レンギョウ - すっかり根付いた春の黄色い花
レンギョウ(連翹)は、モクセイ科レンギョウ属の落葉性低木広葉樹。原産地は中国だが、日本へ渡来した時期は、平安時代初期に薬用として伝来したとか、江戸時代初期に栽培された記録があるとか諸説あり、はっきりしない。しかし、寒さに強く繁殖力も旺盛なので、現代の日本では春を告げる黄色い花として、全国各地の公園や道路の植え込みになど植栽され、すっかりお馴染みの存在になっている。実は一言でレンギョウと言っても、レンギョウ属に分類され、姿形がそっくりで識別が難しいシナレンギョウやチョウセンレンギョウが存在し、これらを含めて広義の"レンギョウ"と呼ばれている。日本文化との関わりは、果実が生薬"連翹"として伝統的な漢方薬となり、俳句では仲春(3月〜4月頃)の季語となり、詩人で彫刻家の高村光太郎がこよなく愛し(命日を連翹忌と呼ぶ)、画家伊藤若冲が画集に表現した。どうやら、日本人が本格的に外来種のレンギョウを身近な植物として受容したのは近世以降のようだ。

【基本情報】
・名称:レンギョウ(連翹)
・別名:レンギョウウツギ(連翹空木)、中国名:連翹、黄寿丹、英名:golden bells
・学名:Forsythia suspensa
・分類:モクセイ科レンギョウ属の落葉性低木広葉樹
・原産地:中国
・分布:日本では、北海道から九州まで植栽されている
・花言葉:希望、期待
■生態
雌雄異株で、株立ちして樹高は1~3mになる。繁殖力が旺盛で、半つる性の枝が湾曲して垂れ下がり地面に接触すると、そこからも根を出す程だ。しかし、公園や庭に植栽されるレンギョウは、強剪定されて樹形は整形されるので、自然樹形の株を見る機会は少ないかもしれない。地面から数本の幹が株立し、幹の樹皮は灰褐色で、膨らんだ皮目がつく。よく分枝し、枝は節を除いて髄が中空になるので、”連翹空木”の別名もある。冬芽は楕円体で枝に対生し、葉芽は小さく、花芽は大きい。花芽は、数枚の芽鱗に包まれている。葉痕は半円形で、1個の維管束痕が残る。春になると、冬芽の花芽が開花し、花が咲き終えると、入れ替わるように黄緑色の若葉が出る。葉は広卵形で先端が尖り、疎らな鋸歯がつく。葉の色は、次第に濃緑色になり、やがて秋になると茶色や紫色を帯びる。











■花
春になると、冬芽の花芽が成長し、黄色くなって蕾となる。開花すると、花は黄色の合弁花で、深く4裂する。正に、英名の "Golden Bells"を彷彿させる。4枚の萼は楕円形で、花弁を支え、短い花柄につながっている。



ここからが、ややこしくなる。レンギョウは雌雄異株なので、雄株には雄花が、雌株には雌花がつく。雄花の役割は、雄蕊で花粉を放出する葯を花の中心に突出させて、昆虫の体に触れ易いようにすること。このとき、雄花の雌蕊は雄蕊の葯より低い位置に2裂した柱頭があり、受粉の機能があるのかは不明だが、極力昆虫と触れないようになっている。一方、雌花は雌蕊の2裂した柱頭が高く突出し、その下に2本の雄蕊がある。確かに昆虫がくると雌蕊に触れる機会は多そうだ。そして、雄花も雌花も構成要素は同じで、1本の雌蕊と2本の雄蕊からなり、両性花に近いが、雄蕊と雌蕊の位置関係が異なる。この構造だと雌花は自家受粉はしないのだろうか、雄蕊と雌蕊の成熟時期が少しずれるのだろうか…など、疑問は残る。しかし、そんなことにお構いなく、満開のレンギョウの花は、桜の満開時期と重なり、すっかり代表的な日本の春の景色になってしまった。



■果実
花が終わると、楕円体で緑色の若い果実が出来る。果実は蒴果で、先端部は尖り、雌蕊の2裂した柱頭の痕跡が残り、表面に粒上の皮目がある。成熟すると2裂して種子を放出する。種子を落とした枯れた果実の殻は皮目模様をつけたまま、冬でも枝に残る。レンギョウの繁殖方法は、自生の場合は実生によるが、植栽の場合は挿し木が一般的だ。



■近縁種のシナレンギョウとチョウセンレンギョウ
日本で植栽されている"レンギョウ”には、本種のレンギョウの他に、中国原産のシナレンギョウ(学名:Forsythia viridissima)と、朝鮮半島原産のチョウセンレンギョウ(学名:Forsythia ovata)がある。これらを区別する特徴は、一応はある。樹形は、レンギョウとチョウセンレンギョウは幹が株立して枝は良く伸びて弓なりに下垂するが、シナレンギョウは幹は直立しても枝はほとんど下垂しない。葉身は、レンギョウは最大幅部分は基部に近く、チョウセンレンギョウは中央部が最大幅、シナレンギョウは葉が細身で最大幅は先端寄り…など。更に、枝を割って観察すると、レンギョウは中空、シナレンギョウとチョウセンレンギョウは梯子状に髄が残る。これらの指標はアナログ的なものもあり、外観からではわからないものもあるので、判定が難しい。更に、大抵の"レンギョウ"は庭木として強剪定されているので、区別するのは容易でなく、現実的には区別する必要性もあまり感じられない。参考として、植物園で見たシナレンギョウとチョウセンレンギョウの写真を挙げておくが、やはり広義のレンギョウが”レンギョウ”だと思う。




■レンギョウと日本人
レンギョウは、古くから乾燥した果実を生薬"連翹"として、伝統的な漢方薬に調合されてきた。果実には、抗菌や消炎作用を示すフェネチルアルコール配糖体や、肝臓での脂質代謝を改善し肥満を抑制するポリフェノールが含まれることが既に知られている。
鈴鹿医療科学大学らの研究グループは、レンギョウの葉の薬効に関して研究を進め、世界的な化学雑誌Moleculesで"The Biological Effects of Forsythia Leaves Containing the Cyclic AMP Phosphodiesterase 4 Inhibitor Phillyrin"を公開した(詳細はここをクリック)。葉には果実よりも多くのポリフェノールが含まれ、しかも葉に含まれるポリフェノールには、肥満やアトピー性皮膚炎、A型インフルエンザウイルス感染に対する予防効果のあることを明らかにした。また植物性エストロゲン様物質(大豆イソフラボンのような植物に含まれる女性ホルモンに似た構造と作用を持つ成分)が含まれていることを示し、健康食品素材として葉の有用性を提示した。
レンギョウの果実のみならず、葉にも薬効があることを示した研究成果だ。ここから始まる薬品や健康食品へのアプローチに期待したい。

