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オトコヨウゾメ - 足るを知る

 オトコヨウゾメ(男莢迷)は、ガマズミ科ガマズミ属の落葉低木。日本の固有種で北海道と北陸地方を除き、山野の日当たりのよい場所に自生する。誰もが不思議に思う名称オトコヨウゾメの由来は、ガマズミ類をヨウゾメと呼ぶ地方があり、果実が赤く熟すと食用にしたが、本種の果実は苦くて食べれないので、食用にならないものの接頭語"男"(何故男?)を冠してオトコヨウゾメとなったとの説がある。ややこしい名前は兎も角、淡いピンクを帯びた花がまばらに咲き、扁平の実がやがて赤い楕円体にゆっくりと変化する。花も果実も小さく且つ分散的なので、あまり目立たない。ボリューム感のある同属のガマズミとは、ずいぶん雰囲気が異なる。この清楚で上品な樹木はどのようなものなのだろうか。 【基本情報】 ・名称:オトコヨウゾメ(男莢迷) ・別名:コネソ ・学名:Viburnum phlebotrichum ・分類:ガマズミ科 ガマズミ属の落葉低木 ・原産地:日本の固有種 ・分布:北陸地方を除く本州、四国、九州 ・花言葉:委ねられた想い ■形態 樹高は2m程度の落葉低木。幹は真っ直ぐに伸び、枝は密に分かれる。冬芽は枝先と、枝の途中で対生につき、芽を覆って保護する芽鱗はつやのある卵形の暗紅色。若い枝は赤褐色で、のちに灰色または灰褐色になる。 ■葉 葉は対生し、葉脈は網状脈で、形は卵円形。葉の先端は尖り、葉縁には粗い鋸歯があり、鋸歯の先は尖る。葉の主脈から分かれた側脈は平行して葉の縁までまっすぐに伸び、表面はへこみ裏面に突き出て凸凹状になる。 ■花 開花は4月。枝先から1対の葉と共に、小花を3~20個まばらにつけた散房花序を出す。花序は横向きか垂れ下がるようにつき、花序を上向きに付けるガマズミとは異なる。小花に注目すると、花柄は細く長い。萼は小さく5裂して、小さな3角形の集合となり、帯赤色。白い花弁の先は5分裂する。雄蕊は5個あり、その先の葯は小さな広楕円形。雌蕊の柱頭は3裂し、やや赤みがかっている。 ■果実 花が咲き終わると緑色で扁平の果実がつき始める。果実は成長するにつれ、色は赤くなり、形は楕円体になる。核果で、中に種子が1個入っている。秋になると葉の隙間から赤い艶のある果実が見え隠れする。 ■オトコヨウゾメと日本人 オトコヨウゾメは在来種ではあるが、人間との関係は薬用や食用などの実用的なものではなく、庭木にしたり果実酒にしたり、せいぜい趣味の世界でつながっている。春に咲く白く清楚な花、秋に葉の間から見え隠れする艶のある赤い実は日本人の美意識に良く合っていると思う。しかし、この美意識は、春の桜や秋の紅葉のように、人々に熱狂を感じさせるものではない。オトコヨウゾメを見た感動を、他の人に伝える人は少ないと思う。それは感動の種類が異なり、皆が感動するしきい値と、特定の価値観を持つ数寄者のしきい値が異なるためだ。オトコヨウゾメは"足るを知る"を実践しており、何ら不足なく、満ち足りていることを理解していると思う。多分、天才バカボンのようにコレデイイノダと思っているノダ。だから日本人はオトコヨウゾメを愛でるのだ。

