ジュゴン - 人魚かセイレーンか

 ジュゴン(儒艮)は海牛の仲間で、単一種でジュゴン科ジュゴン属を構成する海に棲む哺乳類。インド洋、西太平洋、紅海に分布し、日本の沖縄諸島が北限。全長3m、体重450Kg程度にもなりかなり大型だが、眼は小さく、耳も小さな穴のみ。前足はひれ状で後ろ足は退化し、尾鰭は三角形。沿岸のアマモなどの海草を食べるため、口は下向き。また、肺は背側一面にびっちり配置されているため、肺の空気をコントロールするだけで姿勢の制御が出来る。頭頂に気孔が二カ所あり、5~10分間隔で空気を吸いに水面に浮上する。子供を抱えながら哺乳する姿に見えるので人魚とも言われる。また、妖艶な姿と歌声で船乗りたちを魅了し海に引きずり込んだ女怪セイレーンの伝説も生まれた。しかし、有史以前から狩猟の対象とされ、生息数は減少し続け、今では環境省レッドリストの対象になり、日本では現在は鳥羽水族館でしか見られない。滑らかで優雅な姿から、人魚とかセイレーンとか煽てられているうちに、ジュゴンを絶滅寸前まで追い込んだ人間は大変凶悪な存在だ。

 ジュゴンを形にするには、細かな装飾はほぼないので、全体の丸く柔らかそうな形にすることが重要。それに加え、下向きの大きな口と申し訳程度にある目や気孔、これだけ揃えばジュゴンらしく見えるが、少し寸足らずだったかもしれない。この姿から人魚を想像できる凶悪な人間の想像力は素晴らしいと思った。【2021年制作】