アカメガシワ - 際立つ鮮紅色の芽吹き

 アカメガシワ(赤芽柏)は、トウダイグサ科アカメガシワ属の落葉高木。日本の在来種で、陽当たりの良い山野や道端で自生しているのを普通に見かける。名の由来は、春の芽吹きが鮮やかな紅色で、大きな葉の形や、用途が食べ物を蒸す目的で使う"炊(かし)ぐ葉"であるカシワ(柏)に似るから。実際に、野生種でありながら、柏の葉の代用品として使われた時代もあったようだ。その理由は、何処にでも生える身近な存在だからだ。実は、アカメガシワは代表的なパイオニア植物であり、伐採跡地や土砂崩れなどで出来た裸地に、逸早く定着して旺盛な繁殖力で群落を形成する。その種子を鳥が運ぶので、市街地でも発芽し成長するが、大抵の場合は若木のうちに雑草とともに駆除される。自然のままに生育した成木を植物園で見たときには、樹高が10mを超え、これが同じアカメガシワかと面食らってしまった。今日のアカメガシワの健全な分布状況は、アカメガシワの繁殖力と日本人の勤勉な除去作業の間で、毎年微妙なバランスが取れている状態なのかもしれない。植物としてのアカメガシワは、春の鮮やかな紅色の芽吹きばかりでなく、雌雄異株でそれぞれの風変わりな花や、果実が出来るまでの変容過程など、なかなか魅力的だ。実用的な意味では、葉の器の他、生薬や染料として使われた。古代文学では楸(ひさぎ)として、万葉集(山部赤人)に登場したり、俳句では楸は秋の季語として落葉を表現するらしい。しかし、現代文学でアカメガシワが登場することはない。今どきの日本人には、アカメガシワは数多い雑木の一つなのだろう。

春の若葉は、鮮紅色で良く目立つ (‎2023‎年‎4‎月‎10‎日 所沢市)

【基本情報】
 ・名称:アカメガシワ(赤芽柏、赤芽槲)
 ・別名:ゴサイバ(五菜葉)
 ・学名:Mallotus japonicus
 ・分類:トウダイグサ科 アカメガシワ属の落葉高木
 ・原産地:日本、朝鮮半島、台湾、中国南部
 ・分布:日本では東北地方南部から沖縄までの山野に自生
 ・花言葉:澄んだ心、繊細、謙虚さ、思いやり

■生態
 アカメガシワは雌雄異株だが、花が咲くまでは殆ど区別ができない。アカメガシワは、露出した地面に最初に侵入するパイオニア植物だが、若い株の茎は細いので草本のようにしか見えない。しかし、成長は早く、枝は光を求めて上へと伸び、樹高は5~10m程度になる。成木の幹の樹皮は灰褐色で、縦方向に線状の模様が入る。葉は長く赤い葉柄を持ち、茎に対し互生する。若い枝は赤褐色で、表面に星状毛がつく。葉の形は時期によって異なる。花期の葉は広い卵型で先端が尖り、葉の縁は不明瞭な波型になる。葉の裏面は、葉脈が目立ち、多数の小さな腺点がある。芽生えた葉は赤く、浅く3裂した形状になり、赤い星状毛に覆われる。この若い葉の赤い星状毛は、成長するにつれ薄くなり、やがて緑色になる。また、葉表の基部に2個の蜜腺があり、アリなどが集まる。

露出した地面に、最初に侵入するパイオニア植物でもある (‎2025‎年‎9‎月‎15‎日 所沢市)

枝は光を求めて上へと伸び、樹高は5~10m程度になる (‎‎2024‎年‎6‎月‎14‎日 所沢市)

成木の幹の樹皮は灰褐色で、縦方向に線状の模様が入る (‎‎‎2024‎年‎9‎月‎5‎日 東京都薬用植物園)

葉は長く赤い葉柄を持ち、茎に対し互生する (‎‎‎2025‎年‎7‎月‎13‎日 所沢市)

:若い枝は赤褐色で、表面に星状毛がつく (‎‎‎‎2025‎年‎7‎月‎9‎日 所沢市)

花期の葉は広い卵型で先端が尖り、葉の縁は不明瞭な波型 (‎2025‎年‎7‎月‎9‎日 所沢市)

葉の裏面は、葉脈が目立ち、多数の小さな腺点がある (‎‎‎‎2025‎年‎7‎月‎9‎日 所沢市)

芽生えた葉は赤く、浅く3裂した形状になり、赤い星状毛に覆われる (‎2014‎年‎4‎月‎9‎日 所沢市)

この赤い星状毛は、成長するにつれ薄くなり、やがて緑色になる (‎‎‎‎2025‎年‎5‎月‎7‎日 東京都薬用植物園)

葉表の基部に2個の蜜腺があり、アリなどが集まる (‎2023‎年‎6‎月‎6‎日 所沢市)

