新交響楽団第265回定演 - ライブならではのバンダ

 歴史あるアマチュアオーケストラ新交響楽団の第265回定期演奏会を聴きに出かけた。会場は池袋の東京芸術劇場。池袋と言えば、埼玉県人の東京におけるたまり場と思っていたが、昼食に入った日本の中華料理チェーン店では中国語が飛び交い、駅前の広場では南アジア系の人達の集会があったりして、結構インターナショナルな雰囲気。今回のプログラムは、フランス在住の矢崎彦太郎氏の指揮で近代フランス、イタリアの3作品。

 最初はデュカスの交響曲ハ長調。全3楽章で急-緩-急構成。幾つもの短い旋律が次から次へと現れる。ただ、フランクやショーソンの交響曲のような循環形式ではないのでやや地味な印象を与えるが、内容は構成的でありながら調和感や色彩感のバランスに優れている。実演でもよく表現されていたと思う。

 2曲目はラヴェルの高雅で感傷的なワルツ。短い8曲から構成されているので、CDではまとめて1トラックにしているものもある。ところがプログラムの解説で、それぞれの曲のバレエ劇における人間ドラマが掲載されていて、びっくり。プログラムの解説は楽団員が担当して書いているが、背景や、楽曲解説、歴史的意義、楽器編成など多岐にわたり記述され、相当レベルが高い。この解説を読んだ後に演奏を聴くと、やや抽象的なものと思っていたお馴染みの曲が、生々しいもののように思えた。

 最後は、レスピーギの交響詩"ローマの松"。具象的な松を描くのではなく、松を媒介として古代ローマ往時の幻影に迫ろうという意図がある。そのためこの曲には、グレゴリオ聖歌や古い教会旋法など様々な要素が含まれ、飽きさせない。演奏方法も凝っており、オーケストラ本体とは別にバンダ(別働隊)が活躍する。客席の後方と、中程左右の3か所からは金管楽器が、オーケストラの背後からはオルガンが鳴り響く。これが始まると聴衆は頭を左右に振り、バンダを見つけ驚く。確か、幻想交響曲でもバンダは登場したことがあるが、これほどの規模ではなかった。華やかな曲のせいもあり大いに盛り上がった。ライブならではのバンダの独特の存在感は捨てがたい。

 新交響楽団はアマチュアオーケストラで70年近い歴史があり、かつて芥川也寸志氏が指揮者をしていたこともある。他のオーケストラと異なり、有名な名曲よりも、新しい曲や変わった曲を演奏する傾向がある。当方は以前の職場の先輩が新交響楽団のメンバーだったのが縁で演奏会に通うようになった。3ヶ月毎の定期演奏会ではそう滅多には聴けない曲が演奏されるのではないかと、いつも期待している。

東京芸術劇場正面

東京芸術劇場の吹き抜けロビー
演奏後のカーテンコール