コウテイダリア - 逆境の日本で毅然と生きる

 コウテイダリア(皇帝ダリア)は、キク科ダリア属の多年草。晩秋の花が少なくなる時期に、急成長して高い茎の先に大輪のピンク色の花を咲かせる。この植物は、昼の長さと夜の長さの変化に敏感(光周性)で、北半球では冬至の頃までに花は咲き急ぐ。また、その姿も特異だ。草本にも拘らず、茎は竹のように節があって硬く、上部のに花や葉を背負いながら、高さが数mにもなるので、見上げるようにして観賞する。コウテイダリアの名は、学名の"imperialis"に由来するが、別名の木立ダリア(キダチダリア、コダチダリア)は、茎の形態による。コウテイダリアは、江戸時代末期に"天竺牡丹"として、日本に渡来し、園芸植物として植栽されている。原産地はメキシコなどの高地であるため、日本の気候には順応しにくい点がある。霜にあたると萎れ、花後の果実が熟成する期間は冬になり種子繁殖は困難。それでも、日本人は毅然として気品のあるコウテイダリアを庭に植えて愛でている。

花期のコウテイダリア (‎2014‎年‎11‎月‎13‎日 所沢市)

【基本情報】
 ・名称:コウテイダリア(皇帝ダリア)
 ・別名:キダチダリア(木立ダリア)、コダチダリア(木立ダリア)、タラノハダリア
 ・学名:Dahlia imperialis
 ・分類:キク科 ダリア属の多年草
 ・原産地:メキシコ、コロンビアなど中米の高地
 ・分布:日本では園芸種として帰化し、霜の当たらない温暖な地域で栽培可能
 ・花言葉:乙女の真心、乙女の純潔

■生態
 コウテイダリアは雌雄同株の多年草で、地中に大きな塊根があり、そこから茎が直立し、草丈は3~6m程度になり、住宅の高さに匹敵する程だ。茎は古くなると木質化し、竹のような節が出来るが、内部は中空ではなく、樹液がある。茎の下部は分枝せず、中程に葉がつく。葉は対生し、葉の構造は複雑な2~3回羽状複葉で大きく、葉柄の基部は茎を抱く。小葉は長楕円形で先が尖り、葉の周辺には鋸歯がある。茎の上方では、葉の腋から散形状に多数の頭花をつける。

株の全景 (‎‎2023‎年‎11‎月‎28‎日 所沢市)

直立した茎は、古くなると木質化し、竹のような節が出来る (‎‎2025‎年‎12‎月‎11‎日 所沢市)

葉は対生し、葉柄の基部は茎を抱く (‎‎2025‎年‎12‎月‎11‎日 所沢市)

葉は構成は、2~3回羽状複葉 (‎‎2025‎年‎12‎月‎11‎日 所沢市)

小葉は葉の周辺には鋸歯がある (‎‎2025‎年‎12‎月‎11‎日 所沢市)

葉の腋から長い花序軸を出し、分枝した先に多数の頭花の蕾をつける (‎‎‎2022‎年‎11‎月‎27‎日 所沢市)

■花
 コウテイダリアはキク科の植物なので、一般に花と思われているのは頭花であり、頭花は幾つかの舌状花と、多数の筒状花からなる。蕾の状態の頭花は、外側の5枚の総苞の先に、内側の総苞に包まれたほぼ球形のものがあり、開花が近づくと赤みを帯びるてくる。やがて開花すると、茎の上部で散形状にピンク色の頭花が連なる様子はなかなか豪華だ。頭花が開花すると内側の膜質の総苞は8裂し、それが舌状花の8枚の花被片を支える。舌状花は昆虫を引き寄せるためのシンボルであって、雌性または無性といわれ、繁殖には寄与しない。頭花の大部分を占める筒状花の開花は、周辺のものから中央部に向かて徐々に進む。筒状花は始めに棒状の雄蕊が出て、その後柱頭が2裂した雌蕊が出るので雄性先熟タイプであり、自家受粉を回避している。やがて頭花は、舌状花の花被片が萎れて落ち、膜質の総苞に包まれて筒状花の雌蕊の柱頭だけが残る。

