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ホトケノザ - 只者ではない雑草

 ホトケノザ(仏の座)はシソ科オドリコソウ属の一年草あるいは越年草であり、春の開花期になると野原や道端等に群がって自生する。ホトケノザの葉は縁にギザギザがある半円形で、2枚の葉が隙間なく茎を取り囲むように生え、これが仏様が座っている蓮華座に似ているので仏の座と呼ばれている。そしてその上に仏様である紫がかった桃色の花が鎮座する。また、葉が段々になって生える様子が三階建ての住宅の屋根を思わせるためサンガイグサ(三階草)と言う別名もある。原産地は不明、ユーラシア大陸やアフリカ大陸説、果ては日本説もあり、世界的に広く分布する。日本では、本州から沖縄の各地に分布するが、北海道にはないので、比較的温暖な気候を好むようだ。春の極ありふれた雑草ホトケノザはどんな植物なのだろうか。 【基本情報】 ・名称:ホトケノザ(仏の座) ・別名:サンガイグサ(三階草)、ホトケノツヅレ(仏の綴れ) ・学名:Lamium amplexicaule L. ・分類:シソ科 オドリコソウ属の一年草あるいは越年草 ・原産:不明 ・分布:ユーラシア大陸、アフリカ大陸。日本では、北海道を除く本州から沖縄 ・花言葉:輝くこころ ■花 ホトケノザの蕾や花は2枚の葉からなる蓮華座の上に中心を取り巻くように配置され、それが四角い茎に沿って何層かにわたって存在する。ホトケノザのような形状の花は唇形花と呼ばれ、上唇はかぶと状で短毛がびっしり生え、下唇は2裂し濃い紅色の斑点がある。上唇の内側には4本の朱色の雄蕊が連なっており、雌蕊はその雄蕊の中に埋もれて良く見えない。この構造は自家受粉しそうでかなり危ない。花の奥には密があり、ハチやアブが花に頭を突っ込むとその背中に雄蕊の花粉が付いて外に運ばれていき、他の個体が受粉することになる。 ■開放花と閉鎖花の二刀流 ホトケノザは本来開放花で、昆虫などによって他の個体の花粉を受粉して遺伝的に優位な子孫を残そうとする。ところが、いくつかの理由で閉鎖花を作り、仕方なく自家受粉することがある。ホトケノザが開花するのは早春の未だ寒い時期で花粉を媒介する昆虫が少ないため、閉鎖花により自家受粉することがある。この閉鎖花の中には花柱も蕊もあるので自家受粉は容易だ。ただし開放花も閉鎖花も蕾の形状は同じで、見た目では区別はつかない。また、同じシソ科オドリコソウ属 のヒメオドリコソウとは花期や生育地も重なるため、近縁種との交雑を防ぐため閉鎖花を作るという説もあり、ヒメオドリコソウが生育している場所では、ホトケノザの閉鎖花の割合が高くなることが報告されている。そう言われるとこの2種の交雑種は見たことがない。なかなか自律的な生存戦略と思う。 ■葉 葉は対生で鈍い鋸歯があり、茎の上部では葉柄はなく茎を抱くように真ん中で合わさって丸くなり(仏の座)、下部では葉柄を持つ円形になる。 ■ホトケノザに集まる虫 ホトケノザには様々な昆虫が集まってくる。先ず、蜜を求め花粉を運んでくれるハチやアブがいる。これはGive & Takeの関係だ。それから良く見るとアブラムシがあちこちにへばり付いている。アブラムシはホトケノザが光合成で作った養分を運ぶ茎や葉にある師管から養分を吸収しているので、これは寄生にあたる。また、アリを見かけるが、どうやらホトケノザの種子を運んでいるようだ。種子にはアリが好むエライオソームと呼ばれる物質が含まれ、アリによって巣の近くに運ばれ、芽吹くらしい。これはGive & Take。ホトケノザは、共生、寄生を含め多様な昆虫を集めている。 ■種子 ホトケノザの種子は花の枯れた跡にできる。熟した種子は地上に落ちだり、アリに運ばれたりして次世代に命を繋ぐ。 ■ホトケノザと人間 春の七草の一つである"ホトケノザ"は本種のことではなくキク科のコオニタビラコであり、誤解を受け易い。本種は食用にも薬用にもならず、残念ながら直接的に人間にとって有益なものではない。しかし、自然栽培をしている農家によれば、雑草はその畑の土の状態を知らせるバロメーターであり、ホトケノザが生育する土壌は比較的肥沃と言われている。その土地を作物を栽培するため耕すとホトケノザの様な雑草の残余が堆肥や肥料となり、畑の土壌を豊かにしてくれる。目立たないところで重要な役割を果たしている。 また、生態に関しても自律的に閉鎖花をコントロールし、環境の変化に対応できる能力は只者ではない雑草だ。

