住宅緩衝地帯の雑草 2026年夏 – 変動しつつ推移

 丘陵を切り開いて宅地を造成すると、隣接する宅地との間に高低差のある緩衝地帯ができ、そこは往来のできない閉鎖的な土地なので、必然的に雑草天国になる。とは言っても、衛生的にも防犯上も放置するわけにはいかず、夏には草刈りをする。2025年夏には、どの様な雑草が生えてくるか調べた(詳細はここをクリック)。1年後の2026年夏には、雑草の分布はどう変化したのだろうか、草刈りをしながら記録した。

 緩衝地帯の構造は、幅1mで中央にコンクリートの蓋のついた暗渠排水路があり、その両側は砂利が敷き詰められた土地があり、その外側はコンクリートの壁と法面で囲まれ、その長さは約11mほどある。2025年夏の雑草分布は下図の通り。

2025年夏の雑草分布

 2026年は雨が多く、暑い日も続いたので、雑草は元気よく繁茂した。昨年草刈りをした後には、緩衝地帯の表面には何も残さなかったが、地表は砂利で固まっていたため、木質の植物の植物は根が残り、草本の茎は地表付近で切れてしまうので、地下には根が温存されている。何れの植物も、この1年間で成長した若い植物だが、ヨウシュヤマゴボウやアカメガシワは人の背の高さを超える程になった。2026年夏の雑草分布を示す。大方の植物は継続して繁っているが、場所が変わったもの、新規に見つかったものもある。それでは、雑草分布図の左側から順に、どの様な雑草が生えてきたか見てみよう。

2026年夏の雑草分布

■オニドコロ(鬼野老、ヤマノイモ科ヤマノイモ属、蔓性多年草)
 この緩衝地帯には、3種類のヤマノイモ属の蔓性多年草が生えている。オニドコロ、ナガイモ、ヤマノイモだ。オニドコロは、葉がハート型で丸っぽく、先が尖る。ちょうど良い具合に陽当りの良いフェンスに絡まり、花も咲いている。雌雄異株で、これは雄株のようだ。繁殖方法は根による栄養繁殖か実生だが、去年も近くに株があったので、多分栄養繁殖だろう。

オニドコロ

■ナンテン(南天、メギ科ナンテン属、常緑低木)
 3枚の葉が特徴。ちょうど同じ場所に、昨年の切り株から生えたひこばえの若い枝や、更に薄紫色の新しい枝も出てきた。他に別の場所に新たに生えた株もあり、これは赤い果実が鳥に運ばれて発芽した可能性がある。去年より増えており、繁殖力は強力。

ナンテン

■ヨウシュヤマゴボウ(洋種山牛蒡、ヤマゴボウ科ヤマゴボウ属、多年草)
 北米原産の外来種で、多年生の草本。草丈は2mにもなり、今は白い花からなる花穂を枝先に付けているが、やがて扁平な黒紫色の有毒の果実になる。繁殖方法は、種子による実生と根茎からの再生があるが、昨年は結実前に株を刈ったので、残った根茎による栄養繁殖で、ほぼ同じ場所に生えてきたものだと思う。去年より繁殖範囲が広がったようだ。

ヨウシュヤマゴボウ

■テリハヤブソテツ(照葉藪蘇鉄、オシダ科ヤブソテツ属、常緑性のシダ)
 昨年はヤブソテツと言ってしまったが、葉に光沢があるので、テリハヤブソテツと思う。日本の在来種で、全土に分布。葉の裏に多数の胞子嚢をつけ胞子を飛ばして増える。砂利が多く、湿気の多いこの場所でも、長く生き延びそう。

テリハヤブソテツ

■クワクサ(桑草、クワ科クワクサ属、多年草)
 葉がクワに似ているので命名された。湿地を好み、観賞用、薬用にもなる。花期は初秋だが、その前に草刈りをしたので、実生で生えたのではなさそう。クワクサは一年草説と多年草説があるが、根茎による栄養繁殖も可能なので、多年草だと思う。今年も去年と同じ場所に生えていた。

クワクサ

■ドクダミ(蕺菜、ドクダミ科ドクダミ属、多年草)
 ハート形の葉と、白い苞、花序柄に密集する花が特徴で、独特の匂いがする。この時期には花はほぼ終わっていた。繁殖は、胚珠が無性的に種子になったり、地下茎による栄養繁殖も出来、繁殖力は強力。法面の上の庭には、ドクダミが跋扈しているが、これが下にも降りて来たとなると、来年以降は増えるかもしれない。

ドクダミ

■トキワツユクサ(常磐露草、ツユクサ科ムラサキツユクサ属、多年草)
 南米原産で、昭和初期に観賞用として渡来し、現在では野生化して要注意外来生物に指定されている。トキワツユクサは白い三角の花弁の花を咲かせた後の種子で増えるよりも、茎が地面に触れると這うように広がる匍匐性を持つため、あちこちで発根し栄養繁殖をするので繁殖力は強い。去年は目立たなかったが、今年はコンクリート壁に沿って数株生えていたので、今後要注意だ。

トキワツユクサ

■オヤブジラミ(雄藪虱、セリ科ヤブジラミ属、越年草)
 春に小さな白い5弁花を咲かせた後、果実は"引っ付き虫"となって、人や動物によって拡散される。オヤブジラミの繁殖は、種子によるものが基本。去年は目立たなかったので、法面上方の庭から種子が落ちだのかもしれない。今後、閉鎖的なこの土地で、どのように変化していくのか興味深い。

