ミツバアケビ - 微妙な違い

 ミツバアケビ(三葉木通、三葉通草)は、アケビ科アケビ属の蔓性落葉低木。同属のアケビと同様に春に紫色の花を咲かせ、秋には甘い果実を実らせる。アケビとの相違点は、よりも寒さに強く北海道を含む全国各地の山野で自生し、荒れ地や乾燥地でも旺盛に繁殖できるので、アケビに比べて育成地域が広い。また、形態的には、葉は掌状で小葉が3枚になる3出複葉であること、果実がアケビよりも大きくなることから果樹としても栽培されることなど。しかし、花の形は良く似ていて、花の色はアケビの紫より多少濃い目。両者は似て非なるものと言うよりは、大同小異。一体どこが違うのだろう。

ミツバアケビの花 (2004年4月3日 所沢市)

【基本情報】
 ・名称:ミツバアケビ(三葉木通、三葉通草)
 ・別名:キノメ(木の芽)、コノメ
 ・学名:Akebia trifoliata
 ・分類:アケビ科アケビ属の蔓性落葉低木
 ・原産地:日本、中国、台湾
 ・分布:日本では、北海道、本州、四国、九州の山地
 ・花言葉:才能、唯一の恋 (アケビと同じ)

■形態
 蔓性の落葉の低木。蔓は右巻きで他の物に巻き付きながら高い場所まで登りつめる。蔓はアケビよりもしなやかで、籠などの細工物を作るのに使われる。 アケビの葉は5枚の小葉からなるが、本種の小葉は3枚であるためミツバアケビと呼ばれる。小葉が3枚集まった3出複葉は長い葉柄をつけて茎(蔓)に互生する。小葉はいびつな卵形で、葉縁には波状の鋸歯ある。普通は落葉性であるが、葉は越冬する場合がある。

ミツバアケビの葉 (2023年6月21日 東京都薬用植物園)

■花
 4月頃、開花と同時に若葉が出る。花は雌雄同株で、雌雄異花。アケビよりも花の色は濃い紫色。新葉のわきから総状花序を出して下に垂れ下がり、花序の基部に大型の雌花を1~3個、先のほうに十数個の小型の雄花をつける。

開花と同時に葉も伸びる (2005年4月3日 所沢市)

同上 (2005年4月3日 所沢市)

ミツバアケビの雌花と雄花からなる花序 (2002年3月24日 所沢市)

同上 (2010年4月3日 所沢市)

同上 (2005年4月10日 所沢市)

 雌花の花柄は長く、その先にアケビよりも濃い紫色の3枚の萼片(花被)がつき、雌花の中央部には3~6本程度(アケビは3~9本)の雌蕊が放射状につき、花弁は無い。雌花の柱頭には、甘みを持った粘着性の液体が付いており、花粉がここに付着して受粉が成立する。

雌花の3枚の萼片と雌蕊 (2012年4月15日 所沢市)

雌蕊の柱頭には粘液性の液体がある(2006年4月16日 所沢市)

 雄花については、ミツバアケビもアケビも構成は同じだが、花の色はミツバアケビの方が濃い。中央部に6本の雄蕊がミカンの房のように集まり、その外側に萼片が3枚ある。雌花と同様に花弁はない。

雄花の花序 (2012年4月15日 所沢市)

雄花の雄蕊と萼片 (2020年4月11日 所沢市)

■果実
 アケビと同様に、雌雄同株だが自家受粉しないため、果実を得るには2株以上植栽する必要がある。商業的観点からは、ミツバアケビの果肉はアケビより風味があり、果皮も色鮮やかであり、しかも果実は簡単に開かないので、農産物としてはより取り扱いやすいようだ。

成長する果実 (2013年9月15日 所沢市)

熟して紫色になった果実 (2012年10月27日 所沢市)

■ミツバアケビと日本人
 同属のアケビとの比較では、寒冷地や荒れた土地にも強く生育領域が広いこと、果実を農産物として見ると風味や流通性に優れ、料理に関しても新芽と若葉を「木の芽」と称してゴマ和えにするにはアケビよりもミツバアケビが美味らしい…と人間は勝手に思っている。だからどちらが良いというわけではないが、類似した植物が淘汰もされず生き延びているのは、自然の摂理に基づいたそれなりの合理性があるのだろう。現代に生きる凡人は、重箱の隅をつつくような僅かな相違を探して楽しんでいるだけなのだ。