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サンシュユ - 楽しみは早春と秋

 サンシュユ(山茱萸)はミズキ科ミズキ属の中国原産の落葉小高木。春先に葉が出る前に黄色い花を咲かせるのでハルコガネバナ、秋にはグミに似た赤い実をつけるのでヤマグミ、アキサンゴとも呼ばれる。日本には約300年前の江戸時代享保年間に朝鮮経由で種子が日本に持ち込まれた。早春に鈴なりの黄色い花が咲くので観賞用に庭木や公園樹として栽培され、また秋の艷やかな赤い果実は見ても良く、生薬にも利用されている。毎年2回、黄と赤で季節の変わり目を告げてくれる樹木だ。北海道を除く各地の人の生活圏で栽培されているので、日本人にはすっかりお馴染みの存在になっている。 【基本情報】 ・名称:サンシュユ(山茱萸) ・別名:ハルコガネバナ(春黄金花)、アキサンゴ(秋珊瑚)、ヤマグミ(山茱萸) ・学名:Cornus officinalis ・分類:ミズキ科 ミズキ属 落葉小高木 ・原産国:中国(享保年間の1720年頃に渡来) ・分布:日本国内では東北から九州地方 ・花言葉:持続、耐久、強い愛 ・季語:春 ■蕾 サンシュユの枝は箒を逆さにしたように広がり、斜めに立ち上がる。枝分かれした先に蕾ができる。茶色の4枚の苞葉に包まれ複数の黄色い楕円体が集まっているが、この一つ一つが蕾なので、サンシュユは集合花だ。蕾の先は始めは尖った形をしているが、やがて丸みを帯び花が咲く。 ■花 サンシュユの花は集合花であり、4枚の苞葉に包まれている。その内側には、ほぼ同じ長さの花柄をもつ多数の鮮やかな黄色い花が放射状に咲く。この散形花序は成長するにつれ花柄は長くなり、集合花の輪郭は球形から横方向に広がっていく。 若葉に先立って開花するので、開花の季節は木全体が黄色に染まる。樹高は10mを越えるので、遠くからも良く目立つ。 花の構造は、花径は4~5mm、花弁は4枚で反り返り、中央に雌蕊が1本、それを取り囲むように雄蕊は4本。全て黄色で鮮やかだ。 ■果実 花が終わると、長く伸びた花柄の先に子房が膨らみ始める。晩春には子房は未だ緑色だが、楕円体の果実の形になり、その先に雌蕊の痕跡が残る。この頃には葉が木を覆う。葉は有柄で互生し、卵形から長楕円形で側脈は5~7対あり、葉先が尖っている。紅葉はするが色は渋く、形も崩れりたりするので殆んど目立たない。  秋になると果実は色づき始める。果実は長さが2cm程度の楕円体で核果。これは種子を包む内果皮が硬化して核となり、その核を囲む中果皮が多肉質となり、野鳥に運んでもらうには好都合。ヒヨドリやオナガが好むようだ。  果実は晩秋には赤く熟し、グミのそれに似ているのでヤマグミ(山茱萸)とも呼ばれる。また、鮮やかな赤い実であるためアキサンゴ(秋珊瑚)の名もある。果実は甘いが酸味と渋みがあり生食はしないが、薬用として利用されている。また冬には赤い実が残ると同時に、来るべき春に備え花の芽も成長をしている。 ■サンシュユと日本人 サンシュユは、日本では先ず生薬としても利用された。赤熟した果実から種子を除き、乾燥させた果肉を山茱萸の名で日本薬局方に収録されている。効能は、強精、止血、滋養強壮、頻尿、収斂、冷え性、低血圧症、不眠症等々。漢方薬の牛車腎気丸、八味地黄丸、杞菊地黄丸等に利用されている。 人里で早春に黄色い花を咲かせる樹木は、サンシュユの他にもロウバイやマンサク等多々ある。この中でサンシュユは樹形が逆箒形で立派で風格があり、一面に黄色い花が咲く様は春に咲くピンクのソメイヨシノの前触れのようで既視感もある。秋の深い赤の艶のある実も美しく、四季折々の楽しみもある。そして花柄が伸びるに連れて、その先の花が果実に変化していく成長過程もストレートに分かりやすい。渡来種ではあることを忘れてしまいそうなくらい真っ直ぐだ。

