ハナズオウ – 相反するイメージ
ハナズオウ(花蘇芳)は、マメ科ハナズオウ属の落葉小高木。中国北中部の原産で、日本へ渡来したのは江戸時代の1695年以前と言われ、現在では全国各地で観賞樹として植栽されている。名の由来は、花の色がインド産のマメ科ジャケツイバラ属の熱帯植物スオウを原料とする染料"蘇芳"に似ているため。春になると、ハナズオウは葉より早く、蝶の形をした鮮やかな赤紫色の花を枝に沿って点々と咲かせる姿は独特で、これがハナズオウの心象風景になっている。日本では、花の色"蘇芳"は高貴な色であり、春を告げる縁起の良い樹木であり、俳句の世界では晩春の季語となり、生花では花の塊が力強さを表現する花材になったりしているので、日本独自の花言葉は、高貴や喜びなど前向きな傾向がある。一方、キリスト教社会では、裏切り者のユダが首を吊った木(正確にはセイヨウハナズオウか)として認知されているので、裏切り、不信などの花言葉がある。日本と海外での評価は極端だが、それだけ印象に残る樹木なのかもしれない。

【基本情報】
・名称:ハナズオウ(花蘇芳)
・別名:スオウバナ(蘇芳花)、中国名:紫荊
・学名:Cercis chinensis
・分類:マメ科 ハナズオウ亜科 ハナズオウ属の落葉小高木
・原産地:中国北中部
・分布:日本には1695年に渡来し、全国(北海道から九州)に植栽される
・花言葉:キリスト教圏では疑惑、裏切り、不信、日本では高貴、喜び など
■生態
ハナズオウは雌雄同株。幹は複数が株立して、上に伸びる。幹からの枝分かれは少ないので、逆さ箒形の樹形になる。樹高は2~6m程度。幹の樹皮は灰褐色で、滑らかで皮目がある。一方、若い枝はジグザグ状で細い部分は紫色を帯びる。冬芽は、花芽が枝の途中に点在するブドウの房状のものであり、葉芽が枝先付近の小さな卵状のものだ。葉は、互生して葉柄が長く、光沢のあるハート形で、縁は滑らかだが裏に少し反り返り、数本の葉脈がある。





■花
春になると、枝に束生した蕾の集団が赤紫色を帯び、やがて蕾の赤紫色の花被片が外側に伸びていく。蕾や花は、 花芽だった部分から短い花柄を介して扁平な楕円体を作るように並ぶ。一つの花の構造はマメ科特有の5弁の蝶形花で、上方の後ろの左右に翼弁が2枚、上方前面に旗弁が1枚、下方に2枚の舟弁(竜骨弁)があり、その中に雌蕊1本と雄蕊が10本ある。花は、殆どが新しい前年枝につくが、古い枝や幹に束生する幹生花も見かけることがある。






■果実
花が終わると、キヌサヤのような緑色の果実ができる。これは豆果で、果皮は次第に赤味を帯びていくが、熟しても自然には裂けず、そのまま冬に残るものもある。豆果の中には数個の種子がある。ハナズオウの繁殖は、この種子による実生か、挿し木による方法が一般的だ。



■近縁種 シロバナハナズオウ
シロバナハナズオウ(白花花蘇芳、学名:Cercis chinensis Bunge f. leucanth)は、ハナズオウの白花の園芸品種。生態はほぼ同じだが、花の色が異なる。ハナズオウの花被片は赤紫色で萼はより濃い色だが、シロバナハナズオウの花被片は白色で黄緑色の萼がつく。印象としては、ハナズオウは鮮やかであるが、シロバナハナズオウは上品で清楚だ。

■ハナズオウと日本人
日本人は、ハナズオウを審美眼の対象として捉え、庭木や華道、文学などに反映してきた。ところが最近では、実用的なハナズオウの薬効に関する特許情報が公開されている。ある化粧品メーカーによる"抗酸化及び老化抑制活性を有するハナズオウ抽出物及びそれを含む抗酸化、皮膚老化抑制及びシワ改善用化粧料組成物:JP4079443B2)(詳細はここをクリック)だ。ハナズオウ抽出物を有効成分として、優れた抗酸化作用、皮膚老化抑制、およびシワ改善効果を有する化粧料組成物を見つけた。この組成物は、植物由来の安全性の高い成分であり、将来的にはアンチエイジング用のスキンケア製品(クリーム、ローション、エッセンスなど)への応用を意図しているとのこと。
ハナズオウと化粧品の意外な組合せだが、どのような形態で市場に出現するのか期待している。