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ヒメオドリコソウ - 一蓮托生か

 ヒメオドリコソウ(姫踊り子草)は、ヨーロッパ原産のシソ科オドリコソウ属の越年草。日本には明治時代中期に帰化した外来種で、主に本州を中心に分布する。春になると道端や空き地など、どこにでも生える。早春に咲く小さなピンク色をした華やかな雑草としては、ヒメオドリコソウ、ホトケノザ、カラスノエンドウが当地では御三家。ヒメオドリコソウの名の由来は、近縁種で在来種のオドリコソウの輪生した花や葉の様子が笠をかぶった踊子に似ていること、そしてオドリコソウに似た姿であり、より小さな本種に"ヒメ"がついたとのこと。しかし両者の印象はかなり異なる。オドリコソウは優雅で日本の踊り子の姿を彷彿とさせるが、ヒメオドリコソウは葉や花のつき方が密で一体化しているので鎧を着た兵士が立っているかのよう。葉の色も紫がかっていて、如何にも異邦人のイメージだ。日本に渡来して未だ100年余り、安易につけられた名前で誤解されいるかも知れない。ヒメオドリコソウとは、どんな植物だろうか。 【基本情報】 ・名称:ヒメオドリコソウ(姫踊り子草) ・学名:Lamium purpureum ・分類:シソ科 オドリコソウ属の越年草 ・原産地:欧州 ・分布:世界的には北米、南米の一部、中国などに分布。日本では、主に本州に分布する帰化植物。 ・花言葉:陽気、愛嬌、快活、春の幸せ ■形態 冬はロゼットの姿で越すが、暖かい陽だまりでは春を待たずに花が咲くものもある。若い株は葉の先端まで緑色だが、成長するにつれ茎の先の葉は暗紫色を帯びる。葉は対生し、短い葉柄をもつ。葉の形は卵形で縁は鈍い鋸歯を持つ。葉脈は網目状で窪み、全体に皺があるように見える。また花や葉を支える茎が長いのも特徴だ。学名にある Lamium はギリシャ語の laipos(のど)が語源で、茎が中空で長くてのど状に見えることに由来するとの説がある。 ■花 花は明るい赤紫色の唇形花で、上唇片は包み込むような兜の形で、下唇片は先が牙のように2裂し赤い斑点がある。上部の葉の脇から外側に向かって花は開き、上から見ると放射状に並ぶ。まだ寒い他の花が少ない時期に咲くので、昆虫にとっては貴重な蜜の供給源となる。 ■果実 ピンクの花が枯れ落ちると、萼に包まれた緑色の4つに分かれた果実が見える。やがてやや褐色となった種子が出てくる。大きな葉の裏で果実は成長するので、外からは分かり難い。 ■近縁種 オドリコソウ ここでは、何かと比較されるオドリコソウに言及しておく。オドリコソウ(踊り子草、学名:Lamium album var. barbatum)は、同じくシソ科オドリコソウ属の多年草。日本の在来種で、北海道から九州の野山や野原の半日陰地に群生。構造的には、ヒメオドリコソウより大きく、葉や花の間隔も広いのでそれぞれが独立したものと見える。花の形は下唇片は3裂し、花の色は淡紅紫色から白色。両者を比較すると、形状のみならず、植物が醸し出す雰囲気が異なるため、混同されることはない。また、歴史の長い在来種のためか、野芝麻(やしま)と呼ばれる乾燥した根が漢方薬として利用される。 ■ヒメオドリコソウと日本人 ヒメオドリコソウは暗紫色の葉の裏で秘かに果実を実らせ、旺盛な繁殖力で在来植物を駆逐することがある厄介な植物だ。だがその一方で、早春の寒い時期に花を咲かせ、高糖度の密で多くの昆虫を養っている。また、好事家の間では、食用として天ぷらやゴマ味噌和え、ハーブティーなどにしている。普通の日本人にとっては春を告げてくれる可愛い花だが、カタクリやシュンランのように儚く消えることもなく、年中存在し続ける。毎年、家庭菜園で春耕する際は必ず出逢う。畑仕事で手抜きすればまた出逢う。かといって、これだけ広く拡散していると、どうすることもできない。状況に応じて柔軟に対応してくしかない。

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ミツバアケビ - 微妙な違い

 ミツバアケビ(三葉木通、三葉通草)は、アケビ科アケビ属の蔓性落葉低木。同属のアケビと同様に春に紫色の花を咲かせ、秋には甘い果実を実らせる。アケビとの相違点は、よりも寒さに強く北海道を含む全国各地の山野で自生し、荒れ地や乾燥地でも旺盛に繁殖できるので、アケビに比べて育成地域が広い。また、形態的には、葉は掌状で小葉が3枚になる3出複葉であること、果実がアケビよりも大きくなることから果樹としても栽培されることなど。しかし、花の形は良く似ていて、花の色はアケビの紫より多少濃い目。両者は似て非なるものと言うよりは、大同小異。一体どこが違うのだろう。 【基本情報】 ・名称:ミツバアケビ(三葉木通、三葉通草) ・別名:キノメ(木の芽)、コノメ ・学名:Akebia trifoliata ・分類:アケビ科アケビ属の蔓性落葉低木 ・原産地:日本、中国、台湾 ・分布:日本では、北海道、本州、四国、九州の山地 ・花言葉:才能、唯一の恋 (アケビと同じ) ■形態 蔓性の落葉の低木。蔓は右巻きで他の物に巻き付きながら高い場所まで登りつめる。蔓はアケビよりもしなやかで、籠などの細工物を作るのに使われる。 アケビの葉は5枚の小葉からなるが、本種の小葉は3枚であるためミツバアケビと呼ばれる。小葉が3枚集まった3出複葉は長い葉柄をつけて茎(蔓)に互生する。小葉はいびつな卵形で、葉縁には波状の鋸歯ある。普通は落葉性であるが、葉は越冬する場合がある。 ■花 4月頃、開花と同時に若葉が出る。花は雌雄同株で、雌雄異花。アケビよりも花の色は濃い紫色。新葉のわきから総状花序を出して下に垂れ下がり、花序の基部に大型の雌花を1~3個、先のほうに十数個の小型の雄花をつける。  雌花の花柄は長く、その先にアケビよりも濃い紫色の3枚の萼片(花被)がつき、雌花の中央部には3~6本程度(アケビは3~9本)の雌蕊が放射状につき、花弁は無い。雌花の柱頭には、甘みを持った粘着性の液体が付いており、花粉がここに付着して受粉が成立する。  雄花については、ミツバアケビもアケビも構成は同じだが、花の色はミツバアケビの方が濃い。中央部に6本の雄蕊がミカンの房のように集まり、その外側に萼片が3枚ある。雌花と同様に花弁はない。 ■果実 アケビと同様に、雌雄同株だが自家受粉しないため、果実を得るには2株以上植栽する必要がある。商業的観点からは、ミツバアケビの果肉はアケビより風味があり、果皮も色鮮やかであり、しかも果実は簡単に開かないので、農産物としてはより取り扱いやすいようだ。 ■ミツバアケビと日本人 同属のアケビとの比較では、寒冷地や荒れた土地にも強く生育領域が広いこと、果実を農産物として見ると風味や流通性に優れ、料理に関しても新芽と若葉を「木の芽」と称してゴマ和えにするにはアケビよりもミツバアケビが美味らしい…と人間は勝手に思っている。だからどちらが良いというわけではないが、類似した植物が淘汰もされず生き延びているのは、自然の摂理に基づいたそれなりの合理性があるのだろう。現代に生きる凡人は、重箱の隅をつつくような僅かな相違を探して楽しんでいるだけなのだ。

