ジュウガツザクラ - 孤高の冬の花
寒い冬に堪え、春になって桜が満開になると、日本人は皆活気みなぎる。暑い夏を過ごして人の元気がなくなる頃、秋から冬に再び桜の花を見かける。しかし同じ桜と言っても随分雰囲気が異なるので、また直ぐに元気を取り戻す訳にはいかない。何が違うのか?春の桜は皆一斉に大量に同じ色調で咲くが、秋から冬に咲く桜は花期が長く、蕾から花への移り変わりもゆっくりとあちこちの枝で交互に進み、花も疎らでひっそりと咲き続けるので、あまり注目されることない。けれども、この寒空に咲く桜は、小振りであるが清楚で、花色の濃淡が美しく、群れずに咲き孤高を貫く姿勢が清々しい。春の桜とは異なる観念だ。
秋から冬に咲く桜は、一般に冬桜と呼ばれる。冬桜に自生株は無く、すべて栽培種として交配によって創られた。代表的な冬桜はジュウガツザクラ(十月桜、江戸彼岸と豆桜の種間雑種)、フユザクラ(冬桜[広義の冬桜の名称と同じ]、大島桜と豆桜の種間雑種)、コブクザクラ(子福桜、唐実桜と小彼岸or江戸彼岸の交配雑種)等。冬に咲く桜として昔から選抜され生き延びてきた品種だ。
近所の畑の脇に冬桜が咲いていた。花の色は白が多いが淡紅色や、それらが段階的に変化したものもある。花弁数はソメイヨシノのように明確に5枚とは言えず不定。少なくとも5枚以上だが8~10枚程度が多い。栽培種ゆえの不安定さが残っているのだろうか。花の特徴からすると、この冬桜はジュウガツザクラのようだ。
【基本情報】
・名称:ジュウガツザクラ(十月桜)
・別名:オエシキザクラ(御会式桜) 日蓮聖人の忌日に行う御会式のある10月13日頃から開花することから
・学名:Cerasus ×subhirtella 'Autumnalis' Makino
・分類:バラ目 バラ科 サクラ属
・栽培種:マメザクラとエドヒガンの交雑種
・花期:秋から冬にかけ断続的に、また4月上旬の2回
・花言葉:神秘な心、寛容、優美な女性
■ジュウガツザクラの花
ジュウガツザクラの木は秋になると葉を落とし、花の時期を迎える。枝には多くの蕾がついているが、花は三々五々咲き始める。青い空を背景に、小さな花が星のように点在している風景は、印象深い。 この花は冬の間は細々と咲き続け、4月にも咲く。







■ジュウガツザクラと人間
人間とジュウガツザクラの関係には、薬効とか食用とかの接点は全く無く、観賞用としてのみ存在価値がある。栽培品種であるジュウガツザクラは結実することは稀で、人の手を介して挿し木や接ぎ木で命脈を維持している。人間は何故この様に手間をかけるのか、ソメイヨシノのためなら兎も角。
夏が過ぎ落葉が進み周りの景色が侘びしくなる頃、ジュウガツザクラは開花しする。この時期に空を見上げると地味なジュウガツザクラの花でも印象に残る。しかし春が近づきロウバイやウメが鈴なりに咲き始めると途端に生彩を失う。秋から冬にかけてのこの短い時期がジュウガツザクラの命だ。人は桜一家のジュウガツザクラを眺めつつ春の到来に期待するのだ。ジュウガツザクラは孤高の冬の花だ。