外側の5枚の総苞の先に、内側の総苞に包まれた頭花の蕾があり、開花が近づくと赤みを帯びる (‎‎‎‎2025‎年‎12‎月‎1‎日 所沢市)

蕾が開花すると、茎の上部で散形状にピンク色の頭花が連なる様子は豪華 (‎2009‎年‎11‎月‎15‎ 所沢市)

頭花が開花すると内側の膜質の総苞は8裂し、周囲に並ぶ舌状花の花被片も8個ある (‎‎‎‎2023‎年‎11‎月‎28‎日 所沢市)

頭花はキク科らしく、中心部は多数の筒状花、周辺は8個の舌状花からなる (‎‎2023‎年‎11‎月‎28‎日 所沢市)

頭花の筒状花の開花は、周辺のものから始まり、中央部は未だ蕾の状態 (‎2023‎年‎11‎月‎28‎日‎ 所沢市)

筒状花は始めに棒状の雄蕊が出て、その後柱頭が2裂した雌蕊が出る雄性先熟タイプ (‎‎2022‎年‎11‎月‎27‎日 所沢市)

やがて頭花は、舌状花の花被片が萎れて落ち、筒状花だけが残る (‎‎2022‎年‎11‎月‎27‎日‎ 所沢市)

このときの筒状花は雌蕊だけが残り、果実を作る準備が始まる (‎‎2022‎年‎11‎月‎27‎日‎ 所沢市)

■果実
 花期が終わると、膜質の総苞の先が閉じて若い果実が出来る。形は頭花の蕾と似ているが、形状は先が尖った砲弾形で、色は黄緑である点が異なる。原産地のメキシコなどでは、果実が成熟すると痩果となり、その中に含まれる種子によって繁殖する。しかし、日本では若い果実が出来た頃には冬となり、それ以降の生育は不可能だ。草本で暑い地域で育ったコウテイダリアは、日本の冬には弱く、霜に当たって倒れるものもある。運よく、冬の茎の先に残る枯れた果実を見ると、異国の地で生きる厳しさを感じさせる。そのため、日本では人の手を借りて、株分けか挿し木によって繁殖が可能となり、園芸植物として生き延びている。

頭花の若い果実の形は蕾に似ているが、黄緑色で砲弾形に近い (‎‎2022‎年‎11‎月‎27‎日‎ 所沢市)

霜に当たって倒れなければ、冬には枯れた頭花が残ることがある (‎‎‎2025‎年‎2‎月‎14‎日‎ 所沢市)

■コウテイダリアと日本人
  コウテイダリアの花は一重であり、草丈も高いので野外の株を見上げながら観賞する。同じダリア属の一般的な植物は、やはり花は大きく、八重であったり、色も様々なので、切り花は結婚式や各種のイベントで人気かある。これらのダリアの栽培現場では、うどんこ病が重要病害であり、これを防除するには定期的に殺菌剤の散布が必要で、環境に対する負荷は大きい。この課題を解決するため、千葉大学などの研究グループが研究成果"画期的なダリアの新品種2点を育成、温室での省農薬栽培と増産が可能に"を公開している(詳細はここをクリック)。様々なダリアの品種のうどんこ病菌の接種試験によって、コウテイダリアにうどんこ病抵抗性遺伝子があることが分かった。しかし、コウテイダリは、草丈が高く、開花時期も極めて遅く、さらに花が一重咲きで観賞価値がない等、多くの花卉園芸的には望ましくない”不良形質”を持っている《立場が変わると、大変な言い分だ!》。このため、ダリアとコウテイダリアの交雑を第5世代まで重ねて、コウテイダリアの不良形質を排除しつつ、うどんこ病抵抗性を保持した系統を選抜した。その結果、切り花ダリアでは重要なホワイトとマゼンタの新品種を育成した。

 この研究では、コウテイダリアのうどんこ病耐性だけがクローズアップされていたが、日本の花卉産業に寄与できたので、まぁ良いか。だけど、コウテイダリアを美しいと思う日本人も多いと思うけど。