ホオノキ - 際立つ独自の個性

 ホオノキ(朴の木)は、モクレン科モクレン属の落葉高木。進化論的な観点からはモクレン科の植物は、非常に古い時代から存在していた被子植物であることが知られている。ホオノキは日本各地に自生し、樹高は30mにもなる高木だが、日本で自生する樹木の中で最大級の葉(~葉身が40cm)と花(直径15cm程度)を持ち、これらがホオノキ独自のアイデンティティとなっている。名称の"ホオ"は"包"であり、大きな葉で食べ物などを包むことに用いたことに由来し、現代でも朴葉寿司や朴葉焼きなどで使われている。花は高い枝先に上向きに咲くので、なかなか鑑賞し難い。坂の多い丘陵地では、運良く観察する機会が訪れる。花弁も雌蕊や雄蕊もシンプルな形状だがそれぞれが大きく、おおらかな造作だ。しかし、近づくと甘く強い芳香が拡がり、異様な存在感がある。普通の植物とは異なり、原始的な資質を引き継いでいるのだろうか。
 古くからの自生種でもあり、人との関わり合いは多彩。ホウノキの葉は殺菌作用があるので、食品を包んだり、食器代わりになった。薬用としては、樹皮が"厚朴(こうぼく)"と呼ばれる漢方薬になり、鎮痛、鎮咳、利尿などに効果がある。また、ホオノキは成長が早くて材質が均一で軽量なので加工し易く、建具、引き出し、まな板、額縁、版木などに利用される。詩歌の世界では、"朴の花"は初夏、"朴の実"は晩秋、"朴落葉"は初冬の季語である。また、万葉集でも"ほほかしわ"の名で登場する。親しまれながらも、ホオノキは独自の個性を持つ樹木だ。

ホウノキの花 (‎2023‎年‎5‎月‎5‎日 所沢市)

【基本情報】
 ・名称:ホオノキ(朴の木)
 ・別名:ホオ、ホオガシワ
 ・学名:Magnolia obovate
 ・分類:モクレン科 モクレン属の落葉高木
 ・原産地:日本、但し中国にも自生するらしい
 ・分布:北海道から九州各地の山地や丘陵地など
 ・花言葉:誠意ある友情、然の愛情、優美

■生態
 幹は地下から真直に伸びてあまり枝分かれせず、枝は上方に伸びて端正な樹形になる。樹高は30m程度、幹の直径は1mを超えるものもある。幹の樹皮は灰白色で皮目がつく。葉には様々な特徴がある。未だ葉が残る秋に、来春に葉になる冬芽が枝の先端に2枚の芽鱗に包まれて現れる。春が近づくと、冬芽は膨らみ、その下方に初冬に落葉した葉の痕も見える。葉が芽吹くときに薄紅色の托葉も生えるが、間もなく落ちる。春には枝先に若葉が集中して互生するので、一見輪生状に葉がついた様に見える。よく似たトチノキの葉は1枚の掌状であるが、ホオノキはそれぞれ別の葉が密集してついている。葉身は大きて20~40cmにもなり、倒卵状長楕円形で周囲は少し波打ち、葉脈は羽状になる。秋には、葉の色は黄色か褐色に入り乱れて変化し、やがて落葉する。

幹は真直に伸びて分肢が少なく、枝は上方に伸びて端正な樹形になる (‎‎‎2007‎年‎5‎月‎4‎日 所沢市)

幹は太く、樹皮は灰白色で皮目がつく (‎‎‎2025‎年‎4‎月‎30‎日 昭和記念公園)

未だ葉があるうちに、枝の先端に2枚の芽鱗に包まれた冬芽がでる (‎‎‎‎2023‎年‎11‎月‎1‎日 所沢市

春が近づくと、冬芽は膨らみ、その下方に葉痕も見える (‎‎‎‎‎2025‎年‎4‎月‎7‎日 所沢市)

葉が芽吹くときに薄紅色の托葉も生えるが、間もなく落ちる (‎2025‎年‎4‎月‎30‎日 昭和記念公園)

春には枝先に若葉が集中して互生するが、一見輪生状に見える (‎‎‎‎‎‎2023‎年‎4‎月‎19‎日 所沢市)

葉身は大きく、倒卵状長楕円形で周囲は少し波打ち、葉脈は羽状 (‎‎‎2007‎年‎4‎月‎29‎日 神代植物公園)

秋には、葉の色は黄色か褐色に入り乱れて変化し、やがて落葉する (‎2024‎年‎11‎月‎14‎日 所沢市)

