シロヤマブキ – 何かと4原則

 シロヤマブキ(白山吹)はバラ科シロヤマブキ属の落葉低木。日本では本州西部の石灰岩地だけに自生するが、庭木として各地で植栽されている。シロヤマブキも春に花が咲く植物の一つだが、葉や花、果実にそれぞれ特徴がある。葉脈がくっきりした卵型の葉、白くしなやかな4弁の花、熟すにつれ緑、茶、黒へ変化する果実など、四季を通して見どころが多い。同じ時期に黄色い花を咲かせるヤマブキと名は似ているが、別種(ヤマブキ属)で相違点も多く、誤解を与え易い。シロヤマブキの実態に迫ってみよう。

シロヤマブキの群生 (2024年4月12日 所沢市)

【基本情報】
 ・名称:シロヤマブキ(白山吹)
 ・別名:雞麻(中国名)
 ・学名:Rhodotypos scandens
 ・分類:バラ科 シロヤマブキ属の落葉低木
 ・原産地:日本、中国
 ・分布:日本では本州西部の石灰岩地だけに自生、観賞用に全国の植物園や庭などに植栽。
 ・花言葉:細心の注意、気品、崇高

■形態
 一つの根株から数本の幹が生じ、分かれた枝は垂れること無く上に伸びる。枝の先に花が1個つく。葉には短い葉柄があり、葉は茎に対生する。また、葉の形は卵形で先が尖り、基部は円形、外周の縁には鋭い切り込みがあり、葉脈のしわが目立つ。

分かれた枝は上に伸び、その先に花がつく (2024年4月12日 所沢市)

■花
 花弁はバラ科では珍しい4枚で白色、形は多少いびつな円形で、花弁の下に楕円形の萼片が4枚ある。雄蕊は多数あり、雌蕊の花柱は4本。

蕾の様子、萼は4枚 (2024年4月12日 所沢市)

花弁は4枚、雌蕊の花柱は4本、雄蕊は多数 (2023年3月29日 所沢市)

同上 (2010年4月25日 所沢市)

同上 (2012年4月28日 所沢市)

同上 (2015年4月16日 所沢市)

■果実
 果実は痩果で、1つの花に実を4個ずつつける。花が終わり初夏になると艶のある緑色の果実ができ、次第に色が赤みがかり、熟すと黒くなる。秋になって葉が黄葉し、冬になると葉が落ち、黒い果実だけが枝に残る。果実は翌春まで枝先に残る場合がある。鳥の好みではないようだ。

若い果実 (2015年6月5日 所沢市)

赤みがかった果実 (2020年6月27日 所沢市)

熟して黒くなった果実と黄色くなり始めた葉 (2021年7月24日 所沢市)

冬になると果実表面の艶がなくなる (2011年1月1日 所沢市)

冬の姿 (2002年12月15日 所沢市)

■シロヤマブキとヤマブキ
 ここで似たもの同士と思われているシロヤマブキとヤマブキの相違に言及する。シロヤマブキの花の色は白、分類はシロヤマブキ属、花弁は4枚、萼片数も4枚、葉のつき方は対生。一方、ヤマブキ花の色は黃、分類はヤマブキ属、花弁は5枚、萼片数も5枚、葉のつき方は互生。ヤマブキはバラ科の主流である5を基本とした構成になっている。シロヤマブキは、4を基本としていてバラ科では異端だ。雰囲気は似ていても、何か根本的に異なる存在のように思う。なお、シロイロヤマブキ(白花山吹)と言うヤマブキの園芸種があるが、これは花が白いだけのヤマブキなので、シロヤマブキとは明確に区別できる。

■シロヤマブキと日本人
 少しいびつな花の形、色を変えながらもシーズンを越す果実、バラ科にしては珍しい4を基本とした構成、これらを特徴とするシロヤマブキは変わり者で、王道を歩む植物ではない。だが、季節の変わり目でユニークな花や果実、枯れた冬の姿をを見ると、しみじみと琴線に触れるものがあり、応援したくなる。日本人は判官贔屓が好きだ。