アオハダ - 美しくも逞しい存在
アオハダ(青膚)は、モチノキ科モチノキ属の落葉樹。原産地は日本を含む東アジアで、国内では北海道から九州まで自生している。名称のアオハダは、樹皮を剥ぐと緑色の内皮が見えることから。樹高は低からず高からずの10m程度だが、幹は株立して枝は短く横に伸び、自然な樹形をしている。枝に沿って階層的に見える新緑は見栄えし、春に咲く花は節が幾つも重なった"短枝"につき、果実は赤く熟し、秋には黄葉になる。自然の中でも見栄えのするアオハダは、適当な大きさと美しさで庭木として植栽もされている。有用性に関しては、木材としてのアオハダは木肌が白く美しいので、こけし細工や寄木細工に利用される。更に、新芽は食用に、乾燥させた葉は茶の代用品になったりもした。在来種でもあり、人間と付き合いは深い。また、アオハダは自然の中では特に数が多い樹木ではないが、最近の研究によると、自然に任せた鳥などによる種子の拡散や、陽当りなどの生育環境の変化に強く、いざというときに生き残る樹木のようだ。なかなか、美しくも逞しい存在だ。

【基本情報】
・名称:アオハダ(青膚、青肌)
・別名:コショウブナ、マルバウメモドキ
・学名:Ilex macropoda
・分類:モチノキ科 モチノキ属の落葉樹
・原産地:日本、朝鮮半島、中国
・分布:日本では、北海道、本州、四国、九州に自生
・花言葉:-
■生態
アオハダは、雌雄異株。幹は数本が株立して直立し、枝は上方で短く横に広がって、縦長の自然樹形になる。幹は灰白色で皮目が多く、外皮は薄く、剥がれると緑色の内皮が見える。青膚の名の由来だ。枝は2種類に分類される。勢いよく伸びる1年目の枝は長枝、長枝から分岐しても殆ど伸びずに毎年短い間隔で葉痕を幾重にも重ねたものを短枝と言う。長枝に対しては、ジグザグ状になりながら葉は互生する。短枝に対しては、葉は数枚が集まって束生する。葉は広卵形で葉縁に浅い鋸歯がある。葉脈の側脈は7対程度あり、葉の表面では凹み、裏面では突き出る。








■花
アオハダの花は、雌株には雌花、雄株には雄花がつく。花は小さく緑白色で、短枝に束性した葉に隠れるように咲くので目立たない。雌花は短枝に数輪程度つき、花の中央に大きな緑色の雌蕊の柱頭があり、周囲に葯がない退化した雄蕊と花弁や萼が4~5枚つく。一方、雄花は短枝に球状に多数つき、花の中央の雌蕊は退化し、周囲に葯のついた雄蕊と花弁や萼が4~5枚つく。雌花も雄花も、その機能に即した構造をしている。




■果実
花期が終わると、雌株には緑色の若い果実ができる。果実は核果で、秋が近づくと赤く熟す。果実の中には種子が5個程度入っている。晩秋になると、黄葉と赤い果実のコントラストが美しい。果実は冬にも残り、鳥に食べられて拡散する。アオハダの繁殖方法は、この実生による方法もあるが、雄株になるか雌株になるかは運次第。植栽の場合は、挿し木、接ぎ木、取り木で増やすのが普通で、雌株か雄株の選択は可能だ。




■アオハダと日本人
日本人は、アオハダを庭木や工芸材料や食用に利用してきた。そればかりでなく、自然界においても、アオハダの価値が明らかになってきた。産業構造の変化や人口の高齢化によって、全国各地の里山が荒廃し、生物多様性の危機が現実のものとなってきた。里山の林は、二次林と言われ、伐採や風水害、山火事などにより森林が破壊された跡に、土中に残った種子や植物体が生長して成立する。二次林は、クヌギやコナラを中心とした落葉広葉樹林が多く、薪や炭、シイタケ栽培などに利用され、日本の森林の3割程度を占めると言われている。二次林の管理を怠ると、樹木の世代更新が出来ず暗く藪だらけの利用価値のない林になってしまう。こうした課題に対し、実験的に二次林の振る舞いを検証した研究がある。東京農業大学などの研究グループによる"落葉広葉樹二次林に設けたサイズの異なる人工ギャップにおける15年間の構成種変化"だ(詳細はここをクリック)。福島県いわき市の標高660mの二次林に、意図的に高木を伐採した7m、12m、15m四方の人工ギャップ地群を造成し、15年間にわたり、樹種の密度と直径階分布を測定した。人工ギャップ地の中では、鳥や風などによる種子の拡散で繁殖が進み、成長した主な樹種はアオハダ、アオダモ、コシアブラ、ヤマウルシなどであった。この中で、15年間に継続して密度を維持し成長を続けたのはアオハダであった。
別の土地で同じ実験を行うと別の結果になる可能性はあるが、少なくともアオハダという植物は二次林の再生について大きなポテンシャルを持っていることが判明したと思う。今度、散歩中にアオハダに出会ったら、どのような経緯でこの地に根を下ろしたか聞いてみたいものだ。