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アケビ - 不思議な一族

 アケビ(木通、通草)は、アケビ科アケビ属の蔓性落葉低木。北海道を除く各地の山野に自生し、茎は蔓(つる)になって、他の樹木などに絡みつき、秋には甘い果実がみのる。「アケビ」の語源には、熟すと自然に果皮が開く「開け実」が転訛したとか、近縁種のムベの実は開かないがアケビは開くため「アケウベ」が転訛したとか諸説あり。また、「アケビ」は果実のみを指し、木全体を呼ぶ場合は「アケビカヅラ」と言うべきとの説もある。アケビは山菜や薬草になる他、盆栽や蔓を利用した籠など、人間との関係も深いだけに、名の由来も諸説ある。分類的には、アケビ属の代表種の位置づけでもあるが、アケビ属には他にも姿形が似たミツバアケビやゴヨウアケビもあるので、属名を指すのか、品種名を指すのか注意が必要。とは言え、春の変わった形の薄紫色の雌花や雄花、秋の大きな果実はなかなか印象に残る。 【基本情報】 ・名称:アケビ(木通、通草) ・別名:ヤマヒメ(山姫)、サンジョ(山女)、アケビカズラ、ゴヨウアケビ(別種を指すこともある)、オトメカズラ、アケベ、ハダカズラ、コノメ、アケビヅル、オメカズラ、カミカズラ ・学名:Akebia quinata Decaisne ・分類:アケビ科アケビ属の蔓性落葉低木 ・原産地:日本、中国、韓国などの東アジア ・分布:日本では、北海道を除く、本州、四国、九州 ・花言葉:才能、唯一の恋 ■形態 蔓性の落葉の低木、茎は蔓になって他の樹木などに巻き付いて長く伸び、古くなると木質化する。葉は、短い柄を持ち先端が少しへこんだ楕円形の小葉が5枚集まった奇数掌状複葉。それが、長い葉柄をつけて茎(蔓)に互生する。 ■花 アケビの蕾は3月に若葉とともに姿を現し、ソメイヨシノが開花する頃に、薄紫色をした花を下向きに咲かせる。雌雄同株、雌雄異花の植物で、花は長い総状花序を構成する。花軸の基部には1~3輪の雌花とともに、花軸の先端には数輪の雄花が房状に咲く。  長い花柄の先に雌花があり、紫色の3枚の萼片(花被)がつき、花弁は無く、雌花の中央部には3~9本の雌蕊が放射状につく。雌花の柱頭には、甘みを持った粘着性の液体が付いており、花粉がここに付着して受粉が成立する。  雄花は、その中央部に6本の雄蕊がミカンの房のように集まり、その外側に萼片が3枚ある。雌花と同様に花弁はない。  アケビの花には蜜腺がないのに、昆虫が集まってくる。昆虫は雄花の花粉を目当てに飛来し(密もないのに何故?)、その後に甘い粘着性の液を出す雌花の柱頭に寄り、受粉が成功するのではないかとの説がある。また、雌雄同株だが自家受粉しないので、雌花が受粉するには他の株の雄花の花粉が必要となり、果実を得るには複数の株が必要になる(アケビの近縁種でも可)。他の植物とは異なる受粉のメカニズムであり、謎が残る。 ■果実 受粉に成功した雌蕊は、成長して秋に楕円体の果実に成長する。表面は紫色で白粉を帯びたようになり、甘い香りを放つ。果皮は肉質で分厚いが熟すと縦に裂け、半透明の柔らかな果肉に包まれた黒い種子が現れる。ゼリー状の果肉は、よく熟したものは甘くて美味しい。また、種子にはアリの好物のエライオソームが含まれるので、アリによる種子の散布も行われる。 ■アケビと日本人 アケビと人間との関わりの歴史は古い。食用としては、若芽を山菜としておひたしや和え物にしたり、開いた果実を子供のおやつにしたり、大人には果実酒として親しまれている。生薬としては、蔓や果実が内臓の熱を取って利尿を促す薬効がある。漢方では、木通(もくつう)とか、八月札(はちがつさつ)と呼ばれる生薬が知られている。他にも、観賞用に庭木や盆栽に仕立てられたり、成熟した蔓は籠を編むための素材として利用される。  現在では実際にアケビに遭遇するのは、山野での自生株よりは、公園のフェンスに巻き付いているものや民家の垣根代わりに植えているものなど、場所も目的も限定的。しかもアケビと近縁種のミツバアケビは栽培上の事情もあって同じ場所にあることも多く、姿形も良く似ているので、意識しないと区別がつかない。良く見ると葉や花の色は異なるが、人間への有用性ですらアケビ属として括っても何の違和感もなく共通だ。それでも春になって紫色の花を見ると、どっちのアケビだろうかと詮索してしまう。不思議な植物だ。