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オウバイ - リアルな迎春花

 オウバイ(黄梅)は早春に他の花に先駆けて黄色い花をつける中国原産のモクセイ科ソケイ属(ジャスミン属)の落葉低木の庭木。中国では迎春花、英語圏ではWinter Jasmineと呼ばれていて、冬から春への移ろいを象徴する花だ。日本では同じ時期に開花するバラ科のウメの仲間ではないが、花の大きさや正面から見たイメージが似ているので黄梅と呼ばれるようになった。これが吉と出るか凶と出るかは微妙で、少なからず誤解を与えているように思う。  ウメの花弁は5枚の離弁花だが、オウバイの花弁は6枚で根元でつながる合弁花。オウバイの花の雌蕊は1本で細いが露出しているので目立つが、雄蕊は2本で合弁花の根元付近にあるので外からは殆ど見えない。また、雄蕊が細い合弁花の根本にあるため、花粉を媒介する昆虫は入ってこれないので、実はならない。このため、オウバイは挿木で繁殖する。枝は垂れ下がる半つる性で、地面についた枝からは根が発生して新たな株ができる。また、ジャスミン属の植物でありながら芳香はない。どうやらオウバイはかなりユニークな植物のようだ。 【基本情報】 ・名称:オウバイ(黄梅) ・別名:迎春花(中国語名)、Winter Jasmine(英名) ・学名:Jasminum nudiflorum Lindl. ・分類:キク類 モクセイ科 ソケイ属(ジャスミン属)の落葉低木 ・花期:1月から咲き始め4月まで ・原産国:中国 ・用途:庭木、薬用 ・季語:立春(2月4日頃)から啓蟄の前日(3月5日頃)まで ・花言葉:期待、恩恵、控えめな美 ■オウバイの花 枝先に複数の蕾を持ち、順番に咲いていく。咲き始めは花弁の輪郭は、蕾の色と同様に茶色。開花後、花の色は鮮やかな黄色から、退色したように次第に白っぽくなる。花を横から見ると合弁花の筒状の部分が長く、雄蕊が奥まったところにあるのが透けて見える。 ■オウバイと日本人 オウバイは江戸時代の寛永年間(1624~44年)に中国より渡来し、庭木や観賞用に栽培され品種改良も行われてきた。日本人とは既に400年位のお付き合いだ。しかしどうしても名前が気になる。同じ季節に白梅や紅梅が咲き、一見似た様な形をした綺麗な黄色い花がやってきたから黄梅にしてしまったのだろう。生態も形も異なるのにそうしてしまったのは、園芸種ゆえのビジネス上の方便かもしれない。早春の期待を表すならば、原産国名の迎春花の方が納得できる。それでも日本人は、花の人格権を忖度しつつ、春になればウメもオウバイも見に行くのだ。 また、オウバイは花は飲むことによって解熱や利尿に用いられる生薬でもある。葉についても飲んだり塗布すると、できもの、はれもの、打ち傷や切り傷等に効果があると言われている。 ■近縁種ウンナンオウバイ(雲南黄梅) オウバイに良く似た植物にウンナンオウバイ(別名オウバイモドキ)がある。同じモクセイ科ソケイ属のつる性低木だが常緑樹。花期は少し遅く3~4月、花弁はやや大きくて6~10枚あるので、二重または八重咲き。明治時代に中国より渡来。全体的にオウバイはシンプルで清楚だが、ウンナンオウバイは豪華な感じなので区別はできる。

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セツブンソウ - 春への憧れ

 セツブンソウ(節分草)はキンポウゲ科セツブンソウ属の多年草。春に落葉樹の林で真っ先に花をつけ、夏になると姿を消す"春の妖精"(スプリング・エフェメラル、正式には"春植物")の一つ。節分(立春の前日)の頃に開花するので、節分草と呼ばれている。日本の固有種で、本州の関東より西に自生。石灰質の土壌や半日陰の涼しい場所を好み、秩父の小鹿野町両神には大きな群生地がある。 【基本情報】 ・名称:セツブンソウ(節分草) ・学名:Eranthis pinnatifida Maxim. ・分類:キンポウゲ目 キンポウゲ科 セツブンソウ属の多年草 ・分布:日本固有種で関東以西の本州 ・花言葉:気品、光輝、微笑み、人間嫌い ■根生葉と茎葉 セツブンソウは春に花が咲き、夏には地上部分から姿を消す。その後、地下に球状の根塊から根を出して成長しながら春を待つ。春になると葉が生えるが、これには2種類ある。株元から出る根生葉と茎から出る茎葉だ。根生葉の外形は5角形で深く3つに裂け、それぞれの裂片はさらに細かく分かれる。学名のpinnatifidaは羽根のように裂けているという意味で、根生葉の形に由来する。茎葉は花の直下にあり、3つに裂けた2枚の葉が対になっている。この茎葉に上に蕾ができ花が咲く。 群生したセツブンソウの写真で、花の下にあるのが茎葉、花がついていない5角形のものが根生葉である。 ■花の構造 先ず、茎葉の上に白い蕾が出来る。未だ花弁は開かず、わずかに雄蘂や雌蕊が見える。ところがこの白い花弁のようなものは萼片とのことだ。かなり花の構造は複雑なようだ。  開花した様子を様々な角度から見てみよう。花の中央部は円心上に、中央に赤紫色の2~5本の雌蕊、その周囲を紫色の多数の雄蘂、最外周に黄色の蕊のようなものが取り囲む。この黄色の部分が、何と花弁に相当する。花弁の形は逆四角錐形をしており、底に蜜を出す蜜腺がある。花弁の上方の外側の2つの頂点は黄色い球形をしているので良く目立つが、内側の2つの頂点は黄色い点が小さいか見えないので目立たない。そのため花弁は2つの黄色の先端がYの字状になっているように見える。その結果、花弁の数は7~8本程度。昆虫は目立つ黄色を目指して密を求めて集まり、花粉を運ぶ。 また、一説には虫媒花であるとともに風媒花でもあるらしい。昆虫の少ない寒い時期に生き延びる手段なのかもしれない。 ■日本人とセツブンソウ 日本人にとってセツブンソウは、その名の通り春の節分を知らせる山野草であり、スプリング・エフェメラルと呼ばれる植物の中でもとりわけ早く咲き、馴染み深い植物だ。けれども、地質や環境等の生育制約が多く準絶滅危惧種にもなっていて、身の回りで自生株に出会うことはまずない。植物園や自生地に出かけるのも良いが、大方の日本人は栽培株を育てながら、自生のセツブンソウと同期しながら早春の季節の移り変わりを楽しんでいるのだと思う。セツブンソウには実用的な期待は不要(現実にも皆無)。セツブンソウは春へ憧れを昇華する手段となっているのだ。

