ハナミズキ - 日米の架け橋

 ハナミズキ(花水木)は、ミズキ科ミズキ属ヤマボウシ亜属の落葉高木。別名はアメリカヤマボウシで、北米原産。1912年に、当時の東京市長尾崎行雄が米国ワシントンD.C.に贈ったサクラの返礼として、1915年に渡来。米国では、日本のサクラのように季節を知らせる花である。 アパラチア山脈の南部のジョージア州では初春に、北部のメイン州では春の終わりに開花し移動する模様は、”ハナミズキ前線”が日本の桜前線のように報道されることもある。しかし、不幸なことに日米関係の悪化により贈呈されたハナミズキが行方不明になるなど辛酸をなめた時代もあったが、現在では庭木や公園木として人気があり、日本各地で植栽されている。日本の在来種ヤマボウシに似ているが、春に咲くカラフルな花、秋の赤く艶のある集合果、そして深紅の紅葉など四季を通して楽しませてくれる。所沢市の小手指駅北側にはハナミズキの街路樹があり、春には地元の団体が小手指ハナミズキまつりを開催している。新興住宅地に良く似合う樹木でもある。

ハナミズキの花 (2014年4月24日 所沢市)

【基本情報】
 ・名称:ハナミズキ(花水木)
 ・別名:アメリカヤマボウシ
 ・学名:Cornus florida
 ・分類:ミズキ科 ミズキ属 ヤマボウシ亜属の落葉高木
 ・原産地:北米
 ・分布:日本では、北海道、本州、四国、九州で植栽
 ・花言葉:返礼、永続性、華やかな恋、私の思いを受けてください

■形態
 樹高は10m程度まで、樹形は、1本の幹を中心に枝は横に広がって、全体がほぼ丸い形になる。葉は茎に対生し、卵形や楕円形。花は枝先に1個つく。果実は枝の先に数個ずつ集まってつく。

樹形 (2007年4月29日 神代植物公園)

満開と花と枝 (2014年4月24日 所沢市)

上から花を見る (2008年4月19日 所沢市)

葉の様子 (2002年7月6日 所沢市)

果実のなる枝 (2020年11月22日 所沢市)

■花
 初冬に枝先につく冬芽は、短い白色に毛に覆われていて、伝統建築物や橋の高欄にある擬宝珠のような形をしていて、これが成長して花になる。成長の過程で、冬芽が膨らみ何かを包むように球形になり、やがて花のようなものが現れる。ハナミズキの場合は、大きな花弁に見えるのは総苞で、その中心にあるのが複数の花が集まった花序だ。

花の冬芽 (2001年12月2日 多摩湖)

膨らみ始めた総苞 (2014年4月19日 所沢市)

同上 (2008年4月19日 所沢市)

同上 (2008年4月19日 所沢市)

総苞が開く (2023年3月29日 所沢市)

 花の色、いや総苞の色は、赤、ピンク、白が多く、形は卵形で先端部にへこみがあり、その部分の色が白味を帯び強調されるので、総苞の形はシャープに見える。4枚の総苞片の中央部には、黄緑色の小さな花が20個程度集まって球形の頭状花序を構成する。1つの花は、花弁は4個で先がそり返り、雄蕊は4個で、雌蕊が中央に1本。

赤い総苞 (2010年4月25日 所沢市)

ピンクの総苞 (2021年4月15日 所沢市)

白い総苞 (2011年4月24日 所沢市)

裏から総苞を見る (2012年4月28日 所沢市)

中央部に頭状花序が20個程度 (2014年4月24日 所沢市)

花は花弁が4枚、雄蕊は4本、雌蕊は1本 (2014年4月24日 所沢市)

■果実
 果実は核果で、楕円形や卵球形をしており、枝の先に数個ずつ集まってつく。核果の内部には種子が2粒含まれる。 秋になると艶のある赤色に熟して、落葉後も枝先に残る。また、同時に来年の花期に備え、冬芽も成長する。

果実は核果で枝先に数個つく (2003年10月26日 所沢市)

同上 (2005年11月19日 所沢市)

冬が近づくと冬芽ができる (2005年11月19日 所沢市)

■紅葉
 秋の紅葉は陽の当たる部分は濃い赤色になり、葉陰の部分は緑色が残り、美しいグラデーションが見られる。他の樹木より紅葉する時期が早いので余計に目立つ。

紅葉と果実 (2003年11月8日 所沢市)

同上 (2023年10月26日 所沢市)

反射光で見る紅葉 (2001年12月2日 多摩湖)

透視光で見る紅葉 (2005年10月23日 所沢市)

同上 (2011年11月12日 所沢市)

■ハナミズキと日本人
 ハナミズキはアメリカ人にとっては春を告げる樹木であり、日本人がサクラに抱く感性と同じなのだろう。日米友好の架け橋として日本にやって来たハナミズキは、終戦まで続いた敵対関係のため、贈呈された40本の苗木は敵性樹木として切られたり廃棄されたりして、現在残っているのは都立園芸高校にある1本だけとのこと。平和な時代になって漸く、ハナミズキの庭木や街路樹に適した特性や四季それぞれの美しさが普通に認識され、再び日本人もアメリカ人もハナミズキに対して同じ感性を共有するようになったのではないか。一青窈の名曲"ハナミズキ"はアメリカ同時多発テロ事件を機会に作られ、"君と好きな人が百年続きますように"との歌は、何かあっても立ち直り、良い関係が永く続くよう祈っている。日本人がこのハナミズキを知って未だ100年余りだが、平和の大切さと日米の歴史を感じさせてくれる特別な存在だ。