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ムラサキケマン - 美しく危険で風変わりな存在

 ムラサキケマン(紫華鬘)はケシ科キケマン属の越年草。名の由来は、花の形が仏具の華鬘に似ていることからとの説があるが、これはイメージに合わず、ケマンの名称は単なる記号と考えたほうが合理的だ。日本全国に分布し、直接日光の当たらない木陰や林縁に自生し、春に赤紫色の独特な筒状の花をつける。美しいが毒性があるので、危険な雑草として生き続けている。また、夏に地上に落ちた種は、いつ発芽するかによって、翌年または翌々年の春に花をつける。危険でもあり、変わった性格でもある美しいムラサキケマンとはどんな植物だろうか。 【基本情報】 ・名称:ムラサキケマン(紫華鬘) ・別名:ヤブケマン、ネコイラズ、ハッカケ ・学名:Corydalis incisa ・分類:ケシ科 キケマン属の越年草 ・原産地:不明、日本の在来種。中国、台湾にも分布。 ・分布:日本では全国各地 ・毒性:全草に神経性毒のアルカロイド(プロトピン)を含む ・花言葉:喜び、あなたの助けになる ■生態 ムラサキケマンの生態は、いつ発芽したかによって変わる。ムラサキケマンの種子は春の終わりにできる。冬に発芽したものは、そのまま成長を続けて、翌年の春に花が咲く。一方、翌年の春以降に発芽したものはゆっくり生育して次第に根が太くなり、冬を越して春にはロゼット状の根生葉を出し、2年目の春に開花する。いずれの場合も、開花、結実後は急速に弱り、種子を残して枯れてしまう。 ■花  春になるとキケマン属に独特の筒状の花が咲く。花の後方に蜜が入った長い距(きょ)が突き出し、前方には上下に赤紫色の唇形の花びらが2枚ある。また更に、花の前方中央部に左右から合わさった2枚の白色の花弁があり、この中に雄蕊と雌蕊が入っている。従って花弁は、外側に上下に赤紫色のものが2枚、その内側に白い花弁が左右に2枚の計4枚。虫媒花で昆虫が訪れると下唇の花びらにとまり、中央の白い花びらを越えるようにして距の奥にある蜜を口吻で吸う。このとき、昆虫の重みで花びらが下がり、雄蕊と雌蕊が下から露出して昆虫の身体に接触する。 ■果実 花後に細長い果実ができ、その中に数個ずつ種子が入っている。果実の皮が緑色でも、中の種子が成熟すると軽く触れただけで勢いよく弾けて種子を飛ばす。また、種子にはアリの好物であるエライオソームがついており、アリによって遠くへと運ばれていく。 ■近縁種 ムラサキケマンの花の色は赤紫色ということになっているが、その濃淡はかなり個性がある。外側の花弁の上下唇部分は赤紫色であるが、長い距の部分が少しでも紫がかっていればムラサキケマンと呼んで良さそう。しかし、長い距の部分が白いものもある。これは、同じケシ科キケマン属のシロヤブケマン(白藪華鬘)として区別されている。ムラサキケマンとシロヤブケマンは自生地も花期も重なっているので、両方とも良く見かける。更に、唇部分も白いユキヤブケマンと言う完全な白花もあるが、当地では見かけたことはない。 ■ムラサキケマンと日本人 ムラサキケマンは古来からの在来種で、日本人には馴染み深い。しかし、全草にプロトピンを含む有毒植物であり、嘔吐、呼吸麻痺、心臓麻痺などを引き起こす原因となる。また、ウスバシロチョウの幼虫の食草であり、このためウスバシロチョウをも有毒にしてしまう。おまけに、植物体から出る汁は悪臭がする。これでは、少しも役に立たない雑草と言って良い。しかし、発芽の時期によって生活史をも変えうる強かな生命力を持ち、春になると日陰の林で赤紫色の鮮やかな花を咲かせる。この風情はなかなか捨てがたい。ムラサキケマンは美しくもあり危険で風変わりな存在だ。

