キクイモモドキ - 名は芋でも、姿は向日葵

 キクイモモドキ(菊芋擬)は、キク科キクイモモドキ属の多年草。北米の原産で、日本へは明治中期に渡来し、観賞用に栽培されたが、逸出して自生もしている。キクイモモドキについて語るには、キク科ヒマワリ属のキクイモへの言及は避けられない。キクイモも北米原産の植物だが、その地下の大きな塊茎が食用や薬用にも使われ、広く利用されている。一方、キクイモモドキはやや小型で花や株の様子がそっくりだが、有用な塊茎ができないため、"擬き"つきの不名誉な名がついた。そればかりか、英語圏では"False sunflower"(偽の向日葵)と呼ばれている。一方、学名の"Heliopsis(太陽のような) helianthoides(向日葵のような)"は、花の美しさを客観的に表現していると思う。よく見るとキクイモモドキの花は、花弁は広くて明るく、中心部は盛り上がり、立体的で周密な印象を受けるので、観賞用に植栽されるのも納得できる。人間にとって実用的な利点はないとしても、小さな向日葵を思わせるキクイモモドキは、新たな夏の風物詩と言って良いのかもしれない。

キクイモモドキの花 (‎2024‎年‎6‎月‎27‎日 所沢市)

【基本情報】
 ・名称:キクイモモドキ(菊芋擬 )
 ・別名:シュッコンヒメヒマワリ(宿根姫向日葵)、ヒメキクイモ(姫菊芋)、ヘリオプシス
 ・学名:Heliopsis helianthoides
 ・分類:キク科 キクイモモドキ属(ヘリオプシス属)の多年草
 ・原産地:北米
 ・分布:日本へは明治中期に渡来し、全国各地で栽培、若しくは逸出して野生化
 ・花言葉:細やかな気配り、憧れ、崇拝

■生態
 キクイモモドキは、キクイモのように地下に塊茎を作らずに、地下茎から地上に茎が直立して伸びる。株は群生し、草丈は比較的低く1m程度。茎の葉腋から、分岐して複数の花柄が伸びる。葉は、茎に対生する。花柄は長く、葉はつかないので、黄色い花が葉の繁みから浮き上がったように見える。葉は細長い卵形で先端が尖り、葉の周囲には粗い鋸歯がある。

株は群生し、草丈は1m程度 (‎2014‎年‎6‎月‎30‎日 所沢市)

茎の葉腋から、分岐して複数の花柄が伸びる (‎‎2025‎年‎8‎月‎28‎日 所沢市)

葉は、茎に対生し、花柄にはつかない (‎‎‎2024‎年‎6‎月‎27‎日 所沢市)

葉はやや幅が広く、鋸歯が目立つ (‎‎2025‎年‎8‎月‎28‎日 所沢市)

■花
 キクイモモドキの花のようなものは、頭状花序で、多数の舌状花と筒状花からなる。開花前の蕾を正面から見ると、中央には多数の筒状花、その周りに舌状花、それらを総苞が囲んでいる様子が分かる。総苞は浅い鍋形で、総苞片が2~3列に並び、頭花を支えている。一重咲きの花は、舌状花の数が8~15個程度と言われているが、舌状花数が20個を超える花も良く見かける。これを八重咲きというのは大げさな気はする。花期はキクイモより早く、6~10月頃。

開花前の蕾は、中央に多数の筒状花、その周りに舌状花、それらを総苞が囲む (‎2023‎年‎6‎月‎21‎日 東京都薬用植物園)

総苞は浅い鍋形で、総苞片は2~3列に並ぶ (‎‎‎2025‎年‎6‎月‎20‎日 所沢市)

一重咲きの花は、舌状花の数が8~15個程度と言われる (‎2‎014‎年‎7‎月‎1‎日 東京都薬用植物園)

舌状花数が20個を超える花も見かける (‎‎‎‎2024‎年‎6‎月‎27‎日 所沢市)

