ツルウメモドキ - 晩秋から冬の華やかさ
ツルウメモドキ(蔓梅擬)は、ニシキギ科ツルウメモドキ属の落葉蔓性木本。ツルウメモドキは葉の形が似ていると言う理由で、ウメ(梅、バラ科)やウメモドキ(梅擬、モチノキ科)と何か関係の有りそうな名前になっているが、全く別種の植物で誤解されそう。在来種で、日本各地の山野の日当たりのよい林などに自生し、都市部では庭木としても植栽される。秋になると球形の果実が黄色くなり、やがて完熟して3つに裂けると、中から橙赤色の種子が現れる。これが枝に鈴なりに実る様は見応えがあり、生け花やリースなど、花材として人気が高い。種子は落葉後の冬にも残り、野鳥にとっては厳しい時期の格好の餌となり、拡散される。秋の果実だけが注目されているツルウメモドキの実態はどのようなものだろうか。
【基本情報】
・名称:ツルウメモドキ(蔓梅擬)
・別名:ツルモドキ(蔓擬)、南蛇藤(中国名)
・学名:Celastrus orbiculatus
・分類:ニシキギ科 ツルウメモドキ属の落葉蔓性木本
・原産地:日本の他、中国、サハリン
・分布:日本では、北海道・本州・四国・九州・沖縄
・花言葉:大器晩成、開運、真実
■形態と花
ツルウメモドキは、始めは真っ直ぐに伸びて木の高さが1m程度までなら自立する。それ以上伸びると、絡まるものがあると右巻きに蔓を巻き付きながら伸び、長さが数mにも及ぶ。葉は楕円形で、枝に互生する。縁に浅いギザギザがあり、先端は尖り、ウメやウメモドキの葉に似る。株は雌雄異株。葉の脇から短い集散花序を伸ばして、雄株では数個、雌株では1〜3個の花をつける。花は黄緑色の小さく地味な5弁花だが、雄花は5個の雄蕊が目立ち、雌花は中心の雌蕊1個に3裂した柱頭がつき、退化した5本の雄蕊がつく。
■果実の変化
夏になると黄緑色の果実ができる。果実は蒴果で、先端に花柱が残る。秋になると黄色くなり、やがて3つに裂け、鮮やかな橙赤色の仮種皮に被われた種子が現れる。観賞価値があるのはこのときの景色で、ツルウメモドキの心象風景になっている。冬になっても果実は残り、餌の少ない時期に野鳥の食料となり、種子が拡散される。
■ツルウメモドキと日本人
ツルウメモドキ蔓性植物であり、他の植物からすると、巻き付かれたら大変迷惑だ。また、人とのかかわりあいの観点からは、薬効や食料など、直接的に役に立つ植物ではない。それでは、ツルウメモドキの存在価値は何か?生活史としては、春から夏は、小さく目立たない咲かせ、黄緑色の果実をつくり、ひたすら雌伏の時期。そして漸く、晩秋から冬の橙赤色の仮種皮に包まれた種子が梢を飾り、華のある時期を迎える。ここに至って、日本人は初めてツルウメモドキの存在に気が付き、花材として生け花やリースにして、その美しさを愛でる。日本の在来種であり、しかも全国的に分布する植物なので、随分昔からこの認識は変わらないのだろう。晩秋から冬の時期を飾る華やかさとともに、赤い果実中心の質素な構成の中に、奥深さや豊かさを感じさせる日本人好みの植物だ。