トサミズキ - 今や全国区の早春花
トサミズキ(土佐水木)は、マンサク科トサミズキ属の低木落葉樹で、自生種は高知県の蛇紋岩質地域の一部のみに分布する準絶滅危惧種。しかし、今や日本各地の民家や庭園、公園などで植栽され、小さな黄色の花が房状に集まって咲く風景は早春の風物詩になっている。マンサク科であるのにもかかわらず名に"ミズキ"が入るのは何故か、枝を切ると水気の多い樹液が流れ出すとか、あるいは葉がミズキの葉に似るとか…など、諸説あり。世間で話題になった証拠なのだろう。数多い早春の黄色い花の一つであるトサミズキとはどの様な花なのだろうか?

【基本情報】
・名称:トサミズキ(土佐水木)
・別名:シロムラ(蝋弁花)、ミズキ(美豆木)
・学名:Corylopsis spicata
・分類:マンサク科 トサミズキ属の低木落葉広葉樹
・原産地:日本の高知県(土佐)
・用途:庭木、公園樹、生け花、盆栽
・花言葉:優雅、清楚、伝言
■花
枝先の花芽から蕾が現れた後、花は茎に接して7~10輪集まって穂状花序をつくる。一つの花は、萼弁5枚、花片5枚、雌蕊2本、雄蕊5本で構成。開花直後の雄蕊の葯は赤だが、次第に茶色に変化する。花が成長すると、花序のつけ根にあった花芽を保護するために生じた苞葉は消える。トサミズキの花期は3~4月だが、この間にハチやアブなど昆虫によって、花粉が運ばれる。










■葉
花の盛りが過ぎると、花のつけ根から若葉が出てくる。葉はほぼ楕円形で、つけ根がハート形で、葉脈に沿って凹凸があり、周辺は鋸歯状で、かなり個性的だ。下から枝を見ると、葉は互生しているのが良くわかる。




■果実
花の後にできる果実は半円球を2つ併せたような円形で、2本の雌蕊の花柱から引き継いだ2つの角がある。秋になると熟して褐色になり、やがて2つに裂け、種子が出てくる。この果実の残骸は春の花期まで残っている。





■花芽
夏から秋にかけて果実が成長するのと併行して、来春の開花に向けて花芽も成長する。トサミズキは秋になると黄葉するが、その頃に葉と枝の脇に花芽が現れる。そのうち葉は縁や葉脈にそって黒っぽくなって枯れ始め、冬には落葉する。すると花芽だけが残り、やがて春になると枝いっぱいに黄色い花を咲かせる。


■トサミズキと日本人
トサミズキの出自は土佐だが、江戸時代後期に庭木として知られ、全国に拡散していった。花の形は随分異なるが、マンサク科の中でも、マンサクは比較的高木で山野に、トサミズキは低木で民家付近に植えられ、ともに早春の黄色い花だ。しかし、民家付近の早春の黄色い花と言えば、数え切れないほどライバルが多い。次のような様な句もある。
土佐水木(トサミズキ)山茱萸(サンシュユ)も咲きて 黄を競う 【水原秋桜子】
また、伝統的な生け花の世界では、トサミズキを単に"ミズキ"と呼んで親しまれ、重要な花材になっている。トサミズキを薬用とか食料とかに使った実用的な例はなく、生活感は皆無。早春のユニークな形の黄色い花として、ひたすら観賞用として全国区の植物となっている。


