ハリセンボン - 怒ると可愛い

 ハリセンボン(針千本、魚虎)は、フグ目ハリセンボン科の魚の総称。世界中に分布するが、日本では北海道を除く温暖な海に生息。ハリセンボンは体の表面に鱗が変化した多くの長い棘を持つ。普段は棘を胴体に密着しているので、普通のフグが泳いでいるようにしか見えない。しかし、敵に遭遇した異常時には腹を膨らませ、棘を立てて体を大きく見せる。このときのほぼ球形に膨らんだ姿が、ハリセンボンの心象的イメージだ。
 ハリセンボンの棘は300~400本あり、しかも鋭い。これではとても粘土では作れない。そこで良い方便を思いついた。千手観音様の手の数は本当は千本でも、仏像を創るときは42本が慣習になっている。これに倣い、間引きすることにする。作陶にあたっては、棘は太くして出来る範囲の数にする…との当り前の妥協点に辿り着いた。棘を刺す魚体の部分に穴を開け、そこに接着剤の役目をするドベ(粘土を溶かしたもの)を塗って、角のように太い棘を差し込んでいく。形はどうにか出来た。焼成すると、何とか接着はしているが、魚体と棘の間の釉薬表面に隙間が生じているところがあった。また、作陶の過程で棘が2本落ちた。これらの不具合に対し、焼成後に透明の接着剤を使って修正した。最近は紫外線を当てると短時間で硬化する接着剤がある。紫外線ライトとともに使ってみた。透明性は良い。経年変化や強度はどうだろうか。継続実験中。【2023年制作】