階や3階席はなく、パイプオルガンもないが、ステージや壁面には波型構造を取り入れて、音響には気を配っている。座席数は1100席程度で、所沢のミューズや赤坂のサントリーホールの半分程度だが、市街地から離れた杜の中にあり、なかなか良い雰囲気だ。 プログラムは、ムソルグスキィ、ドリーブ、ラヴェルの小品の後に、休憩を挟んで、チャイコフスキーの交響曲第4番。指揮者の山本亮氏は期待の若手指揮者で、現在読売日本交響楽団の指揮研究員を務めている。ステージでの指揮ぶりは、身振り手振りが明確で、演奏者にとって分かりやすいものだと思う。 前半の最初の曲は、ロシア五人組のムソルグスキィ作曲の交響詩"はげ山の一夜"。深夜に悪魔や精霊たちが禿山に集い大宴会を開いて大騒ぎするが、やがて夜明けを告げる村の鐘の音で皆消え去り、禿山はいつもと変わらぬ静かな朝を迎える。この分かり易いストーリーと、リムスキー=コルサコフの見事な編曲によって聴き応えのある音楽になっている。国分寺フィルは元気があり、緊張感をキープしながら突き進んでいった。 2曲目はフランスのロマン派ドリーブ作曲のバレエ音楽"コッペリア"の抜粋。コッペリアは動く人形で、コッペリアを創った博士やら、コッペリアに恋した村の青年も登場するドタバタ劇。今回演奏したのは、マズルカ、ワルツ、チャールダーシュなどの舞曲で、キャッチーなメロディーに溢れ、演奏もハイテンションで楽しめた。 3曲目は、ラヴェルの"古風なメヌエット"。若い頃に作曲したピアノ曲を、晩年に自身で管弦楽用に編曲した。曲の構成は、主部-中間部-主部再現部の三部構成。曲想は後年の印象派的な複雑さはなく素直だが、管弦楽に編曲すると、メロディーを奏でる楽器が次から次へ入れ替わり、ピアノ版とは異なり奥行きの深さを感じさせる。その意味では、熱演だった。 最後は、チャイコフスキーの交響曲第4番ヘ短調作品36。"過酷な運命と戦い、それを克服する"というベートーベンの"運命”と同じ図式を、4つの楽章で構成している。第1楽章冒頭のホルンとファゴットのファンファーレが運命の主題で、続いて絶望と甘く優しい夢のテーマが絡み合うが、絶望のまま終了。第2楽章は緩やかなに進み、憂鬱と過ぎし日の思い出がテーマ。第3楽章は、冒頭の弦楽器だけのピッツィカートが印象的だが、何やら空想を巡らしているように過ぎ去る。第4楽章はフィナーレ、様々なメロディーが現れた後に、運命の主題が現れ曲を渾身のパワーで締め括る。国分寺フィルの演奏は、インテンポで突き進む。この大曲は様々な曲想が含まれているので、テンポの緩急や音の強弱にメリハリがあるともっと良かったと思う。 アンコール曲は、チャイコフスキーのバレエ組曲"くるみ割り人形"から、"葦笛の踊り"。本番が終わったためか、緊張感から開放され、全力投球の演奏だった。客席は、9割程度埋まり盛会。市民オーケストラの楽しさを感じさせてくれた。