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シャガ - 潔い決断

 シャガ(射干、著莪)は、アヤメ科アヤメ属の多年草。日本には古い時代に渡来し、現在は北海道を除く人里近くの林に群生する。4月になると、葉の間から花茎が伸びて分岐し、淡白紫色の花をつける。この花の構造は独特で、一度目にすると忘れられない。また、日本に分布するシャガは不稔性で種子ができないため、人の手によって植えられた同一の遺伝子を持ったクローンだ。綺麗な花には影がある。シャガとは何者だろうか? 【基本情報】 ・名称:シャガ(射干、著莪) ・別名:コチョウカ(胡蝶花) ・学名:Iris japonica ・分類:アヤメ科アヤメ属の常緑宿根草 ・原産地:中国 ・分布:日本には古代に渡来し、 本州、四国、九州の林内に群生 ・生育環境:種子が発生せず、人為的に繁殖 ・花言葉:清らかな愛、友達が多い、反抗、私を認めて ■生態 日本に分布するシャガは、雌蕊も雄蕊もありながら、染色体の数が一組多い3倍体で、種子ができない。このため日本のシャガは同一の遺伝子を持ったクローンで、人の手によって植栽されたものと考えらる。従って、その分布も人為的であり、民家に近くや、かつて集落のあった場所などに限定される。新たな土地でシャガを育てるには、園芸業者からの苗に頼ることになる。また、原産国中国由来の2倍体や4倍体の個体にこのような問題はない。何処かで何がが起きたのだろうが、詳細は分からない。 ■花 先ず、花の構造を調べてみよう。花を上から見ると、大きくて黄色と紫の模様の入った3つの部分は萼に相当する外花被片と言い、外花被片に挟まれた3つの細長い部分は花弁に相当する内花被片があり、中央に3本そそり立ち先端がヒゲ状になっているものが雌蕊。ただし、3つに見える雌蕊は基部でつながっているので本当は1本。雌蕊の部分を横から見ると、ヒゲ状の部分は柱頭の付属体、その付け根に雌しべの柱頭があり、その奥に雄蕊の葯が見える。  シャガの花は、朝開いて夕方にしぼむ一日花。このため、どの花は精一杯咲いているように見える。特に目立つのは、外花被片にある鶏のとさかのように見える黄色い突起とそれを取り巻くように点在する紫色の斑点。この2つがシャガの花の印象と色合いを決めている。そしてこの鮮やかな模様が昆虫を誘導する蜜標にもなるが、日本のシャガの場合は皮肉なことに、蜜標があっても何の成果も得られない。また、シャガの葉は、表を内側に密着した状態となっていて、葉の表と裏に見えるところは、実はみな葉の裏面と言う変わった特徴がある。このような葉を単面葉と呼んでいる。 ■シャガと日本人 日本のシャガは、公園やマンションの建物の境界、道路脇など、毎年同じ場所に同じ時期に何の違和感もなく咲いている。春の盛りに可憐な花が群生する姿は季節感がある。しかし、日本に渡来してクローン植物になってしまい、過酷な運命を背負ってしまった。これまで生き延びてきたのは、日本人の嗜好と受容性に適合したためだろう。日本のシャガも自らの立場を理解し、人間との共生を前提に、潔い決断をしているように思う。