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ジュウガツザクラ - 孤高の冬の花

 寒い冬に堪え、春になって桜が満開になると、日本人は皆活気みなぎる。暑い夏を過ごして人の元気がなくなる頃、秋から冬に再び桜の花を見かける。しかし同じ桜と言っても随分雰囲気が異なるので、また直ぐに元気を取り戻す訳にはいかない。何が違うのか?春の桜は皆一斉に大量に同じ色調で咲くが、秋から冬に咲く桜は花期が長く、蕾から花への移り変わりもゆっくりとあちこちの枝で交互に進み、花も疎らでひっそりと咲き続けるので、あまり注目されることない。けれども、この寒空に咲く桜は、小振りであるが清楚で、花色の濃淡が美しく、群れずに咲き孤高を貫く姿勢が清々しい。春の桜とは異なる観念だ。  秋から冬に咲く桜は、一般に冬桜と呼ばれる。冬桜に自生株は無く、すべて栽培種として交配によって創られた。代表的な冬桜はジュウガツザクラ(十月桜、江戸彼岸と豆桜の種間雑種)、フユザクラ(冬桜[広義の冬桜の名称と同じ]、大島桜と豆桜の種間雑種)、コブクザクラ(子福桜、唐実桜と小彼岸or江戸彼岸の交配雑種)等。冬に咲く桜として昔から選抜され生き延びてきた品種だ。  近所の畑の脇に冬桜が咲いていた。花の色は白が多いが淡紅色や、それらが段階的に変化したものもある。花弁数はソメイヨシノのように明確に5枚とは言えず不定。少なくとも5枚以上だが8~10枚程度が多い。栽培種ゆえの不安定さが残っているのだろうか。花の特徴からすると、この冬桜はジュウガツザクラのようだ。 【基本情報】 ・名称:ジュウガツザクラ(十月桜) ・別名:オエシキザクラ(御会式桜) 日蓮聖人の忌日に行う御会式のある10月13日頃から開花することから ・学名:Cerasus ×subhirtella 'Autumnalis' Makino ・分類:バラ目 バラ科 サクラ属 ・栽培種:マメザクラとエドヒガンの交雑種 ・花期:秋から冬にかけ断続的に、また4月上旬の2回 ・花言葉:神秘な心、寛容、優美な女性 ■ジュウガツザクラの花 ジュウガツザクラの木は秋になると葉を落とし、花の時期を迎える。枝には多くの蕾がついているが、花は三々五々咲き始める。青い空を背景に、小さな花が星のように点在している風景は、印象深い。 この花は冬の間は細々と咲き続け、4月にも咲く。 ■ジュウガツザクラと人間 人間とジュウガツザクラの関係には、薬効とか食用とかの接点は全く無く、観賞用としてのみ存在価値がある。栽培品種であるジュウガツザクラは結実することは稀で、人の手を介して挿し木や接ぎ木で命脈を維持している。人間は何故この様に手間をかけるのか、ソメイヨシノのためなら兎も角。 夏が過ぎ落葉が進み周りの景色が侘びしくなる頃、ジュウガツザクラは開花しする。この時期に空を見上げると地味なジュウガツザクラの花でも印象に残る。しかし春が近づきロウバイやウメが鈴なりに咲き始めると途端に生彩を失う。秋から冬にかけてのこの短い時期がジュウガツザクラの命だ。人は桜一家のジュウガツザクラを眺めつつ春の到来に期待するのだ。ジュウガツザクラは孤高の冬の花だ。

