有毒植物

自然
エゴノキ - 清楚で美しいが、少し厄介

 エゴノキは、エゴノキ科エゴノキ属の落葉小高木。東アジアや東南アジア地域に広く分布し、日本では北海道南部から沖縄までの全国各地に自生する。名称の中の"エゴ"は、果実を口に含むと、喉をのどを刺激してえぐさを感じるため。エゴノキが世人の注目を浴びるのは、桜の季節が終わり、春から初夏にかけて、若葉が芽吹くと直ぐに多数の小さな花が咲き、瑞々しい新緑と白い清楚な花の見事な対比のためだ。風で花が舞い散って歩道に積もると、見上げるとエゴノキがある。この爽やかな雰囲気は、庭木としても植栽され、園芸種も作られている。秋になると,果実が鈴なりに成り見栄えがするが、果皮には有害物質のエゴサポニンが含まれ、多少危険含み。 エゴノキの有用性は人間にとっては一長一短であるが、それでも上手く使いこなして良好な関係を築いている。木材は入手し易く、緻密で割れにくいため、ロクロ細工でこけしや糸巻き、和傘の部品などに使われる。別名の"轆轤木"の所以だ。また、果皮の毒性を利用して、川に流して魚を麻痺させて浮かんだところを捕獲する伝統的な捕獲法もある。また、子どもがエゴノキの花を"セッケン花"、"シャボン花"と称し、花を多数摘んで手で揉み泡立てて遊ぶことがあった。少し危ないが、別名"石鹸の木"の由来だ。更に、焼畑農法では、エゴノキを焼くと雑草が抑制されるという。これはエゴノキが作り出す樹脂の"安息香"の効果と言われている。また、文化的には、エゴノキは万葉集では"知左"(別名"萵苣木(チシャノキ)"の語源か)で登場し、幕末に長崎で活動した医者で博物学者のシーボルトが、日本の最も美しい低木の一つとして世界に紹介した。エゴノキは、 人気もあり、清楚で美しいが、少し厄介な存在だ。 【基本情報】 ・名称:エゴノキ(漢字表記は、通例中国名の野茉莉を使う) ・別名:ロクロギ(轆轤木)、チシャノキ(萵苣木)、セッケンノキ(石鹸の木)など ・学名:Styrax japonica ・分類:エゴノキ科 エゴノキ属の落葉小高木 ・原産地:日本、中国、朝鮮半島、フィリピン北部 ・分布:北海道南部から沖縄までの全国各地 ・花言葉:壮大、清楚 ■生態 雌雄同株。樹形は、幹はあまり太くないが、枝を横に広げ、こんもりと繁る自然体。幹の樹皮は暗い灰色で、表面は滑らかだが、浅く裂ける。枝はジグザグ状に伸び、一年枝は赤みを帯び、葉は枝に互生する。葉柄は短く、葉の形は長卵型で先端が尖り、葉縁に鈍い鋸歯がある。葉脈は、3~5対の側脈が目立つ。葉の表は光沢があり、葉の裏には毛が密生する。秋に、葉はまだらに黄葉するが、直ぐに落葉する。 ■花 蕾は、葉の脇から柄を出して数個ずつぶら下がる。蕾の形状は、先がやや大きい楕円体で、先端の膜が次第に割れ、やがて開花する。