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自然
ブタナ - 揺れるタンポポ

 ブタナ(豚菜)は、キク科エゾコウゾリナ属の多年草。欧州原産で、日本では1933年に札幌で外来種として発見され、1940年以降に全国に分布が拡大。穀物飼料に混入したらしい。欧州では苦みが少ない若葉をサラダ、茹で野菜、揚げものなどにして食べ、根はコーヒーの代替品として炒ってハーブティーとして飲まれる。欧州では由緒正しい植物だが、日本ではタンポポに似た雑草として生きている。空き地や牧草地、道路脇など明るく乾燥した場所に群生し、長い茎の先の花が、風に揺られて一斉に同じ方向にゆらゆら揺れる様子を見て、これは普通のタンポポではないと気がついた。どんなタンポポだろう。 【基本情報】 ・名称:ブタナ(豚菜) ・別名:タンポポモドキ(蒲公英擬、false dandelion)、ブタのサラダ(仏語で Salade de porc)、ネコの耳(英語でCat's ear:葉の形状に依る) ・学名:Hypochaeris radicata L. ・分類:キク科 エゾコウゾリナ属の多年草 ・原産地:欧州 ・分布:日本には外来種として19740年以降に全国に拡散 ・利用:欧州では食用 ・花言葉:最後の恋 ■生態 ブタナは花が終わった後に、綿毛付きの種子が風で運ばれ着地すると、そこで発芽してギザギザの葉っぱが根元から円を描くようにロゼットと呼ばれる根生葉をつくる。その状態で冬越しをし、春になるとロゼットの中心から花茎を伸ばす。この花茎の特徴は、花茎には葉がつかないこと、そして途中で数本に枝分かれすること。この花茎の分岐がタンポポとの相違点だ。花茎の高さは50cm程度になる。また、ブタナは多年草でもあるので、花が終わった株のロゼットからも次の年に成長することもある。 ■花 所沢周辺では、開花時期は4〜9月頃。花は枝分かれした花茎の先に一つずつ付く。ブタナの花は、花だけを見るとタンポポと区別が付き難い。黄色く丸い頭状花序は多数の舌状花からなる。舌状花には、花弁が5枚だが合弁花なので1枚に見え、綿毛になる萼があり、雌蕊を囲むように雄蕊が5本、そして雌蕊は1本でその先の柱頭がある。受粉の方法は、雄性先熟で、雄蕊から花粉が放出された後に雌蕊が延びてきて柱頭が2つに分かれる。舌状花は頭状花序の外側から開き始め、中央部の舌状花も開くと、頭状花序の花弁数や柱頭が増えたよみ見えて豪華。花粉は、様々な昆虫によって運ばれる。 ■果実 花が終わると、タンポポと同様に、果実は果皮が乾燥して1個の種子を包み、裂開しない痩果(そうか)を作り、これに冠毛が付いて風によって運ばれる。頭状花序の舌状花が全て果実になると、フワフワの球体のように見える。 ■ブタナと日本人 原産地の欧州では、豚が好んでこのこの植物を食べたことから、フランス語の"Salade de pore"(豚のサラダ)を和訳してブタナとなった。ブタナは欧州では、葉物野菜か飼料の価値はあったようで、うまく人間社会と共生していた。日本へは期せずして紛れ込んで帰化植物となってしまったため、過酷な運命を背負って生きている。繁殖に関しては、耕起に弱いため畑や水田で問題となることは少ないが、刈り取りには強くので道端や河川敷、空き地では雑草として駆除の対象にもなり得る。しかし、良く考えてみると、何処にでもあるタンポポと同じステータスのような気がする。人間が作物を植えようとする土地にはそれなりの管理をすべきだし、それ以外の土地は排他的外来種は別として生物多様性を維持できれば良い。タンポポ一族の中でも背が高く細身で風に優雅に揺れるブタナの姿は、洋の東西を問わず美しい。日本でも共存できる筈だ。

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自然
カラスノエンドウ - 共生する雑草

 カラスノエンドウ(烏野豌豆)は、マメ科ソラマメ属のつる性の一年草または越年草。良く知られた別名ヤハズエンドウ(矢筈豌豆)でも呼ばれる。北海道を除く日本各地で雑草として自生しているが、原産地は地中海東部沿岸地方で、古代オリエントでは小麦と一緒に食用としても栽培された。これは、マメ科植物の根に共生するバクテリアが小麦畑の土壌改良にも役立ち、一石二鳥だったようだ。日本では春になると地表に湧き出る雑草の一つとしか認識されていないが、人間との関わりも深く、小さな可憐な赤紫色の花を咲かせるカラスノエンドウとはどんな植物なのだろうか。 【基本情報】 ・名称:カラスノエンドウ(烏野豌豆) ・別名:ヤハズエンドウ(矢筈豌豆)、ノエンドウ(野豌豆) ・学名:Vicia angustifolia L. var. segetalis ・分類:マメ科 ソラマメ属のつる性の一年草または越年草 ・原産地:地中海沿岸 ・分布:日本では、本州、四国、九州、沖縄の野原や道端など ・利用:食べられる野草 ・花言葉:小さな恋人たち、喜びの訪れ、未来の幸せ ■形態 春になると陽当りの良い路地に、断面が四角い茎を上に伸ばす。葉は10枚程度の小葉がついた偶数羽状複葉で茎に互生し、次に出る葉は折り畳まれた状態で待機している。葉の先端は、3本の巻きひげになっていて、近くのものに絡みつく。小葉は細長い楕円形で、先端は矢筈状に少しへこむ。 ■花 花は春から初夏に開花。茎と葉の分岐点の葉腋に短い総状花序をつくり、マメ科独特の蝶形で赤紫色の花を1~3個つける。蝶形の花は花弁は5枚、内側の竜骨弁が2枚、それを囲むように翼弁が2枚、その上にある大きな旗弁が1枚。そして、雄蕊は10本で基部で合着して二体雄ずいを形成し、雌蕊は1本だが、花弁の奥にあり外からは見にくい。花の付け根には花外蜜腺とよばれる黒い点があり、ここから蜜を出してアリを呼び寄せ、他の害虫を追い払ってもらう。 ■カラスノエンドウと昆虫 カラスノエンドウにとって害虫にあたるアブラムシは、カラスノエンドウの汁を吸い、アリの好む甘い排泄物を出す。アリはこれを求めて集まるが、アブラムシとアリの関係はWin-Win。また、てんとう虫やその幼虫はアブラムシを捕食するため、てんとう虫はカラスノエンドウにとって益虫。また、アリは花の付け根ある花外蜜腺に集まり、他の害虫を追い払らう。この点についてはアリは益虫。集まる虫も多いが、利害も複雑。 ■果実 花が終わると、サヤエンドウを小さくしたような平たい豆果がつく。豆果は熟すると黒くなり、これがカラスノエンドウの名の由来である。中には5~10個の種子があり、熟すと種子をはじき飛ばし、よじれたサヤの皮が残る。 ■近縁種 スズメノエンドウ カラスがあればスズメもある。スズメノエンドウ(雀野豌豆)も同属の植物で、分布も花の時期も同じ。カラスノエンドウと比較すると、形はよく似ているが、茎も葉も花も小さい。しかも花の色は白で、ゴマ粒程なので目立たない。散歩していてもその存在には気が付かないほど地味な存在だ。しかし、食用になったり土壌改良に有益なのは同じ。生物多様性と淘汰とはどのような関係があるのか考えさせられる。 ■カラスノエンドウと日本人 日本では雑草とみなされているカラスノエンドウだが、人類にとって有益な点は2つある。1つは食用になることで、若いサヤや葉をかき揚げにしたり、実を豆ごはんにしたりして、現在の野草料理愛好家に人気がある。2つ目は根に共生する微生物の根粒菌が土地に窒素を供給して、畑地の土壌改良に役立つこと。古来よりこれらの恩恵を受けてきたが、飽食に慣れ、効率を追求して化学肥料を多用する現在の日本では顧みられることはない。春になって赤紫色の可憐なカラスエンドウの花を見ると、もっと自然に寄り添いシンプルな生活スタイルもあるのではないかと想像してしまう。

