キンミズヒキ - 人知れずワイルドな存在
キンミズヒキ(金水引)は、バラ科キンミズヒキ属の多年草。名の由来は、慶弔時の包み紙にかける赤や白の水引を、タデ科のミズヒキに例えたが、その黄金版の発想でキンミズヒキになったと思われる。この解釈は日本人にしか分からない。学名に含まれる"Agrimonia"は棘の多い植物を意味し、所謂ひっつき虫に由来する。中国では、葉の周辺のギザギザした切れ込みから龍牙草(りゅうげそう)と呼んでいる。日本の山野に自生するキンミズヒキは、夏になるとバラ科らしい5弁の黄色い花が列をなして咲き、複雑な構成をした葉に見惚れ、秋になると鋭い棘のある果実に驚かされる。美しいが、結構ワイルドな植物だ。人間との関係でいえば、春先には山菜として利用されたり、葉や茎に含まれるタンニンや精油が民間療法に使われるが、文化的には詩歌や物語に登場することはない。雑草であるキンミズヒキに対して、日本人は格別な思い入れは希薄なのだろうか。

【基本情報】
・名称:キンミズヒキ(金水引)
・別名:中国名:リュウゲソウ(龍牙草)
・学名:Agrimonia pilosa var. japonica
・分類:バラ科 キンミズヒキ属の多年草
・原産地:日本、アジア、東ヨーロッパ
・分布:日本各地の山野や路傍に自生
・花言葉:しがみつく
■生態
キンミズヒキは、雌雄同株で、花は両性花のみ。地下には根茎があり、茎は株立ちてよく枝分れし、こんもりと繁る。草丈は生育環境により30~150cmになる。茎には毛が密生し、葉柄の基部には鋸歯のある托葉がある。葉の構成は奇数羽状複葉だが、小葉の大きさはバラバラで規則性はない。この複雑な複葉は、茎に対し互生する。托葉の存在もあり、株の中の葉の構成は階層的で、量的にも多い。小葉は菱状長楕円形で、先端が尖り、葉の縁には粗い鋸歯がある。葉の裏面は白味を帯び、裸眼では見えないほどの腺点が多数ある。







■花
花期は夏から秋にかけてだが、株によって変動する。枝分れした茎先に、蕾が穂状に並ぶが、短い花柄があるので、形式としては穂状花序ではなく総状花序にあたる。生育は総状花序の基部から始まるので、花序に果実、花、蕾が順番に並ぶこともある。キンミズヒキはひっつき虫なので、蕾の段階から先端が巻いた小さな棘がつく。花は両性花で、黄色い花弁が5枚、雄蕊が12本程度、中心に雌蕊は1本ある。萼は5裂し、その先端が花弁の隙間の位置にあるので、正面からも見える。






■果実
花が終わると、花弁が落ち、雄蕊が萎れ、萼が筒のようになり、果実の成長が始まる。果実は円錐形で先端に突起がある萼筒の中で成長し、かぎ状の棘も伸び、ひっつき虫になっていく。果実は痩果で、成熟した萼筒の中に、1個入っている。キンミズヒキの繁殖は、自生株の場合は種子による実生が基本だが、植栽では株分けや挿し木も可能だ。



■名前つながりのミズヒキ
ミズヒキ(水引)は、タデ科イヌタデ属の草本。長い花序に花が並ぶことから、ミズヒキもキンミズヒキも日本では名前つながりで同類として扱われることがあるが、全く別の植物。ミズヒキの仲間でも、萼片が赤いものをミズヒキ、白いものをギンミズヒキとして区別することがある。

■キンミズヒキと日本人
人間との関係が希薄そうなキンミズヒキだが、人間の最大の関心事である老化に対して有効との検証成果が発表された。化粧品や健康食品の研究開発企業ファンケルが、"人の血液中における老化細胞定量法の確立とキンミズヒキ由来アグリモール類摂取による人での老化細胞除去作用の検証"なる記事を公開した(詳細はここをクリック)。
この研究は、2段階で進められた。先ず、日本人の血液中の老化細胞を正確に測定する新しい技術を開発した。指標となるのは、老化関連βガラクトシダーゼ(SA-β-Gal)で、老化細胞と若い細胞を区別し、定量化した。20代から60代の日本人107人を対象に、老化細胞の量が加齢とともに増加することを確認した。 次に、中高年層を対象に、キンミズヒキ由来アグリモール類の摂取が老化細胞に与える影響を臨床試験で検証した。8週間の試験で、男性群においてキンミズヒキ摂取群が老化細胞の割合を有意に減少させる結果が得られたとのこと。現段階では、細胞の老化現象の解明と、その老化細胞の除去手段を見つけたところだが、老化を抑制できる時代が来るのではないかと期待をもたせる。
ファンケルが何故キンミズヒキに注目したのかについて、面白いエピソードがある(詳細はここをクリック)。加齢と脳の関係について研究してきた渡邉研究員が、研究所の4000種類以上のある食品素材ライブラリーの中から、1日数十枚のプレートを手作業で評価する中で、幸運な偶然でキンミズヒキに出会ったとのこと。この成果により、"チーム・キンミズヒキ"が結成され、研究が加速されているようなので、次の発表が楽しみだ。


