雑草は何処にでも生える - 住宅緩衝地帯の草刈り

 現在居住している住宅は、丘陵地を切り開いて住宅地を造成したため、段々畑のように隣接する住宅地とは高低差がある。このため、宅地周辺の一部は法面になり、コンクリートの壁で囲まれている。このような構造にすると、宅地を強固なものにするため、法面に何本かのパイプを通し排水が出来るようにしてある。法面の下から隣家の壁までの幅は1m程度で、その中央には法面からの排水を通す暗渠水路が埋め込まれており、その両脇に僅かにのぞく地表面には小石を敷き詰めている。しかも、両側を壁で囲まれたこの緩衝地帯は陽当りが悪いので、それほど雑草は繁殖しないだろう…と思うのは大間違い。毎年、盛大に雑草が茂り、夏には成長した雑草の草刈り、冬には枯れた雑草の除去が必須となり、年2回のビッグイベントになっている。今回は、夏の草刈りをした。

 草刈りの対象となる緩衝地帯は、長さが10m、幅が1m程度の細長い地形。長手方向の両側は法面と壁が立ち、短手方法の両端には高さ1m程の鉄枠付き金網があり、区画の境界表示と不審者侵入防止の役割を果たしている。緩衝地帯を上から見ると、地表が見えないくらい様々な雑草が占有している。今回は、折角の機会なので、どのような植物が生えてきたのか調べてみた。

草刈り前の緩衝地帯の様子

 下図が主な雑草の繁殖状況だ。既に花期が終わったもの、盛りのもの、これからのものと多種多様。何処かで見たことのあるものが多いが、珍しいものもあった。一体、どのような経緯でこの場所に住みついたのだろうか。

緩衝地帯の主な雑草分布

#1:ヨウシュヤマゴボウ
 既に花が咲き、緑色の果実をつけた2本のヨウシュヤマゴボウが立っていた。草丈は2mを超え、緩衝地帯を塞ぐように枝を伸ばしていた。茎を引き抜こうとしたが、根元から折れてしまった。株が残ってしまったので、来年も出てきそう。

ヨウシュヤマゴボウ

#2:ヤブソテツ(薮蘇鉄、オシダ科ヤブソテツ属)
 ヨウシュヤマゴボウの下に生えていた。まだ若い個体なので判然としないが、ヤブソテツの仲間だと思う。日陰で湿った環境が適していたのかもしれない。

ヤブソテツの仲間か

#3:クワクサ(桑草、クワ科クワクサ属)
 これもヨウシュヤマゴボウの下に生えていた。花や果実があると、クワクサの判別は容易だが、若い株の葉からの判断なので心もとない。クワクサは所沢近辺ではよく見かける植物だが、内部の圧力により果実を弾き飛ばす性質があるので、何故ここに根付いたかは不明だ。

クワクサか

#4:オニドコロ(鬼野老、ヤマノイモ科ヤマノイモ属)
 蔓性で葉の形から判断。かつて法面の上のフェンスまで伸び、花を咲かせたことがある。地下茎が生きており、また成長を始めたのだろうか。

オニドコロ

#5:ナガイモ(長芋、ヤマノイモ科ヤマノイモ属)
 これも、蔓性であり葉の形から判断。何故、この地に生えたのか、地中の種芋によるものか、それともむかごが運ばれてきたためだろうか。この硬い土地では、芋が大きくなるとは思えず、むかごを残すだけで精一杯だろうか。

ナガイモ

#6:アズマネザサ(東根笹、イネ科メダケ属)
 アズマネザサは荒れ地などでよく見かける笹の一種。放置すると地中に張り巡らせた根茎を介して、生育領域が拡大する。引き抜こうとしてもびくともせず、仕方なくハサミで根元の茎を切るしかないが根は残る。また、来年も間違いなく現れるだろう。

アズマネザサ

#7:ヤマノイモ(山の芋、ヤマノイモ科ヤマノイモ属)
 葉は対生で長いハート形をし、蔓性でもあるので、ヤマノイモだろう。これは、地中にできる芋をすり潰してとろろにして食用にするあのジネンジョ(自然薯)のことだ。しかし、この小石混じりの硬い土地では、とてもそこまでには生育できないだろう。何故、ここに生えたのだろうか、むかごによるものだろうか。