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自然
カリン - 美しくもあり有用でもあり

 カリン(花梨)は、バラ科カリン属の落葉高木。原産は中国東部で、日本へ渡来は、1000年前とも江戸時代とも言われ不明。自生はせず、植栽として栽培される。カリンと言えば、春のピンクの可憐な花と、秋の大きなナシのような果実、そして樹皮が剥がれた独特の幹肌が特徴で、庭木として十分に楽しめる。そればかりでなく、果実酒や砂糖漬けにされたり、のど飴にも利用されて、実用的な観点からも馴染み深い。 【基本情報】 ・名称:カリン(花梨、花櫚、榠樝) ・別名:カラナシ、カリントウ、アンランジュ(安蘭樹)、アンラジュ(菴羅樹)… ・学名:Pseudocydonia sinensis ・分類:バラ科カリン属の落葉高木 ・原産地:中国東部 ・分布:日本では東北地方以南の本州、四国、九州で植栽 ・花言葉:努力、唯一の恋 ■新芽の頃 冬芽は枝に互生し円錐形で、茶色のウロコのような葉である芽鱗で包まれる。同時にその下には葉の若い芽も生えてくる。開花が近づくと芽鱗が垂れ、若葉が成長する。 ■木肌や樹形 成熟した木の幹の表面は滑らかで、緑色と茶褐色の表面が不規則にウロコ状に入り乱れてモザイク状となり、独特の雰囲気がある。また、幹から伸びる枝は上に真っ直ぐ伸びるため、遠くからカリンを眺めると、樹形は円柱状に見える。 ■花 花は5弁で、ピンクの花を枝先に咲かせる。どの花も同じではなく、良く見ると2種類の花が混在する。一つの花に雌蕊と雄蕊が存在する両性花と、雌蕊がない雄花である。。両性花は20本の雄蕊の中央に雌蕊の花柱が5個あり、長い萼筒に包まれた子房が果実へと成長していく。雄花は花柱がなく雄蕊20本で構成され、萼筒が短い。また、ハナアブなどが花を訪れ、受粉をサポートする。 ■果実 花後に子房が成長し、果実は最終的には大きなナシのような楕円体になる。紅葉の時期に黄色に熟す。未熟な実は表面に褐色の綿状の毛が密生するが、熟した果実は毛は消え表面が少し凸凹しているが、落葉後も枝に残るもの多い。また、熟した果実は芳香性があり、部屋に置くと香りを楽しむこともでき、中国では"香木瓜"とも呼ばれる。果肉は固く、渋くて石細胞が多いため、生食はできない。このため、砂糖漬けや果実酒などにして果樹として利用される。 ■カリンと日本人 大きくて硬い果実は生食には向いていないが、果肉を切って焼酎漬けのリキュールにしたり、砂糖や蜂蜜に漬けたり、ジャムやゼリーに加工して食用にしてきた。また未成熟の青い果実を輪切りにして陰干しした生薬は、痰や咳止め、整腸、利尿、鎮痛に効果があるとされる。カリンの入ったのど飴を利用している人も多いだろう。また、木材の質は比較的かたくて緻密、丈夫であることから、額縁、彫刻材、洋傘の柄、バイオリンの弓などにも使われ、樹皮のがまだら模様を活用して床柱などの建築材となる。  庭木として考えると、こんなに利用価値のある樹木はない。所沢周辺にもカリンの木は公園や畑の脇で栽培されていて、秋になると果実が枝にたわわに稔っている。試しに焼酎漬けのリキュール作ってみたが、かなり酸味と渋みが勝る。しかし、カリンの良さは利用価値の多さではなく、春に若葉とともに咲く花、秋に黄葉とともに現れる成熟した果実が、桜や紅葉のように分かり易いモノトーンな方法でなく、地味だけど調和した彩りで季節の変わり目を教えてくれるのが嬉しい。  カリンののど飴を入手。カリンのエキスが少し入っているらしい。カリン酒で味わったのとは異なり、甘く美味しい。大手菓子メーカーロッテのもので製造工場は所沢市の隣の狭山市。国産カリンエキス使用を表示。残念ながら産地は不明。

