マンボウ - 謎の風来坊

 マンボウは、フグの仲間だが、見た目は大いに異なる。横から見ると楕円形、正面から見ると紡錘形、背びれと尻びれは体の後部から上下に長く突き出し、尾びれに相当する部分は舵びれと呼ばれる。フグとの共通点は、丸い目と小さな口、腹びれと肋骨を持たないこと位か。世界の熱帯や温帯の外洋を回遊し、時には深海にも潜り、クラゲやイカなどを餌とする。行動範囲が広いためか、未だ謎の多い魚のようだ。人間との関わりで言えば、肉が水っぽいせいか漁業の対象にはならないが、水族館のスターとして大水槽で優雅に泳ぐ姿を思い浮かべる。形の可愛らしさ、風来坊的なイメージから、"ドクトルマンボウ航海記"など、引用されることが多い。

 さて、マンボウの作陶の一番の課題は、どのようにして体を立たせるか。舵びれと尻びれを土台に接地し、両脇から水玉のような球体で押さえつける。粘土では形はできた。次の焼成工程では高温になり構造物が柔らかくなると、些細な重心のズレが効いて傾きが大きくなってしまう。案の定、その通りになってしまった。【2020年制作】