カルミア - 日本では観賞木、アメリカでは厄介な雑木
カルミア(Kalmia)は、ツツジ科カルミア属の常緑広葉小高木。原産地は、北アメリカ東部やキューバ。カルミアの名称は、原産地の北アメリカの植物調査をしたスウェーデンの植物学者ペール・カルム(Pehr Kalm)に由来する。カルミアの別名に、自生地からアメリカシャクナゲ、花の形からハナガサシャクナゲがあるが、シャクナゲ(ツツジ科ツツジ属)の仲間ではない。日本には大正4年に、東京市がアメリカにサクラを贈った返礼として、ハナミズキとともに贈られ渡来した。全国的に栽培が広がったのは昭和30年代の終わりからなので、庭木としての歴史は浅いが、金平糖のような蕾やパラソルが開いたような花の形が独特で、人気がある。カルミア属の原産地には幾つかの種があるが、その中で日本で普及しているのはラティフォリア種(Kalmia latifolia)で、これを単にカルミアと呼ぶことが多い。異国風な雰囲気があるので、庭木としての需要が多く改良が進み、花の色や模様、樹高などのバリエーションも豊富になってきた。原産地のアメリカでは、普通に山野で繁茂する雑木であり、樹木全体に有毒物質が含まれるため、放牧された羊が中毒を起こし"羊殺し(Lambkill)"と呼ばれたり、カルミアの蜜から作られた蜂蜜によって"マッドハニー中毒"を起こしたりする。カルミアは、日本では日米友好の証しであり園芸植物の世界で生きているが、原産地アメリカではありきたりの雑木であって、人間の営みの中では少し厄介な存在と思われているのかもしれない。

【基本情報】
・名称:カルミア(Kalmia、山月桂)
・別名:アメリカシャクナゲ(亜米利加石楠花)、ハナガサシャクナゲ(花笠石楠花)
・学名:Kalmia latifolia
・分類:ツツジ科 カルミア属の常緑広葉小高木
・原産地:北アメリカ東部、キューバ
・分布:日本には大正4年に移入され、昭和30年代後半に本格的に普及
・花言葉:優美な女性、大きな希望、爽やかな笑顔、にぎやかな家庭、など
■生態
カルミアは、雌雄同株。幹は直立し、多く枝分かれする。樹皮は灰褐色で縦皺が入るが、若い枝は緑色から茶色。カルミアの冬芽は、葉芽より花芽が先行する。花芽は厳冬のうちに楕円体のものができ、これが展開して、数本の房状の未熟な蕾に生育する。葉芽は、花芽が開いた頃でも、枝の先で膨らんだ状態のままだ。冬の枝には、側芽の下に隣接して葉痕がある。






葉は互生するが、枝先に集中して螺旋状になる。葉は披針形で、表面は革質で光沢があり、周辺に鋸歯は無く全縁。葉の裏面は、光沢は無く黄緑色を帯びて疎らに薄い毛が生える。



■花
枝先の花芽が成長すると、次第に散房花序が形成される。長い花柄が伸び、その先に蕾ができる。蕾はピンク色の金平糖のような形をし、外周に10個の突起(これは雄蕊の葯に対応)があり、萼は5枚ある。蕾のユニークな形状と、濃淡がはっきりした色合いが、観賞対象としてのカルミアを印象付けている。



カルミアの花は両性花であり、花冠は緩やかな五角形でお椀状になり、花弁の色は蕾と比べ白っぽくなる。このお椀のような形を花笠に見立てて、花笠石楠花の別名がある。花の構造は、中央に柱頭の色がピンクの雌蕊が1本、周辺に雄蕊が10本あるが、開花直後は葯が花弁に埋まっている。カルミアは虫媒花で、昆虫が花に入って来ると、雄蕊はバネのように振れて葯が昆虫につき、葯は花弁から離れる。時間が経つと、雄蕊が花弁から離れるものが次第に多くなる。また、蕾や花の色はピンクを基調としたものだが、より赤味がかったものや白っぽい品種も散見される。






■果実
花が終わると、花弁や雄蕊、最後に雌蕊が落ち、果実へと成長する。やがて、細かな毛に覆われた褐色の果実ができる。果実は蒴果で、5つの部分に別れ、やがて裂けて多数の種子を出す。自生地でのカルミアの繁殖方法は、種子による実生が基本だが、地面の状態によっては根茎の伸長による栄養繁殖もあるようだ。園芸植物と繁殖させるには、挿し木や取り木が一般的だ。



■カルミアと日本人
原産地の北アメリカでは、カルミアはありふれた植物であるが、最近では気候温暖化など生態系の変動による影響とか内部に含まれる有毒成分の科学的な分析などが進められ、自然環境や人間社会との調和を目指すような研究が進んでいる。一方日本では、カルミアは園芸植物として植栽され、その歴史も浅く、現状では人間生活との接点も少ない。金平糖のような蕾を持ち魅力的で異国風のカルミアは、果たして日本人の文化や生活様式にどこまで浸透していくのだろうか。