■花
 雌雄異株のアカメガシワには、雄株に雄花が、雌株には雌花がつく。茎先の葉の脇から、円錐花序が伸びるのは、雌雄共通だ。雄株の場合は、円錐花序には球形の蕾がつき、それらが順次開花する。雄花には萼はあるが、花弁は無く、長い花糸を持ち、先端に黄色い葯をつけた多数の雄蕊が球形のように展開する。雄花は、花序の基部から先端へと咲き進む。

葉の脇から枝が伸びて円錐花序をつけ、雄花の蕾がつく (‎‎2025‎年‎9‎月‎10‎日 所沢市)

雄花には萼はあるが花弁は無く、長い花糸を持つ雄蕊が球形のように展開する (‎‎‎2005‎年‎7‎月‎23‎日 所沢市)

雄花は、花序の基部から先端へ咲き進む (‎‎‎‎2023‎年‎7‎月‎10‎日 稲荷山公園)

 雌株の茎先の葉の脇から、雌花の円錐花序が伸びる。雄花と同様に、雌花にも花弁は無く、萼に包まれた棘のある子房から3本の花柱が伸びる。やがて、この子房が生育して果実になる。

雌株の茎先の葉の脇から、雌花の円錐花序が伸びる (‎‎‎‎2025‎年‎9‎月‎9‎日 所沢市)

雌花に花弁は無く、萼に包まれた棘のある子房から3本の花柱がでる (‎‎‎‎2025‎年‎9‎月‎9‎日 所沢市)

■果実
 雌花の子房が成長して若い果実になり、花序に多数連なる。果実の形は三角状偏球形で、柔らかい棘があり、赤い3本の花柱が残る。果実は蒴果で、褐色に熟すと3裂して、黒い種子を3個出す。この種子をメジロやキツツキなどの野鳥が食べて、離れた場所に拡散する。アカメガシワの繁殖方法としては、この実生によるもののほかに、地下の根から新しい芽(シュート)を出したりして、繁殖能力は高い。特に種子の場合は、何年も地下に埋蔵されている場合でも、35℃前後の温度に数時間経験すると発芽すると言われている。花期は普通は初夏(6~7月)だが、異常に暑い気候が続くと9月でも花をつけることもある。

雌花の子房が成長して、若い果実が花序に多数連なる (‎‎‎‎‎2025‎年‎7‎月‎13‎日 所沢市)

果実は三角状偏球形で、柔らかい棘があり、赤い3本の花柱が残る (‎‎‎‎‎2025‎年‎7‎月‎13‎日 所沢市)

果実は蒴果で、褐色に熟すと3裂して、黒い種子を3個出す (‎‎‎‎‎‎2025‎年‎8‎月‎28‎日 所沢市)

■冬のアカメガシワ
 アカメガシワは冬には落葉し、枝の先端や節々に冬芽がつく。一般の冬芽は芽鱗で覆われることが多いが、アカメガシワの冬芽は淡褐色の星状毛が密生する裸芽だ。

冬には落葉し、枝の先端や節々に冬芽がつく (‎‎‎‎‎2025‎年‎1‎月‎24‎日 東京都薬用植物園)

アカメガシワの冬芽は芽鱗で覆われず、淡褐色の星状毛が密生する裸芽 (‎‎‎‎‎2025‎年‎1‎月‎24‎日 東京都薬用植物園)

■アカメガシワと日本人
 アカメガシワは、薬用として、生薬(野梧桐:やごどう)となったり、民間療法として利用されてきた歴史はある。最近の研究では、生体の老化を抑制するため、 生体酸化ストレスを中和、無毒化する抗酸化活性を有する素材としての研究が盛んになっている。その成果として、島根県産業技術センターが "アカメガシワ葉の抗酸化活性及び活性成分の解析とヒト効果試験" (2012年、詳細はここをクリック)。 アカメガシワの他に、抗酸化活性に関する報告が多い緑茶、ルイボスティー、赤ワインとの比較をし、総ポリフェノール濃度、抗酸化活性、総抽出成分量を調査した。 アカメガシワの葉の抗酸化活性は緑茶より高く、ルイボスティーの3.9倍、赤ワインの2.2倍と高い値を示した。また、血管強化作用のあるルチンの含有量が多いとされる韃靼ソバと同等の含有量があることが分かり、ルチンの摂取源としても期待できる。更に、アカメガシワによる肌改善効果、体型改善効果をについて、BMI25以上、体脂肪25%以上で肌の弾力が低めの成人女性を対象にオープンラベル試験を行い、体脂肪の低下、キメの改善と美白効果があることが示唆された。
 本研究の発表から10年余り経過し、現在のところ、アカメガシワを材料とする食品や薬品は、アカメガシワ茶やサプリメント、漢方薬の材料の一部などだ。原材料のアカメガシワは豊富にあるので、今後は適用製品の拡大に期待したい。