ノボロギク - 365日営業

 早春の散歩道を徘徊していると、地面から次から次へと新たな植物が湧き出してくる。その中に、春菊のような葉と、先が黄色い細長い花をつけている植物がある。ノボロギクというものらしい。また、少し離れた場所にも草丈が40cm位に伸びたノボロギクがあったが、ここにはタンポポの綿毛のような冠毛の付いた果実まである。未だ早春なのに、一体いつから成長を始めたのだろう。

 ノボロギク(野襤褸菊)は、キク科キオン属の越年生、または一年生の広葉雑草。開花時期は通常5~8月と言われているが、生育温度は7~ 35℃で、最適温度は25℃なので、積雪地以外では、一年中発生する。別名の"年中草"の由来だ。

 ところでこの悲惨な名前ノボロギクはどうして? 日本固有種のキク科サワギク属ボロギク(別名サワギク)は黄色い典型的な菊形の花を持つが、花後の果実の冠毛がぼろ(襤褸)のように見えるため命名された。ノボロギクはキク科キオン属で欧州原産であり細長い筒状花を持つが、果実はボロギク同様に襤褸であるため。同様にダンドボロギクはキク科タケダグサ属で北アメリカ原産、ベニバナボロギクはキク科ベニバナボロギク属でアフリカ原産で、これらは種類は異なるが果実の形が似ているだけで日本の固有種に似た名前で呼ばれ、ボロギク・ファミリーの一員になったしまったのは、そこはかとなく外来種の悲哀を感じる。

【基本情報】
 ・名称:ノボロギク(野襤褸菊)
 ・別名:ネンジュソウ(年中草)、オキュウクサ(お灸草)、タイショウクサ(大正草)、等
 ・学名:Senecio vulgaris
 ・分類:キク科 サワギク連 キオン属の越年生、または一年生の広葉雑草
 ・原産地:欧州、世界の分布は寒冷地から亜熱帯まで広く
 ・国内分布:明治初期にヨーロッパから入り、北海道から沖縄まで全国に分布
 ・生育場所:市街地、家の周り、道ばた、空地、畑や田の周辺、等
 ・花言葉:相談、一致、合流、遭遇

■新しい株
 新たに発生した株は、葉は春菊のような不規則に切れ込みがあり、茎を中心に円形を描くように葉が地面にへばりつくように配置される。このロゼッタ状の葉から茎が上に伸び、枝分かれしながら葉や花をつける。茎の色は緑のものと紫がかったものもある。

新しい株 (2024年2月28日 所沢市)

茎が紫がかった株 (2024年3月4日 所沢市)

■ノボロギクの形態
 ノボロギクの株の中では、それぞれの蕾や花、果実が同時に並行して成長していくので、株の中は大変賑やかだ。ホトケノザやヒメオドリコソウ等の早春の雑草と比べると色や形状に個性は乏しいが、構成の多様性とボリュウム感で勝っている。その割に目立たないのは構成物の花や実が小さいのと、株が群生と言うよりは散在しているためかもしれない。外来種だが、他の植物を駆逐する程の意欲はないのかもしれない。

 花の外側を包む総苞は円筒形で、多数の黄色い花は筒状花。花冠の先は5裂し、白い毛状の冠毛がある。花の外側を包む総苞片の先端は三角形の黒紫色になっているのがノボロギクの特徴。種子は長い白色の冠毛を持ち、風にのって飛散し、繁殖する。この過程で発生するボロボロになった綿毛のような冠毛が名の由来。成長した葉は互生し、不規則に羽状の切れ込みがあり、濃緑色で厚く、表面には毛はほとんどない。

道端の大きな株には蕾、花、果実が同居 (2023年3月2日 所沢市)

同時期の雑草と比べると、形状の複雑さとボリュウム感がある (2023年3月15日 所沢市)

茎上部の花と葉 (2024年3月4日 所沢市)

花の外側を包む総苞片の先端は三角形の黒紫色 (2024年3月4日 所沢市)

黄色い頭花は筒状花の集合 (2024年3月4日 所沢市)

襤褸になる前の初期の白い冠毛 (2023年4月4日 所沢市)

白い冠毛が抜け襤褸は終わり (2024年2月28日 所沢市)

■ノボロギクと日本人
 ノボロギクで注意すべき点は、全草にセネシオニという有毒成分が含まれており、多量に摂取すると肝機能障害や吐き気、下痢など引き起こす。では、人間に取って有益な点は言うと、有毒で食用にも薬にもならず、雑草然とした姿は観賞用にもならず…なので、特に何もない。ただノボロギクに出会って良かったと思うのは、あくまでも個人的見解だが、たくましく生き続ける活力を感じさせてくれるからだ。