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アオキ - 冬の待ち人

 アオキ(青木)は日本原産の常緑低木。北海道を除く日本各地や、朝鮮半島に分布。植物分類上はやや混乱。APG植物分類体系ではアオキ属であるが、上位分類ではアオキ科ともガリア科とも呼ばれる。四季を通じて葉も枝も緑で、冬に赤くなる実とのコントラストが美しい。野山に広く自生し、園芸用としても育てられる。海外にも輸出され、学名のAucubaは青木葉、japonicaは日本の…と言う意味、英名のJapanese laurelは月桂樹の葉の形と色から名付けられたらしい。ここまでは、見目麗しく格調高いアオキのイメージを与えるが、一方で繁殖力は旺盛。人の身長より高くなり、その下に生える植物の成長を妨げるので環境保全の観点からは駆除の対象にもなりうる。程々に分散して生育してくれると良いのだが。散歩道では四季を通して必ず出会う植物であり、日本人には馴染み深い植物だ。 【基本情報】 ・名称:アオキ(青木) ・学名:Aucuba japonica Thunb. var. japonica ・英名:Japanese Aucuba ・分類:アオキ科orガリア科 アオキ属 ・原産地:日本 ・分布:北海道を除く日本各地、朝鮮半島 ・生態:雌雄異株 ・花言葉:初志貫徹 ■アオキの花 晩冬に冬芽が膨らみ、早春になると花序が伸び、多数の蕾と若い葉が現れる。雄株の花は褐色を帯びた紫色で4弁で、雄蕊も4本。花の中央に雌蕊が退化した痕がある。  良く観察すると、何故か花弁と雄蕊が5本のものもあった。  雌株の花も雄花と同様の色で花弁も4。中央に緑色の花柱が突き出しているて、雄蕊は消失。また不思議なことに3弁の雌花を発見(下図中央部分)。アオキの花弁数は多少曖昧さがあるような。 ■アオキの実 実の形は楕円体で、始めは緑色だが、正月頃から斑に色付き始めて、春には全体が鮮やかな赤になる。成熟した実は渡り鳥のヒヨドリや、小さなネズミたちの餌になる。この様な被食散布により、次世代に命を繋ぐ。春に新たな花が咲くまで実が枝に残ることもある。  春になって変形したり、赤と緑のツートンカラーになっている実が残っていることがある。所謂"虫こぶ”のように大幅な形状変化をしている訳では無いが、なにか生育を阻害するものに遭遇したようだ。これはアオキミタマバエがアオキの実に産卵して寄生し、幼虫、蛹の時期を過ごすためのようだ。 ■人間との関係 日本古来の植物なので、様々な薬効が研究されている。葉には、苦味によって胃の機能を活性化する作用があり、民間薬の陀羅尼助の原料の一つとして配合されている。また、生葉には膿を出させる排膿作用、消炎作用、抗菌作用があり、果実には配糖体のオークビンが含まれていて生理活性物質の機能調節や、物質の貯蔵、解毒などに寄与する。また、民間療法では、生葉を熱して腫れもの、火傷、切り傷、おできの保護や消炎に使われた。  庭木としての利用も盛んだ。イギリスを経由して紹介され、ヨーロッパに各地で栽培された。葉に白や黄色の多くの斑が入る園芸品種フイリアオキが選抜され、日本にも逆輸入されている程だ。葉に斑点のあるアオキは、野山の散歩道でも見かける。園芸種のアオキの種がヒヨドリに運ばれたのかもしれない。  アオキは冬の散歩道で見かけると、古くからの友人に出会ったような気分にさせてくれる。

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オモト - 金生樹か?