ヤマノイモ

#8:ナンテン(南天、メギ科ナンテン属)
 これは、赤い実のなるナンテンの若い株で、葉の奇数羽状複葉が特徴。当地では、あちこちに自生している。鳥によって果実が拡散されたのだろう。

ナンテン

#9:マグワ(真桑、クワ科クワ属)
 かつて当地には養蚕農家があり、畑でマグワを栽培していた。現在では殆どが野菜畑になっているが、野原にはマグワが結構残っている。果実を食べた鳥が、この土地に種子を運んだのだろう。マグワの成長は早く、既に2m程度になっていた。

マグワ

#10:ヒカゲイノコヅチ(日陰猪子槌、ヒユ科イノコヅチ属)
 若い株の葉のつき方や形状から、イノコヅチの仲間のように見える。その中でも日陰を好むヒカゲイノコヅチではないだろうか。花や果実が観測できできれば、確信が持てるのだが。もし、秋まで生きていれば、果実は引っ付き虫となって、動物の体に付着して拡散される筈。

ヒカゲイノコヅチ

#11:オキザリス・トリアングラリス(三角片喰、カタバミ科カタバミ属)
 大きなカタバミの園芸種。品種によって葉や花の色のバリエーションは多数あるが、春の開花時には花は白、葉は緑だったので"緑の舞"と言う品種のようだ。近所の庭から逃げ出したのだろう。既に葉は枯れ始めたので茎を抜いていると、茶色い楕円体の塊のような球根が現れた。とても取り切れる量ではなかったので、ある程度残し、来春の楽しみにした。

オキザリス・トリアングラリス

#12:アカメガシワ(赤芽柏、トウダイグサ科アカメガシワ属)
 葉の形や、新芽や葉柄が赤みがかっているので、アカメガシワだろう。典型的なパイオニア植物で、成長が早く、強力な繁殖力を持つ。果実は大量に稔るが、鳥によって運ばれたのだろうか。

アカメガシワ

#13:マユミ(真弓、檀、ニシキギ科ニシキギ属)
 マユミの若葉は、楕円形で先が尖り、葉の縁には細かな鋸歯がある。しかし、似たものが多く、判断が難しい。ところが、約10m離れたところに庭木としてマユミが植栽されているので、これを観察するとマユミだと確信できた。マユミの果実を目当てに鳥たちが集まるので、こぼれた種子がこの地に落ちたのだろう。

マユミ

#14:ヘクソカズラ(屁糞葛、アカネ科ヘクソカズラ属)
 花が咲けば一目で分かるヘクソカズラだが、若葉の時期は、長いハート型の葉が対生し、蔓性の茎が他の植物やフェンスに絡みつく光景で判別がつく。ヘクソカズラの駆除は、地下の根ごと引き抜くことだが、手応えがイマイチで、根が残っているような感覚だ。多分、来年も再会するだろう。

ヘクソカズラ

 この他にも、盛りを過ぎて枯れ始めた普通のカタバミや、ハハコグサ、チチコグサなどの残滓もあった。何か珍しい植物は生えていないかとの目論見は見事に外れ、狭い領域に繁殖力の旺盛な植物たちが自らの存在を主張しており、すっかり排他的な世界を構成しているようだ。一口に草刈りと言っても、根こそぎ抜けた植物は少ない。蔓性植物を引っ張ると途中で切れて根が残り、笹は引いてもびくともしないので根元に近い茎を切っただけだ。折角、きれいになった緩衝地帯を眺めても、来年の夏には既視感のある景色が広がっていることが容易に想像できる。

草刈り後の緩衝地帯

 2時間に及ぶ草刈りの後、葉や枝をビニール袋にまとめていたら、小さなカマキリの幼虫が袋から飛び出した。雑草まみれのこの緩衝地帯は、昆虫にとっては居心地の良いマイホームだったのかもしれない。世に雑草地帯は尽きること無く存在するので、新居での新たな生活を始めてほしい。

緩衝地帯の住人だったカマキリの幼虫