花は両性花で、下向きに数個集まって総状花序を形成する。花柄は長く、萼とともに緑色かときに赤みを帯びる。花弁は白く5裂し、黄色の雄蕊は10本あり、雌蕊の花柱は長い。満開のエゴノキを見上げると、星形の小さな花が散在し、まるで満天の星空のようだ。  エゴノキは虫媒花であり、花の蜜に誘引されて、ハチやハナアブの仲間が集まり、花粉を運ぶ。花の満開期には、結構な賑わいになる。花に隠れてハナグモなども潜んでおり、これは獲物を待ち伏せているのだろう。 ■果実 花被や雄蕊が落ちて花が終わると、子房が膨らんで、若い緑色の卵型をした果実できる。このときには、果実の先に花柱の名残がある。果実は蒴果で白く、果皮には有害物質のエゴサポニンが含まれる。果実の中の種子は1個のみ。秋が深まると果実は熟し、果皮が破れて茶色い種子が露出する。種子は、木の周辺に自然落下するか、ヤマガラなどの鳥によって遠方に拡散される。 ■虫瘤 エゴノネコアシ 枝先に、小さな猫の足、ないしバナナの房のような円形の緑白色のものがつくことが多い。これはイネ科のアシボソから移動してきたエゴノネコアシアブラムシが寄生して出来た虫瘤だ。夏に先が開いて成長したアブラムシが出てくる。 ■園芸種 ベニバナエゴノキ(ピンクチャイム) ベニバナエゴノキは日本で作出された一変種で、欧米ではピンクチャイムと呼ばれている。エゴノキより小型で、花柄と萼は赤みを帯び、花弁は淡いピンク色になる。庭木として、よく見かける。 ■エゴノキと日本人 エゴノキの繁殖については、果実が自然落下するか、ヤマガラなどの鳥によって遠方に拡散されることが、知られていた。ヤマガラは種子を樹木の幹や樹皮、あるいは地中に埋めて貯蔵する習慣行動がある。この2つの方法について、繁殖に直接的に繋がる発芽に関して、興味ある研究がある。山形大学の研究グループが公開した"ヤマガラによる貯蔵散布がエゴノキ種子の発芽に及ぼす影響"だ(詳細はここをクリック)。エゴノキの種子散布と発芽特性を、東北地方の落葉広葉樹林で調査した。観察期間中に、ヤマガラが飛来し、 樹上果実の大半(83.0~87.2%)はヤマガラによって運搬された。残りの果実は自然落下したが, これらの果皮は11月中旬まで分解されずに残った。野外での発芽実験では, 果皮を除去した種子は36%の平均発芽率がみられたが, 果実は4%とわずかで, 種子の発芽率が有意に高かった。果皮に含まれるエゴサポニンの量は果実が落下すると急激に減少することからこれが発芽を抑制しているとは考え難い。ヤマガラの貯蔵行動は発芽阻害の原因となる果皮を除去するという行為を伴うので, エゴノキの種子を散布させるだけでなく, 発芽にも大きく貢献していると考えられる。エゴノキとヤマガラは、自然の摂理の中で、持ちつ持たれつの良い関係を築いているようだ。