 オモト(万年青)の歴史は波瀾万丈。野生種としては中国から日本の温暖な山地に自生するスズラン亜科の常緑多年草であるが、観葉植物としても栽培されて江戸時代には大変なブームとなって、貴重な品種は投機の対象となり"金生樹"と呼ばれた。現在でもネット情報を調べると、植物学的なオモトの記述よりも、園芸種としての栽培法や鉢植えビジネスの話題が多い。オモト愛好団体も組織され、江戸時代から連綿と続く古典園芸植物としての伝統が強いのだろう。しかし、ここ狭山丘陵付近の散歩では勿論金生樹はなく、民家の庭や畑の脇でごく普通のオモトがあるばかりだ。 ■オモトの特徴 オモトの葉は厚い革質で左右対称に広がり、長さは30~40cm程度で先端が尖る。地下にある短くて太い茎から生じるため、地際から直接葉が生えているように見える。しかもこの立派な葉が四季を通して茂っていること、そして大きな葉に包まれて赤い実がなる様子は親子を連想させることから縁起が良いとされている。 【基本情報】 ・名称:オモト(万年青) ・学名:Rohdea japonica (Thunb.) Roth ・分類:キジカクシ科 スズラン亜科 オモト属 ・原産地:日本、中国 ・分布:日本では関東南部から沖縄まで自生 ・生態:自生、及び古典園芸植物 ・花言葉:長寿、長命、母性の愛 ■オモトの花 初夏になると、葉の間から花茎が伸びてその先端に黄緑色の小花が穂状に咲く。花には柄がなく花茎に密着した変わった形をしており、芳香があるが見た目は地味。これでは受粉のために虫を呼ぶのは厳しそう。意外なことに、野生のオモトでは花粉を媒介するのは、何とカタツムリとのこと。地味な花の理由が納得できた。 ■実の形成 花が終わると、秋には緑色の実をつけ、次第に黄色から赤へと変化していく。実が熟すと艶のある果汁の多い実となり、その中に種子が1~3個含まれる。この実はヒトにとっては有毒だが、ヒヨドリ等には食料となり、種子が運ばれていく。 ■人間との関係 オモトには薬効がある。植物全体にサポニン等を含み、溶血作用があり、薬用として強心、利尿薬として利用される。同時に、毒性が強い有毒植物でもあり、呼吸、循環機能に障害や、嘔吐、頭痛、不整脈、血圧降下を起こし死に至ることもある。薬にも毒にもなりそうだが、かなり危険な植物と思っていたほうが良さそうだ。  オモトの本来の姿は、常緑の大きな葉と、それに抱かれた赤い実、大変シンプルな構成だ。これを基に、人間は大変な時間と労力をかけ、葉の形や色、模様を変えた。その様な変わった園芸種を見ても、やはりこれはオモトだと思う範囲にある。これが重要なのかもしれない。育種家はオモトの芸と称して、既存のオモトとは少しでも異なるオモトを創りたかったのだろう。それがオモトの”金生樹”となるのだ。朴念仁には良く理解できない世界だ。  凡人は冬の散歩道でオモトを見かけただけで感激する。単細胞生物だ。

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ジャノヒゲ - 冬の瑠璃玉探し

 狭山丘陵の周辺はアップダウンは結構あり、畑はパッチワークのように区切られ分散している。住民の交通手段は自家用車で、細い道が縦横に走っている。畑の境界には様々なグランドカバー植物で縁取られている。このような環境下では、高低差のある道路から目線の高さで植物を観測出来、思わぬ発見をする。いつものように、トコトコとデジカメ散歩をしていたら、やや黄色くなった細長い葉の中から青い実が出ている。更に葉をかき分けると、鈴なりの実が見つかった。これがジャノヒゲとの出会いだ。  ジャノヒゲ(蛇の髭、学名:Ophiopogon japonicus)はキジカクシ科ジャノヒゲ属に分類され、草丈は10cmを越える位の常緑多年草。日本では北海道から九州まで、世界的には東アジアの山林に広く分布。別名が多く、リュウノヒゲ(竜の髯)、ネコダマ(猫玉)とも呼ばれる。園芸品種としても発展。近くのマンションでも、手入れがかからいないためか庭のグランドカバーとして利用されている。普段は余り意識しないが、身近な植物だ。 【基本情報】・名称:ジャノヒゲ(蛇の鬚)・別名:リュウノヒゲ(龍の鬚、竜の鬚)、ネコダマ(猫玉)・学名:Ophiopogon japonicus・分類:キジカクシ科 ジャノヒゲ属・分布:東アジア、フィリッピン、日本では北海道から九州まで(原産国の一つ)・花期:夏・結実期:冬・効用:園芸、グランドカバー、薬用・花言葉:変わらぬ想い、不変の心 ■ジャノヒゲの花 初夏になると、葉の間から花茎が伸び、その上部に総状花序を形成。蕾が開くと、花は白か薄紫色で下向きに咲き、花弁は6枚でやや反り返り気味。小さな清楚な花で、繁る葉に埋もれて見逃しそう。 ■ジャノヒゲの実 花が終わると丸い実ができる。はじめは緑色だが、冬になると成熟前に子房から露出した種子が鮮やかな瑠璃色に熟す。これを見ると宝物を見つけた気分になる。 ■近縁種オオバジャノヒゲ オオバジャノヒゲとジャノヒゲは植物学上分類も生活史も似ている。オオバジャノヒゲは背が高く、葉の幅は太く、種子の色が黒みがかっていると言われている。ジャノヒゲの群生地を冬に観察してみると、結構な割合で黒い実も見つかる。初夏にオオバジャノヒゲの長い花茎が観測できたのでどうやらジャノヒゲの群生地にオオバジャノヒゲも混在して生育しているようだ。 ■人間との関わり合い 何年も同じジャノヒゲの群生地を観察してきたが、その生育領域に変化はない。地下に根を張り巡らし、他の外来植物等が入り込む余地がないのだろう。環境に適した原産地の強みかもしれない。また、地下の肥大した根を乾燥したものは麦門冬と言う生薬になり、鎮咳や強壮に効果があるとのこと。そして近年は都会の住宅やマンションでの手入れ不要のグランドカバーの需要、等々。文章にすると何の面白みもない。ただ誰もが賛同するのは、夏の間は密かに成長を続け、厳冬期に見事な瑠璃玉をプレゼントしてくれるジャノヒゲの心意気だ。

