ヒヨドリジョウゴ - 実も花も葉も独特

 ヒヨドリジョウゴ(鵯上戸)は、ナス科ナス属の多年草。日本の在来種であり、全国の山野に自生する雑草。名の由来は、酒が苦手の人を下戸と言い、大酒飲みを上戸(じょうご)と呼ぶが、小鳥のヒヨドリがこの赤い実を好んで食べることから命名された。蔓性の植物で、陽当りの良い山野や道端で、他の植物に絡みついて成長する。茎も葉にも細かな毛が密集して、触れるとベトベト感があり、これが絡みつくのに役立ちそうだ。花は、5弁の白いナス科らしい形で、緑の斑点のアクセントもあり美しい。雄蕊の花粉の出口が一方向に限定されているので、昆虫が仲介してするには構造的にやり難く、何か秘密でもありそうだ。葉の形も不安定だ。茎につく場所によって、3通り程度に変化する。果実も曲者だ。ミニトマトを更に小さくしたような鈴なりの赤い実は美味しそうだが、ソラニンという毒性物質を含むので、人間が沢山食べると嘔吐や下痢などを引き起こす。ヒヨドリジョウゴは、現代の日本人にとっては有用な植物ではないが、夏の小さな白い花や、秋の赤い果実が季節の移ろいを感じさせてくれる。古典文学の世界では、一般に広く知られた植物でも無く、華やかな印象もなかったので、取り上げられることはなかった。結局、ヒヨドリジョウゴは、昔も今も、知る人ぞ知る雑草なのだ。

ヒヨドリジョウゴの果実 (‎2003‎年‎11‎月‎8‎日 所沢市)

【基本情報】
 ・名称:ヒヨドリジョウゴ(鵯上戸)
 ・別名:ホロシ(保呂之、桯)
 ・学名:Solanum lyratum
 ・分類:ナス科 ナス属の蔓性多年草
 ・原産地:東アジアから東南アジアに広く分布
 ・分布:日本の在来種で、全国の山野に自生
 ・花言葉:忍耐、成長、真実

■生態
 根茎から地上に現れたヒヨドリジョウゴの茎は木質のように硬く、やがて枝分かれして細くしなやかになって上方に伸びていき、周囲に草木やフェンスなどがあると、それらに絡まる蔓性の植物で、高さは2m程になる。茎や葉など、全草が柔らかな毛に覆われている。葉は茎に互生し、葉の形は場所によって異なり、枝の基部から先になる程、5裂、3裂、卵形に変化する。葉に鋸歯はなく、短い毛に覆われる。蔓性ではあるが、他の植物を覆い尽くす程の攻撃力はない。

蔓性で茎は長く伸び、周囲の草木などに絡まって、高さは2mにもなる (‎‎2023‎年‎5‎月‎9‎日 所沢市)

根茎から地上に堅い木質のような茎を上方に伸ばし、絡みつく相手を探す (‎‎2025‎年9‎月26日 所沢市)

茎や葉は、柔らかな毛に覆われている (‎‎‎2025‎年‎9‎月‎23‎日 所沢市)

葉は、茎に互生する (‎‎2025‎年9‎月26日 所沢市)
葉形は、枝の基部から先になる程、5裂、3裂、卵形に変化する (‎‎2025‎年9‎月26日 所沢市)

5列した葉の例、鋸歯はなく、短い毛に覆われる (‎‎2025‎年9‎月26日 所沢市)

■花
 ヒヨドリジョウゴは雌雄同株で、花は両性花。茎につく葉の腋から、集散花序を出し多数の蕾ができる。同じ花序でも、蕾から花になる時期に多少時間差があるようだ。蕾の先が割れて開花すると、白い花冠が深く5裂し、後方に反り返る。花冠の基部には緑色の斑点があり、黄褐色の葯をもつ雄蕊が5本あり、雌蕊の花柱が突き出る。他のナス科の植物と同様に、花粉は葯の先端の穴から放出される特殊な構造をしている。

葉の腋から、集散花序を出し多数の蕾ができる (‎‎2025‎年9‎月26日 所沢市)

蕾の先が割れて開花すると、白い花冠が深く5裂し、後方に反り返る (‎‎‎‎‎2007‎年‎9‎月‎8‎日 所沢市)

花冠の基部には緑色の斑点があり、黄褐色の葯をもつ雄蕊が5本あり、雌蕊の花柱が突き出る (‎‎‎‎‎‎2008‎年‎9‎月‎27‎日 所沢市)

花期の花序の様子、開花する時期に多少の違いはある (‎‎‎‎‎‎2004‎年‎9‎月‎11‎日 所沢市)

■果実
 花が終わると、花被片や雄蕊、雌蕊が落ち、子房が成長して緑色の若い果実になる。果実は生育するにつれ、果皮は緑色から赤へと変化する。果実は液果で、陽が当たると、果皮を通して多数の種子があるのが分かる。冬になると果皮に皺がよるが、枝に残るものも多い。この赤い果実は、人間にとっては有毒だが、餌の少ない冬にはヒヨドリなどの野鳥が集まる。

花が終わると、子房が成長して緑色の若い果実になる (‎‎‎‎‎2007‎年‎9‎月‎8‎日 所沢市)

果実は生育するにつれ、果皮は緑色から赤へと変化する (‎2009‎年‎10‎月‎12‎日 所沢市)

果実は液果で、陽が当たると、果皮を通して多数の種子があるのが分かる (‎‎‎2009‎年‎10‎月‎12‎日 所沢市)

冬になると果皮に皺がよるが、枝に残るものも多い (‎‎2009‎年‎1‎月‎11‎日 所沢市)

■ヒヨドリジョウゴと日本人
 ヒヨドリジョウゴの花の構造は、少し変わっていて、雄蕊の葯の花粉の出口方向と、雌蕊の方向が同じであることを述べた。この理由について解析を行った研究報告がある。東京大学の研究グループによる"日本産ナス属植物における花形態変異と系統関係"だ(詳細はここをクリック)。先ず、ヒヨドリジョウゴは、自家和合性(自家受粉可能)なのか、それとも自家不和合性なのかとの課題にたいして、日本在来ナス属植物4種(ヒヨドリジョウゴ、ヤマホロシ、マルバノホロシ、オオマルバノホロシ)を用いて、自生個体と博物館標本をゲノム解析法を用いて、単一の進化的系統からなりことを確かめ、更にヒヨドリジョウゴで袋がけ実験と花粉管伸長観察を行なったところ、本種は自家和合性であることが明らかになった。また、ヒヨドリジョウゴは、他の3種と比較すると、葯から柱頭までの距離が長く、自家和合性であっても出来るだけ自家受粉を防ぎ、他の花の花粉を受け入れるように、花の形が進化した可能性が示唆された。
 花の形態一つにしても、このような説明があると、納得できる。葉の形の変形についても何か理由がありそうだ。身近な雑草ヒヨドリジョウゴは、未だ謎は多いようだ。