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自然
アオツヅラフジ - 微妙な距離感

 アオツヅラフジ(青葛藤)は、ツヅラフジ科アオツヅラフジ属の蔓性の落葉木本。雌雄異株で有毒植物。日本の在来種で、各地の山地や草原、道端に自生する雑木。アオツヅラフジのアオとは、茎や葉が緑色をしているところから、ツヅラフジは蔓が丈夫でツヅラ(籠)を編むのに利用したことに依る。別名のカミエビのカミとはぶどうの古名で、実がぶどうの房のようになるところに由来し、実の周りに白い粉がふくことからカビ(エビ)が生えたと思いつけられた。この2つの由来から、アオツヅラフジの特徴は、強い蔓と、美しい果実にあると言って良いだろう。ただ、アオツヅラフジは有毒植物でもあるので、殺虫剤にしたり、取り扱い注意のうえ蔓や根を木防已(モクボウイ)と称して漢方薬にもした。普段は目立たないアオツヅラフジは秋になると、俄然と存在感を増す。緑から紫へと変化する鈴なりの果実は小型のブドウのようで、つい手を出してしまいそうな衝動に駆られる。その度に美しいものには毒があると言う諺を思い出す。 【基本情報】 ・名称:アオツヅラフジ(青葛藤) ・別名:カミエビ(神衣比)、チンチンカヅラ、ピンピンカヅラ 、黒葛(万葉集での表記) ・学名:Cocculus trilobus ・分類:キンポウゲ目 ツヅラフジ科 アオツヅラフジ属の蔓性落葉木本 ・原産地:日本の在来種 ・分布:日本全国(北海道から本州、四国、九州、沖縄)、海外では、朝鮮や台湾などにも分布 ・花言葉:目立たない存在感 ■生態 アオツヅラフジは蔓性の木本。他の植物に覆い被さるように枝分かれしながら右巻き(上から見て反時計回り)に蔓を伸ばす。今年出た枝は緑色だが、古くなると褐色になる。葉は互生し、全縁だが、形は広い卵型が基本で浅く3裂することもあるが、その程度は一定でなく、葉形からアオツヅラフジを特定するのは難しい。雌雄異株で円錐花序が出始めると、雌株か雄株かはっきりする。雄株の花序には雄花しかつかないが、雌株のそれには雌花とともに若い果実も混在する。雌株には鈴なりの果実ができるが、雌蕊の子房が6個の心皮に分かれ、それぞれが1個の果実をつくるためだ。 ■花 夏になると、枝先と葉腋から円錐花序が出て、小さな黄白色の花を多数つける。短い花柄の先に萼が6枚つくが、外側に小さい萼片が3枚、内側に大きい萼片が3枚つき、正面から見ると重なり具合によっては小さい萼が隠れて3枚に見えることがある。萼の先に6枚の花弁があるが、萼より小さいので囲まれているように見える。花弁の先は2裂し、尖った印象を与える。花弁の先には、雌花の場合は雌蕊は1つだが子房が6個の心皮に分かれているので、6個の柱頭が見える。雄花の場合は、6個の雄蕊があり、先端の黄色い葯が目立つ。 ■果実 秋になると、球状の果実がブドウのように房状になる。晩秋には、緑色から青く熟し、表面は粉を吹いたよう白味を帯び、つぶすと紫黒色の汁が出る。果実は核果で有毒。果実の中には、扁平で円くカタツムリの殻のような種子がある。果実が成熟する頃には、葉は黃葉し落ちる。冬になると蔓に残った果実は、次第に萎れていく。 ■アオツヅラフジと日本人 アオツヅラフジは蔓性の荒々しく強い植物だ。人は決して自宅の庭に植えようとは思わない。他の植物や垣根、建物まで覆い尽くすからだ。しかし、野原や道端で自生しているアオツヅラフジを見つけると、丈夫な蔓を利用して、籠や背負いかごにしてしまう。アオツヅラフジから見ると、人間は搾取するだけの悪代官なのかもしれない。しかし、悪代官も人の子、秋の青い実に魅せられて、愛でる人も多いだろう。だが、アオツヅラフジは有毒でもあり、ちょっと厄介な存在。人間はアオツヅラフジを役に立つ奴と思いながらも、少し危険だけれど美しいと思いつつ長い間過ごしてきた。これからも、この距離感を保ちながら、両者は共存(と言ってよいか微妙だけど)し続けるのだろう。