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自然
マンリョウ - 冬の風情

 冬の散歩道では、花より果実が目につく。特に赤い実がついている小さな樹木に出会うとハットする。これらの樹木は、良く見ると少しずつ姿が異なる。日本人は古くから、これらの樹木を正月の縁起物として愛でている。赤い実の数や大きさ、樹形の見栄えを吟味して、上から万両(マンリョウ)、千両(センリョウ)、百両(カラタチバナ)、十両(ヤブコウジ)、一両(アリドオシ)と番付まで作ってしまった。これらの中で、野山でも庭園でも良く見かけるマンリョウについて観察する。  マンリョウは、サクラソウ科ヤブコウジ属の常緑小低木。同属のヤブコウジは地を這うように生えているが、マンリョウは1m程度まで伸び、根元から新しい幹を出して株立ちする。赤い実の形は似ているが、実の数はマンリョウの方が多い。と言っても実生から育った若木では、なかなか判断しにくい。その時は、マンリョウの葉に着目すべし。葉は互生で形は長楕円形、葉の縁は波打ち形の鋸歯があり、歯の表面は光沢のある緑色で裏面は白っぽい。若い実生のマンリョウの木でも葉を見れば区別が可能だ。  マンリョウは、世界的には日本を含む東アジアからインドに分布。日本では関東以西の照葉樹林に自生するが、江戸時代に園芸植物として植栽され、品種改良も行われた。現在でも、日本固有の野生植物であり、且つ園芸植物でもある。 【基本情報】 ・名称:マンリョウ(万両) ・学名:Ardisia crenata ・分類:サクラソウ科 ヤブコウジ属の常緑小低木 ・分布:東アジアからインドの温暖な場所に広く分布     日本では関東以西の各地の野山、及び庭木として植栽 ・花言葉:寿ぎ、財産、金満家、穂のある人、慶祝 など ■マンリョウの生態 マンリョウの開花は夏。十数本に枝分かれした先に小さな白い花をうつむき加減につける。花冠は5つに裂けてそり返る。雄蕊は5本、雌蕊は1本。  果実は内部に種がある核果で、花が終わった後にゆっくりと緑から赤に色づき、12月頃に真紅になる。鳥などに食べられなければ、春まで残る。 ■マンリョウの変わり種 江戸時代から始まったマンリョウの品種の選抜育成の一番の成果はシロミノマンリョウ(白実の万両)だろう。本種は、赤系統に関わるアントシアニンを生成する遺伝子も黄色の色素も欠き、果実が白実の品種だ。正月の縁起のため、赤いマンリョウとこのシロミノマンリョウをセットにして紅白にしたかったのだろう。そう言えば小学校に祝い事があったとき、紅白万両、いや紅白饅頭を貰ったことを思い出した。  キノミノマンリョウ(黄の実の万両)は実が黄色でやや赤みがかったもの。どのような経緯で品種改良されたかは良く分からないが、旅先で偶然見かけた。 他にも果実の大きさや葉の形や色が変わったマンリョウが育成されているようだ。 ■人との関わり合い 中国では漢方薬として利用されている。マンリョウの中国名は朱砂根(シュシャコン)と言い、根を乾燥させた生薬"朱砂根"は感冒や扁桃腺炎に効く。また、葉は朱砂根葉(シュシャコンヨウ)と言い、打撲傷などの外用治療にお使われる。  日本でのマンリョウの役割は何か?これと言って直ぐに思い浮かぶものはない。結局、冬の観賞用植物としての価値が最も高そうだ。日本原産のマンリョウが人間によって庭木として植えられても、マンリョウからすると単に生息領域が拡がるだけで、野生のマンリョウには何の影響も与えないのだろう。これは攻撃的な外来種とは別の世界だ。そして年末に赤い実をつけて春に実がなくなるまでの長い冬の期間に密かに存在を主張し続けている。例え、雪降っても美しい。