 次に、頭花の各部分の機能を調べる。他のキク科の花と同様に、キクイモモドキの頭状花序は多くの舌状花と筒状花の集合体だ。頭花の中央部にある鱗状のものが開花前の筒状花で、周辺の花弁を含むものが舌状花だ。舌状花の雌蕊は花弁の基部にある糸状のもので、雄蕊はなく、雌花だ。舌状花は、黄色の大きな花弁が昆虫を集める機能を持つが、果たして舌状花の雌蕊が他の花の花粉を受け入れて果実をつくることはできるのだろうか。この舌状の内側に暗褐色の棒のようなものがあるが、これは筒状花の葯筒であり、この内側に花粉がある。葯筒の下から雌蕊が伸びて、花粉を押し上げる。この過程で両性花の筒状花は、雄性期の役割を終える。その後に雌蕊が活性化し、柱頭が2裂して伸び、花粉を受け入れる雌性期となる。雄性先熟により自家受粉を避けるためだ。時間の経過とともに、筒状花の暗褐色の葯筒の位置は内側に進み、葯筒がなくなる頃には、筒状花部分が山のように盛り上がる。

花弁の基部にある糸状の物が舌状花の雌蕊で、その内側棒状のものが筒状花の葯筒 (‎‎‎‎‎2024‎年‎6‎月‎27‎日 所沢市)

時間の経過とともに、筒状花の暗褐色の葯筒の位置は内側に進む (‎‎‎‎‎2024‎年‎6‎月‎27‎日 所沢市)

葯筒がなくなる頃には、筒状花部分が山のように盛り上がる (‎2025‎年‎6‎月‎20‎日 所沢市)

 キクイモモドキは虫媒花なので、様々な昆虫が集まる。黄色く大きな頭花は誘虫灯であり、広い頭花の上は心地よい足場となっている。蜜を求め、花粉を運ぶミツバチやモンシロチョウ、チャバネセセリ、花を食料とするためかツユムシなども集まり、賑やかだ。

ミツバチ (‎‎2007‎年‎7‎月‎8‎日 所沢市)

モンシロチョウ (‎‎2007‎年‎7‎月‎8‎日 所沢市)

チャバネセセリ (‎‎‎2010‎年‎7‎月‎11‎日 所沢市)

ツユムシ (‎‎‎‎2002‎年‎8‎月‎12‎日 帯広市)

■果実
 花が終わると、果実ができる。果実は痩果で、冠毛は無く、筒状花だった領域に突き刺さるように痩果が残る。キクイモモドキの繁殖方法としては、自生株の場合は種子による実生だが、栽培の場合は 株分けや挿し木も可能だ。

キクイモモドキの果実 (‎‎2025‎年‎8‎月‎28‎日 所沢市)

■近縁種 キクイモ
 キクイモ(菊芋、学名: Helianthus tuberosus)は、キク科ヒマワリ属の多年草。北アメリカの原産で、菊に似た花をつけ、地下に芋(塊茎)が出来る。食料、飼料、アルコールの原料などに利用される。キクイモモドキとは、花は良く似ているが、花期が9~10月でキクイモモドキよりも遅く、上部の葉のつき方が互生だったり、葉の鋸歯の形、草丈(~2m)などから区別が出来る。

キクイモの株 (‎‎‎2001‎年‎9‎月‎15‎日 所沢市)

■キクイモモドキと日本人
 キクイモモドキは、園芸種として渡来した外来種であり、現在は市街地の野原にも逸出し、全国各地で自生化している。繁殖力がそれほど旺盛ではないので特定外来生物の指定に至っていないが、北海道ではレッドリストではなくブルーリストに掲載され、要注意外来生物となっている。しかし、本来の園芸植物としての評価は思いのほか高い。商売上手の園芸店では、キクイモモドキをそのままの名前では販売しない。園芸店では、ヒメヒマワリとか、ヘリオプシスと呼んでいる。ヒメヒマワリは外観上のイメージから名をつけらと思われるが、実は別種のヒマワリ属の小さな向日葵のような花はあるが、それらに伍してもキクイモモドキが最も向日葵らしいからだろう。また、ヘリオプシスは、学名の一部は helios(太陽)と opsis(似ている)の合成語で、格調高い横文字の名前になっている。これなら売れるだろう。今や日本人にとって、キクイモモドキは庭や公園の植栽でも、路傍の自生種でもこだわり無く楽しめる植物になった。