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自然
スズラン - 日本とドイツ

  スズラン(鈴蘭)は、キジカクシ科スズラン属の多年草。日本の在来種であり、北海道や本州の高原などで群落をつくり自生する。春になると先端の尖った長い楕円形の葉の間から花茎を伸ばし、その先端に芳香のある白い釣り鐘状の花を数輪咲かせる。この緑の葉と白い花のコントラストやシンプルな構成が清楚なイメージを与えばかりでなく、秋になると赤く熟した球形の果実が枯れゆく葉とともに地上から消えゆく様は儚さをも感じさせる。日本人の感性にあった大変人気のある花だ。北海道を中心に、地方自治体のシンボルの花としている所も多い。しかし、美しいスズランには毒があり、山菜と間違えて食べたり、スズランを活けた水を飲んでも中毒を起こす。またスズランの仲間には、やや大型で芳香の強い欧州原産のドイツスズランがあり、これが園芸種として市場を席巻し、こちらが現在では多数派になっている。 【基本情報】 ・名称:スズラン(鈴蘭) ・別名:キミカゲソウ(君影草)、タニマノヒメユリ(谷間の姫百合、英名:Lily of the valley) ・学名:Convallaria majalis var. manshurica ・分類:キジカクシ科スズラン属の多年草(旧分類ではユリ科) ・原産地:日本か ・分布:東アジア、日本では北海道や本州の一部 ・花言葉:純粋、希望、純潔、純愛、謙虚、幸福の再来 ■形態 地面浅くに地下茎があり、その先端から芽を出して2~3枚の葉を出す。葉は先端の尖った長い楕円形で、地際で筒状に巻いて茎のようになる。春になると、葉の間から花茎を伸ばして、その先端に芳香のある白い釣り鐘状の花を数輪つける。スズランの花茎はあまり長く伸びず、葉の下に隠れるような位置で花が咲く。花が終わると丸い果実ができ、熟すと赤く色づき、やがて果実を落とし、葉も枯れて地上から姿を消す。 ■花 スズランの花茎は、地際から伸びた長い楕円形の葉よりは短く、花茎とは短い花柄を介して下向きに数個の花がつく。花の形は釣り鐘状で、色は白く、弱い芳香がある。スズランの群生を離れて観てみると、緑色の葉の隙間から、白い花が点在している様に見える。花の構成は、雄蕊は6本で葯は黄色、雌蕊は1本。そして、雄蕊の基部の色は花弁と同様に白いのが特徴。 ■果実 花が終わると、果実が生育する。果実はほぼ球形の液果で、生育するにに従い黄緑色、黄色、朱色、深い赤へと色が変化する。種子は果実あたりに数個入っている。 ■ドイツスズラン これまで日本の在来種のスズランについて言及してきたが、今では園芸種として広く普及し、多数派となった欧州原産のドイツスズランとの相違についてチェックしておく。自宅の庭には実家の北海道から移植した在来種のスズランがあり、学習のため利用する東京都薬用植物園の有毒植物区にはドイツスズランがある。スズランとドイツスズランの相違点を列挙すると、(1)一般にスズランは花が葉の上に出ないが、ドイツスズランは葉より高い位置に花を付ける(2)全体的にドイツスズランの方が大きい(3)葉はドイツスズランの方が厚く、透過光が微かに通る程度(4)芳香はイツスズランの方が強い(5)雄蕊の基部の色が、スズランは白、ドイツスズランは紫色  相対的な比較が多く、唯一(5)が絶対的な評価基準になる。確かに東京都薬用植物園のドイツスズランの雄蕊の基部の色は紫だが、濃淡があり微かに紫色のものもある。分類学的には、スズラン(学名 Convallaria majalis)もドイツスズラン(学名 Convallaria majalis)も同じキジカクシ科スズラン属だが、一応別種。個体によるばらつきもあると思うので、断定できるかは結構微妙。それは兎も角、ドイツスズランは園芸種に適した見映えや芳香があるので、多くの園芸種が創られている。 ■スズランの毒性 スズランには、全草にコンバラトキシンやコンバロシドなどの有毒物質が含まれ、人の体内に入ると、嘔吐や頭痛、めまい、血圧低下、心臓麻痺などの症状を引き起こす可能性がある。毒性は、青酸カリの約15倍の強さと言われている。北海道では外見が似ている山菜のギョウジャニンニクを誤って摂取し、中毒症状を起こす例がある。また、スズランを活けていた花瓶の水を幼児が飲み死亡した例もある。また、アイヌ民族は、スズランを"毒の花"として警戒した。一方で、スズランには強心作用や利尿作用があることから、生薬や製薬の原料とされている。 ■スズランと日本人 スズランは春に地上に現れ白い釣り鐘状の花をつけ、秋には赤い果実を実らし、冬には地上から消え、四季の変化を具現化してくれる美しい植物だ。その一方で強い有毒性を持ち、取り扱いは厳重な注意が必要。このような相反する二面性をスズランは持つが、一般的な感情としては、花言葉でも示されるように、純粋、希望、純潔、… とか肯定的なものが多い。有毒性については、どのように扱えばよいか知っていれば対応は可能。それよりも、スズランから受ける感動や感性が勝るのだろう。

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