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自然
ロウバイ – 風変りな春の使者

 冬の散歩道は寂しい。色褪せた常緑樹を眺めながら、落葉樹の枯れ葉を踏みしめながら歩く。植物たちは寒さに耐えながら季節の遷り変わりを静かに待ち構えている。そのような時期でも見事に咲く花はある。ロウバイだ。人の背丈より少し高い木の枝に黄色い蕾や花が鈴なりになっている。特に目を引くのは透けたような黄色い花弁で、この質感は独特のものだ。また、周りに漂う甘い香りも良い。  ロウバイはクスノキ目ロウバイ科の落葉樹で、中国原産。江戸時代初期に日本に伝わり、庭木として日本各地で植栽されている。身近なところでは、埼玉県長瀞の宝登山山頂のロウバイ園はその規模と眺望で有名。また、所沢市の航空公園内の日本庭園彩翔亭に隣接してロウバイ園があり、ここでは多くのロウバイの品種を観賞できる。近所の所沢市北野にある 梅林山全徳寺の山門付近にロウバイが植えられ、開花時期には地元のニュースとなり、三々五々見物者が訪れる。また、民家の庭でも時々見かける。冬に逸早く咲く花として、すっかり定着しているようだ。 【基本情報】 ・名称:ロウバイ(蝋梅)、別名:カラウメ(唐梅) ・学名:Chimonanthus praecox ・分類:クスノキ目 ロウバイ科 ロウバイ属 ・原産地:中国 ・性質:低木の落葉広葉樹 ・用途:庭木 ・花言葉:慈しみ、ゆかしさ、先導、先見 ■ロウバイの種類・ロウバイ(蝋梅) ロウバイ類の基本品種で、花の中心部は暗紫色、その周囲が黄色で、花弁は細め。 外来種だが、ロウバイ類の中では古くからあるのでワロウバイ(和蝋梅)とも呼ばれる。 ・ソシンロウバイ(素心蝋梅) 花芯も花弁も含め、花全体が黄色。他品種より香りは強い。最もポピュラーな品種。 ・マンゲツロウバイ(満月蝋梅) 花の周囲は黄色でも花芯部分が紫色を帯びる。花の真ん中に満月が浮かんで見えるので命名されたとのこと。素晴らしい発想だ。他品種より花が大きめで花弁が丸目で花色が濃い。素心蝋梅の実生から選抜された品種。 ■花の構造 春に咲くサクラの花は、萼片が5枚、花弁も5枚で互い違いに並び、それぞれの大きさもほぼ同じで、花の構造は規則的だ。一方、ロウバイの花は萼片と花弁の区別がつかない。そのため、萼片と花弁を併せて花被と呼び、一つの花に花被は10~20枚ある。下の写真の例では花被は14枚だった。このような不規則な花の構造は、未だ進化の過程にある古い時代の植物の特徴と考えられている。 ■雄蕊の変化 - 雌性期と雄性期 ロウバイの雄蕊を観察すると、その形が変化していく。花の咲きはじめは雄蕊ま立ち上がっておらず、しかも未だ花粉は出ていない。このため中央にある何本か束になった雌蕊に触れることは出来ないので、自家受粉は避けられる。このとき雌蕊は他の花の雄蕊から花粉をもらう。この時期の花を雌性期と呼ぶ。冬は花粉を仲介してくれる昆虫は少ないが、良く目立つ黄色の花と芳香に惹かれて寄ってくるのだろう。 時間経つと、次第に雄蕊が立ち上がり受粉が済んだ雌蕊を囲い込み、雄蕊の先から花粉を出す。これが別の花の雌蕊に運ばれる。この時期の花を雄性期と呼ぶ。この仕掛に因って、自家受粉を回避して遺伝子的に強い子孫を残すのだろう。 ■花後のロウバイ 花が終わると花床が大きくなって、初夏には長卵形の偽果(子房以外に由来する果実)になる。夏を過ぎると偽果はミノムシのような形で木質化し、その中に痩果(一室に1個の種子)が5~20個入っている。この種子をまくと良く発芽して、実生から良く育つ。しかもロウバイは土壌をあまり選ばず、日陰でも良く育つので、庭木としては理想的だ。 ■ロウバイの効用 ロウバイは海外ではWintersweetと呼ばれ、甘くフルーティーな香りで香水に利用される。主成分はモノテルぺノール類のリナロール、ボルネオール(竜脳)、シネオール、カンファーなどの成分が含まれ、鎮静効果があり精神を落ち着かせてくれる。また、開花前の花を採取して乾燥させた後に抽出した蝋梅油は、薬用として火傷や解熱や咳止めに使われていた。 その一方、有毒植物でもある。特にに種子には要注意。有毒成分カリカンチンは神経毒でヒトおよび動物に強直性痙攣などを起こすことが知られており、放牧中にロウバイの種子を採食した家畜の中毒事故が近年も発生している。 ■野生化、及び人間との関係 ロウバイを自然の野山でお目にかかったことはない。普通の外来植物は虫や鳥、場合によっては風が種子を運び、勢力範囲を拡げる。しかし、ロウバイの種子は目立った形や色でもないし、羽根が生えているわけでもない。それどころか、有毒成分カリカンチンを含んでいて、ヒトおよび動物に被害を与えることがある。その種子をあえて食べたり運搬してくれたりする野生の生きものはいないのだろう。結局、自然の中では、ロウバイは自らの勢力範囲を拡げることは難しい。人の手を借りなければ、現状維持のままだ。このことは不幸なことではない。人は早春に咲くロウバイの花を愛で、ロウバイは人による品種改良を受けながら進化する。そして厄介な野生化の問題を排除しながら共存している。ロウバイとは、生物的には昔気質の変わったヤツだが、分別のある紳士のようだ。

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