マンリョウ - 冬の風情
冬の散歩道では、花より果実が目につく。特に赤い実がついている小さな樹木に出会うとハットする。これらの樹木は、良く見ると少しずつ姿が異なる。日本人は古くから、これらの樹木を正月の縁起物として愛でている。赤い実の数や大きさ、樹形の見栄えを吟味して、上から万両(マンリョウ)、千両(センリョウ)、百両(カラタチバナ)、十両(ヤブコウジ)、一両(アリドオシ)と番付まで作ってしまった。これらの中で、野山でも庭園でも良く見かけるマンリョウについて観察する。
マンリョウは、サクラソウ科ヤブコウジ属の常緑小低木。同属のヤブコウジは地を這うように生えているが、マンリョウは1m程度まで伸び、根元から新しい幹を出して株立ちする。赤い実の形は似ているが、実の数はマンリョウの方が多い。と言っても実生から育った若木では、なかなか判断しにくい。その時は、マンリョウの葉に着目すべし。葉は互生で形は長楕円形、葉の縁は波打ち形の鋸歯があり、歯の表面は光沢のある緑色で裏面は白っぽい。若い実生のマンリョウの木でも葉を見れば区別が可能だ。


マンリョウは、世界的には日本を含む東アジアからインドに分布。日本では関東以西の照葉樹林に自生するが、江戸時代に園芸植物として植栽され、品種改良も行われた。現在でも、日本固有の野生植物であり、且つ園芸植物でもある。


【基本情報】
・名称:マンリョウ(万両)
・学名:Ardisia crenata
・分類:サクラソウ科 ヤブコウジ属の常緑小低木
・分布:東アジアからインドの温暖な場所に広く分布
日本では関東以西の各地の野山、及び庭木として植栽
・花言葉:寿ぎ、財産、金満家、穂のある人、慶祝 など
■マンリョウの生態
マンリョウの開花は夏。十数本に枝分かれした先に小さな白い花をうつむき加減につける。花冠は5つに裂けてそり返る。雄蕊は5本、雌蕊は1本。


果実は内部に種がある核果で、花が終わった後にゆっくりと緑から赤に色づき、12月頃に真紅になる。鳥などに食べられなければ、春まで残る。



■マンリョウの変わり種
江戸時代から始まったマンリョウの品種の選抜育成の一番の成果はシロミノマンリョウ(白実の万両)だろう。本種は、赤系統に関わるアントシアニンを生成する遺伝子も黄色の色素も欠き、果実が白実の品種だ。正月の縁起のため、赤いマンリョウとこのシロミノマンリョウをセットにして紅白にしたかったのだろう。そう言えば小学校に祝い事があったとき、紅白万両、いや紅白饅頭を貰ったことを思い出した。

キノミノマンリョウ(黄の実の万両)は実が黄色でやや赤みがかったもの。どのような経緯で品種改良されたかは良く分からないが、旅先で偶然見かけた。

他にも果実の大きさや葉の形や色が変わったマンリョウが育成されているようだ。
■人との関わり合い
中国では漢方薬として利用されている。マンリョウの中国名は朱砂根(シュシャコン)と言い、根を乾燥させた生薬"朱砂根"は感冒や扁桃腺炎に効く。また、葉は朱砂根葉(シュシャコンヨウ)と言い、打撲傷などの外用治療にお使われる。
日本でのマンリョウの役割は何か?これと言って直ぐに思い浮かぶものはない。結局、冬の観賞用植物としての価値が最も高そうだ。日本原産のマンリョウが人間によって庭木として植えられても、マンリョウからすると単に生息領域が拡がるだけで、野生のマンリョウには何の影響も与えないのだろう。これは攻撃的な外来種とは別の世界だ。そして年末に赤い実をつけて春に実がなくなるまでの長い冬の期間に密かに存在を主張し続けている。例え、雪降っても美しい。




