サンゴジュ - 美しい防火樹
サンゴジュ(珊瑚樹)は、ガマズミ科ガマズミ属の常緑広葉樹。日本の在来種で、関東以南から沖縄の海岸近くに自生するが、ふだん目にするのは都市部の公園や集合住宅、公共施設の垣根として植栽されたものだ。樹高は放置すると10m以上になるので、剪定は必須となるが、それでも植えられる理由がある。葉は厚くて水分が多く、燃やすと泡のようなものが噴出して、火災の延焼を防ぐ効果があるとされているためだ。このため、別名をアワブキ(泡吹き)と呼ばれている。ところで名称のサンゴジュだが、鮮やかな赤い果実の形が、血珊瑚と呼ばれる高級な珊瑚細工のパーツに似ているため名付けられた。植物としては、初夏に多数の小花を咲かせ、秋までに果実の色が黄緑から赤、黒へとゆっくりと変動幅を持ちながら変化して行くが、常緑の葉との対比も見事でよく映える。同属の植物で花も果実も似ていて、山野に自生し落葉性で野性的なガマズミ(莢蒾)と比較すると、随分とおおらかで都会的な雰囲気がする。それは、民家の近くに植栽され、垣根や観賞樹としてばかりでなく、いざというときの防火樹として期待され、人間との関わりが深いせいもあるだろう。

【基本情報】
・名称:サンゴジュ(珊瑚樹)
・別名:アワブキ(泡吹き)
・学名:Viburnum odoratissimum
・分類:ガマズミ科 ガマズミ属の常緑広葉樹
・原産地:日本の在来種、台湾や東南アジアにも自生
・分布:日本では関東以南から沖縄の海岸近くに自生するが、庭木や垣根として植栽もされる
・花言葉:負けず嫌い
■生態
雌雄同株で花は両性花。自然の状態では10mを超える高木になるが、その樹形は円筒形に近い円錐形で、安定感がある。幹の樹皮は滑らかで灰褐色だが、若いうちは褐色の皮目が目立つ。葉は茎に対生し、葉形は楕円形で先端が尖り、葉質は厚く表面には光沢があり、葉柄は赤味を帯びる。葉がボロボロになっているのを時々見かけるが、これはサンゴジュハムシ(珊瑚樹葉虫)が寄生し、茶褐色の食痕を残すためだ。





■花
春になると、枝に先に大きな円錐花序が伸び、多数の蕾がつく。初夏には蕾は白くなって膨らみ、花序の先端から開花が始まる。やがて、花序は満開の花で溢れる。花は両性花で、白色の花冠は先が5裂し、5本の雄蕊は花冠から飛び出し、雌蕊は奥にある。サンゴジュは虫媒花であり、ハチや蝶が蜜を集める。




■果実
花期が終わると、黄緑色の若い果実が出来る。果実は液果で、次第に赤味を帯びていく。個々の果実は、それぞれのペースで果皮の色を変化させなから成熟し、最終的には鮮やかな赤色や黒ずんだ青紫色になる。また、常緑の葉を背景に、点在する赤い果実の存在はひときは際立つ。




■サンゴジュと日本人
Web上でサンゴジュに関する検索をしていると、興味ある記事が目についた。"京都居候叢書"の著者藤井秀昭氏が公開した"サンゴジュの実が赤みを帯びる(京都府立植物園):2026年7月27日(月)"(詳細はここをクリック) だ。この記事の構成は、京都府立植物園大芝生地南側にあるサンゴジュに注目して2026年7月23日に様々な角度から撮影をすると同時に、植物学や文化論、経済論的な観点からサンゴジュ論を展開している。特に関心を持ったのは、何故夏のこの季節を選んで記事にしたかだ。著者はこう言っている。"(今は)多数の果実を形成し、黄緑色から橙色、淡紅色へ移行する着色過程にあった。…今回の観察では、果実形成という現在の状態を起点として、すでに終了した開花・送粉過程を読み返す遡行時間と、同一果序内に複数の成熟段階が共存する共時時間の両方が観察された。" そうすると、成長過程のダイナミックな変化の大きな時期が、サンゴジュの本質を示唆していると言うことか。最終形態の鮮やかな赤い実に至るまでの果実の成長過程の変遷は、日本人なら大いに興味を持って見守るだろうと思う。


