ハルジオン - 華奢なイメージの双子草
ハルジオン(春紫菀)は、キク科ムカシヨモギ属の多年草。北アメリカの原産で、大正時代に園芸植物"ピンク・フリーベイン"の名で渡来したが、繁殖力が強いので庭園から逃げ出し、今では全国各地の陽当りの良い市街地や農地、荒れ地などで野生化している。農作物や牧草の生育を妨害するので、厄介な雑草と認知されてしまい、日本の侵略的外来種ワースト100にも選定されている。しかし、ハルジオンの葉、茎、若芽、蕾などは柔らかく、大半が可食部位となり、春菊のようなほろ苦さと風味があると言われている。ハルジオンは名の通り春の雑草だが、年中同じような花が咲いているような気がする。実は、夏から秋に咲くそっくりな花は、素性も姿も瓜二つのヒメジョオンであり、一卵性双生児のような関係だ。このことが双子の植物の物語に、混乱と奥行きをもたらしているようだ。新参者で見目麗しい雑草は、日本中どこでも鑑賞できるためか、J-POPの世界では、しばしばフィーチャーされる。ユーミンの"ハルジョオン・ヒメジョオン"では変わらない風景の象徴として、さだまさしの"春女苑"では強い雑草に励まされるメッセージとして登場する。ハルジオンの存在感は、すっかり定着したようだ。

【基本情報】
・名称:ハルジオン(春紫菀)
・別名:ハルジョオン、ビンボウグサ
・学名:Erigeron philadelphicus
・分類:キク科 ムカシヨモギ属の多年草
・原産地:北アメリカ
・分布:東アジアに外来種として移入され、日本では全国各地で野生化
・花言葉:追想の愛、清純
■生態
ハルジオン多年生の草本で、繁殖は風によって運ばれた種子が発芽する場合と、地下茎による栄養繁殖の場合もあり、繁殖力は強力だ。夏の花期が終わると、秋にはロゼット状の葉を地上に残して、冬を迎えるものがある一方、春に新たに根生葉を地上に出し、成長を始めるものもある。根生葉を残したまま茎は上方に直立し、茎の先の方で幾つかに枝分かれする。葉は、形はヘラ形で葉柄は無く、茎を取り囲むようにつく。茎や葉には薄い毛が目立つ。





■花
茎が上に伸び、その先端が分岐すると、複数の蕾が茎を軸にして下向きに総状的につくのが特徴だ。蕾は上の方から順に開くと頭花は上を向くようになる。ハルジオンの頭花は、周辺部の多数の舌状花と中心部の複数の筒状花で構成される集合花だ。蕾が開く直前には、外側にある舌状花の花冠が淡紅色になる。しかし、蕾が開くと、この舌状花の花冠は白味を帯びるのが普通だが、株によっては淡紅色が混じる場合もある。






春にふんだんに咲くハルジオンの花には多くの昆虫が集まる。花の蜜を求めた蝶や蜂などが、花粉を食べにハナムグリやバッタの幼虫が、花に隠れて狩をするクモなどが訪れ、大変賑やかだ。




■果実
花期が終わり、舌状花も筒状花も花冠が枯れると、それぞれの花の中で果実の成長が本格化する。果実は白い冠毛のついた倒披針形の痩果であり、これが種子にあたる。痩果のついた綿毛が飛んでいった後は、茎の先には露出した花托(花床)が残る。



■近縁種ヒメジョオンについて
ハルジオンとヒメジョオンは、ともにキク科ムカシヨモギ属の植物だが、別の種類なので良く見ると物理的な相違は明確に存在する。しかし、やはり姿はそっくりで、ハルジオンはやや小さくて華奢、ヒメジョオンはやや大きく普通で飾らない雰囲気があるが、文学的に表記する際に韻を踏んだりすると、ハルジオンがハルジョオンに、ヒメジョオンがヒメジオンになったりもする。その程度の表現のぶれは承知のうえで2つの植物は存在しているが、ここでは、両者の名誉のために形状的な相違を示しておく。


■ハルジオンと日本人
雑草としてのハルジオンの別名は貧乏草で、折ったり、摘んだりすると貧乏になってしまうと言うネガティブな伝承がある。しかし、最近の研究では、ハルジオンに抗菌作用があり、微生物の生育を阻害効果があって、今後の人間社会への活用可能性を示唆するポジティブな成果が公表されている。東京都立多摩科学技術高等学校の研究グループが日本農芸化学会に発表した"ハルジオンの抗菌作用病原体に対する防御と活用技術への可能性"である(詳細はここをクリック)。雑草の生命力を調べるためタンポポとハルジオン,万年草の根を無菌培養したところ、ハルジオンだけがカビが生えてない現象が確認できた。このため、ハルジオンには抗菌作用があると考え、大腸菌や黒麹菌、納豆菌を用いて抗菌効果を調べたところ各微生物の生育を阻害していることが実験的にわかった。そのメカニズムを探求したところ、ハルジオンには脂質二重層を壊す働きがあり、それにはクロロゲン酸が関わっているのではないかと推定している。
これは実践的な手法で得られた確かな成果と思われるので、今後の研究開発のみならず、製薬や食品業界などへの展開が期待できると思う。