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自然
ヤブタバコ - 秘かに下向きに咲く花

 ヤブタバコは、キク科ガンクビソウ属の越年草。東アジアに広く分布し、日本でも北海道から琉球列島まで分布し、日本の在来種。ヤブタバコの名の由来は、葉の形がタバコ(ナス科タバコ属)の楕円形の大きな葉に似ているからとの説が有力だが、全く別種の植物なのに誤解を与えそう。ヤブタバコの特徴は、多くの花が茎に沿って咲くが、花が下向きに付くので、散歩していて上からの眺めても殆んど気が付かないこと。植物観察者の立場からすると、ヤブタバコの独特な形態に触れて、茎を裏返しにして隠れていた多数の花を発見すると、自分の目は節穴かと思い知らされる。日本古来より存在しながら、地味で目立たないヤブタバコとはどんな植物なのだろうか。 【基本情報】 ・名称:ヤブタバコ(藪煙草) ・漢名:天名精(てんみょうせい) ・学名:Carpesium abrotanoides L. ・分類:キク科 ガンクビソウ属の越年草 ・原産地:日本を含めた東アジア ・分布:日本では、北海道から琉球列島まで ・花言葉:豊かな感情 ■成長過程 ヤブタバコが芽を出し成長を始める時期は、葉は楕円形ではあるが、他の植物と区別できるような特徴はない。この時期の姿は山野でなく植物園で知った。やがて茎は真っ直ぐに立つが、ある点からほぼ水平方向に放射状に数本の枝を出して伸びる。これらの枝の葉は長楕円形で互生し、葉が茎につく部分毎に下向きに花芽を出す。 ■花 花は、横に伸びる茎に互生する葉の根本から、短い花柄を介して、小花が集まって形成される頭状花を下向きにつける。頭状花の中心部は両性花、周辺に雌花がある。両性花には雌蕊も雄蕊もあるので自家受粉が可能で、生き残りには有利。頭状花を包むように基部に鐘球形の総苞片が3列あるが、外側のものは小葉のようで分かり易い。 ■花に集まる昆虫 ヤブタバコに集まってくる昆虫としては、キク科植物に寄生するアブラムシの一種である赤茶色の小さなヤブタバココナジラミモドキがおり、このアブラムシから甘露をもらうためにアリの一種アミメアリも集まってくるようだ。 ■果実 ヤブタバコの果実は痩果(そうか)と呼ばれ、小さな乾いた果実で、果皮は硬くて裂開せず,中に1種子を持つ。キク科の実ではあるが冠毛が無いので風には飛ばされない。代わりに粘着性があり、服や動物の毛に着いて運ばれる。所謂"ひっつき虫"の一つ。 ■近縁種ガンクビソウ(雁首草) ヤブタバコの近縁種に同じキク科ヤブタバコ属のガンクビソウ(雁首草)も所沢近辺では良く見かける。雰囲気はよく似ているが、良く観察すると相違点が見つかる。一番分かり易いのは花のつき方で、茎から伸びた柄の先端に頭状花が1つついていればガンクビソウ、頭状花が短い柄で茎にぴったり接しているのがヤブタバコ。他には、ガンクビソウの方が頭状花は大きく、また、ガンクビソウの頭状花の基部には葉状の大きな総苞片が数個つくが、ヤブタバコには比較的小さな総苞片がつく…等々。先ず、全体の茎と花の関係で判断できる。 ■ヤブタバコと日本人 古来より日本にある植物なので、若い葉を茹でて水にさらして食用としたり、葉を乾燥させたものを打ち身、腫れ物、止血などに用いた。また、痩果は人間の腸に寄生するサナダムシ虫の駆除に使われた。 現代の日本人にとっては、身近な山野に自生はしていても、ハチやチョウも集まらず秘かに下を向いて咲く花には、その存在さえも気が付かないので、この植物を愛でる気持ちも季節感も湧かない。しかし、その正体を知ったときの驚きは尋常のものではない。植物の多様性を感じさせる植物だ。

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