タガメ - 過激な水田の王

 タガメ(田亀)は、カメムシ目コオイムシ科に属し、日本最大の水中昆虫。体長6cmにも及び、強力な鎌のような前脚が特徴。水田や池沼に棲み、肉食性でカエルやドジョウ、メダカなどの脊椎動物や水生昆虫を大きな前脚で捕食。水田の中では絶対的な支配者だが、鳥類や外来魚が天敵。初夏に卵を産み、オスが卵塊を守る。ところが、メスはオスが保護している卵塊を壊して食べ、そこに自らの卵塊を産みつけて、オスに保護させるという卵壊しが起きる。これは、オスが抱卵中は動けないので、子孫を残そうとするメスが子守役のオスを確保するためのようだ。なかなか厳しい世界だ。タガメは日本各地に分布していたが、水田の残留性農薬、水田耕作の放棄、外来種天敵の侵入などにより、個体数が激減しレッドデータブックの絶滅危惧種に登録されている。

 タガメはその大きや形態、ゆったりとした動作などで人気がある昆虫だが、その反面、狩りや卵壊しなど過激な面もある。だが、印象に残るのは比較的大きな魚にも襲いかかる捕食シーンだ。体液を吸い取られた餌の魚には気の毒だが、自然の中で命を繋げる厳しさが突きつけられるようだ。【2020年制作】