■花
 ホオノキは雌雄同株で、花は両性花である。春に枝先の周辺に輪生状に若葉が展開した後に、枝先に蕾がつく。蕾が成長して大きくなると、次第に表面がピンク色を帯びる。蕾が開き始めると、最初に外側の赤みがかった3枚の萼が外側に反り始める。開花すると、6~9枚の白い花弁が広がり、その後次第に黄色みを帯びる。花の構造は、中央上部に紫色の雌蕊があるが1本ではなく多数あり、その下部には黄色の葯を持つ多数の雄蕊がある。ホオノキの花は雌性先熟で、寿命は3日間程度と短い。1日目に雌蕊が成熟し、2日目に雌蕊が閉じて雄蕊が開く。そして3日目には雄蕊が落ち、花としての機能が終了する。同じ花の中で、雌蕊と雄蕊が機能する期間が重ならないので、自家受粉することはない。花は、甘く強い芳香を周辺に放つ。その主成分は安息香酸メチルであり、これが甲虫やハナアブなど引き寄せて、他の花に花粉を運んでいる。

蕾が成長し大きくなると、次第にピンク色を帯びる (‎2025‎年‎5‎月‎8‎日 所沢市)

蕾が開き始めると、最初に外側の赤みがかった3枚の萼が外側に反り始める (‎‎‎‎‎‎‎2023‎年‎5‎月‎5‎日 所沢市)

開花すると、6~9枚の白い花弁があり、その後次第に黄色みを帯びる (‎‎‎‎‎‎‎‎2025‎年‎5‎月‎8‎日 所沢市)

花は両性花で、中央上部に紫色の多数の雌蕊、下部に黄色の葯を持つ多数の雄蕊 (‎‎‎‎‎‎‎‎‎2023‎年‎5‎月‎5‎日 所沢市)

雌性先熟で、1日目に雌蕊が成熟し、2日目に雌蕊が閉じて雄蕊が開く (‎‎‎‎‎‎‎‎‎2023‎年‎5‎月‎5‎日 所沢市)

花の寿命は3日程度で、雄蕊が抜け始める (‎‎‎‎‎‎‎‎‎2023‎年‎5‎月‎5‎日 所沢市)

やがて雄蕊と花弁が落ち、雌蕊部分(花床)が残り、花は終わる (‎2025‎年‎5‎月‎8‎日 所沢市)

■果実
 果実は集合果で、個々の果実は袋果である。集合果は長楕円体で、当初は黄緑色だが秋には赤く熟す。熟した袋果の中には2個の種子が含まれる。人は食べないが、キツツキ類の好物はこれを好んで食べ、ヒヨドリ、オオルリ、メジロなども来て、種子を拡散する。

果実は集合果で、多数の袋果が含まれ、未熟なうちは黄緑色 (‎‎2003‎年‎8‎月‎12‎日 帯広市)

秋になると、集合果は成熟して赤くなる (‎2023‎年‎10‎月‎6‎日 所沢市)

枯れて落下した果実には、袋果の抜けた跡が残る(前年のものか?) (‎‎2023‎年‎9‎月‎26‎日 所沢市)

■ホオノキと日本人
 ホオノキの材質は耐久性は低いが、柔軟で均一性が高くて狂いが少ない特徴がある。この特性を活かして、人工衛星の外部パネルへの使用を想定した研究がある。木材を含む衛星は、運用終了後に大気圏で燃え尽きる際に発生する金属粒子を減らし、環境への影響を抑える効果がある。2022年に京都大学と住友林業の研究グループが、研究報告"世界初、10か月間の木材宇宙曝露実験を完了 ~木材用途の拡大、木造人工衛星(LignoSat)の打上げを目指して~"(詳細はここをクリック)を公開した。候補になった3種の木材ヤマザクラ、ホオノキ、ダケカンバを宇宙環境に晒して実験を行い、最終的に密度が小さく切削も容易で衝撃曲げ吸収エネルギーに優位性があったホオノキを選択した。そして、 ​2024年の打上げを目指し、詳細解析や劣化抑制技術の開発を進めるとのアナウンスがあった。
 その後の経過は、2024年12月に、初号機を国際宇宙ステーション(ISS)から宇宙に放出したが、地上との通信が出来ず、失敗。現在は、クラウドファンディングで資金を募りながら開発を続けている。宇宙飛行士で研究グループのメンバーである土井隆雄京都大学特定教授の最終講義で明らかにした(詳細はここをクリック)。木材の利用可能性を高め、地球、いや、宇宙に優しい技術であり、是非成功してほしい。