オヤブジラミ

■ナガイモ(長芋、ヤマノイモ科ヤマノイモ属、蔓性多年草)
 ナガイモは食用になり、芋の形状から長芋、銀杏芋、つくね芋などと呼ばれる。普通は栽培される有用植物だが、何故この様な硬い地面の狭小地に生えているのだろうか?地下に種芋はあるのだろうか、花やムカゴも見かけない。ただハート形で基部側面がやや張り出している葉が蔓性の茎に連なって他の植物と絡まりながら水平に広がっているだけだ。しかも、大きなヨウシュヤマゴボウが覆いかぶさっているので、ろくに陽も当たらない。何のためにここに生えてきたのか分からない…と言っているようだ。

ナガイモ

■ヤマノイモ(山の芋、ヤマノイモ科ヤマノイモ属、蔓性多年草)
 ヤマノイモは、食用としては芋に粘り気があり、自然薯と呼ばれている。この緩衝地帯に生えてくるヤマノイモは、前記ナガイモと同様に、単なる雑草として毎年刈り取られ、成長することはない。葉の形が基部が横に広がらない細長いハート形で、ナガイモの葉と区別できる。

ヤマノイモ

■ヘクソカズラ(屁糞葛、アカネ科ヘクソカズラ属、蔓性多年草)
 真夏にフェンスや他の植物に巻き付いて、ラッパ型の白く中心が赤い花を咲かす。昨年はフェンスに絡まっていたが、今年は葉のついた蔓が地表に伸び、巻き付く物を探している状態だった。ヘクソカズラは種子によっても、地下茎による栄養繁殖も可能なので、今後も油断できない。

ヘクソカズラ

■アズマネザサ((東根笹、イネ科メダケ属、常緑)
 東日本では、普通に見かける常緑のササ。高さは環境が良ければ数mになることもあるが、ここでは精々数十cm程度。これは、引き抜こうとしても無理で、仕方なく地際から切るが、毎年地下茎から茎をだすので、脈々と生え続ける。イタチごっこの状態だ。

アズマネザサ

■マグワ(真桑、クワ科クワ属、落葉広葉樹)
 当地は養蚕の歴史があり、今でも野生化したマグワが野原で見かけることがある。この緩衝地帯に根付いたのは、宅地造成時に紛れ込んだか、鳥が種子を運んだかは不明。毎年地表に出る部分を刈り取るが、その度に株から新しい枝が生えてくる。勢力範囲は変動は無く、このまま続くのだろう。

マグワ

■サンショウ(山椒、ミカン科サンショウ属、落葉低木)
 今年初めて発見。鳥が果実を運び、発芽したのだろうか。花期は晩春だが、若い果実らしきものは付いていなかった。木が若いせいだろうか。雌株であれば、庭に移植して香辛料にしたものを、残念。

サンショウ

■イノコズチ(猪子槌、ヒユ科イノコヅチ属、多年草)
 あまり陽の当たらない場所を好むので、別名が日陰猪子槌。花期は夏から秋にかけてなので、今は対生する先の尖っている長楕円形の葉だけが目立つ。繁殖は種子繁殖が原則だが、一度根付いてしまうと翌年以降も生き残る多年草だ。従って、来年も同じ場所に繁っているだろう。

■オキザリス・トリアングラリス(Oxalis triangularis、カタバミ科オクサリス属、球根の多年草)
 南米原産で、別名インカノカタバミ。日本では観賞植物として栽培される。葉は緑またが紫の3つの小葉からなり、花は白かピンクの5弁で、カバー植物に適していると思う。昨年、根元を掘ると球根が出てきた。これで毎年繁るのだろう。何故、この緩衝地帯にあるかと言えば、宅地造成の際の客土に球根が紛れ込んだのだろうと推定する。

オキザリス・トリアングラリス

■ブタクサ(豚草、キク科ブタクサ属、一年草)
 ブタクサは北米原産の帰化植物。今年、初めて現れたが、今のところ細く切れ込んだ複葉が目立つだけだ。夏から秋には大量の花粉を風に乗せて飛ばし、花粉症の代表的なアレルゲンとなる。ブタクサは種子で増えるが、綿毛もなく、引っ付き虫でもなく、株の周辺に落ちて発芽の機会を長期間にわたって待つタイプなので、何故ここに出現したかは推定が難しい。

ブタクサ

■アカメガシワ(赤芽柏、トウダイグサ科アカメガシワ属、落葉高木樹)
 日本の在来種。陽当りを好み、成長が早く、パイオニア植物でもある。放置すると、樹高は5mを超える。昨年根元を切ったが、ひこばえで新しい枝が伸び、1年で人の背丈ほど伸びた。地下茎を掘り返さない限り、毎年繰り返しそう。

アカメガシワ

■トウネズミモチ(唐鼠黐、モクセイ科イボタノキ属、常緑高木樹)
 中国原産。明治時代に渡来し、公園緑化樹などに利用される。今年、初めて出現。トウネズミモチの開花は初夏で、秋にネズミの糞に似た果実ができる。この緩衝地帯に現れたトウネズミモチは、未だ若木のため花は付かず、革質で長楕円形で先端が尖った葉が対生しているのみ。トウネズミモチの果実は野鳥に採食され、種子が糞とともにこの地に落とされ、発芽したのだろう。

トウネズミモチ

■マユミ(檀/真弓、ニシキギ科ニシキギ属、落葉樹木)
 マユミは、日本に自生する紅葉と赤い実を楽しむ落葉樹。昨年枝を払った株から、新しい枝が出てきた。この株から10m程度離れたところにマユミがあり、そこで出来た果実が小鳥によって運ばれ、根付いたものだろう。

マユミ

 住宅緩衝地帯の雑草を約2時間掛けて駆除した。砂利混じりの地面は硬くて狭いため、スコップで掘り起こせないため、地下に根茎が残ったものは、毎年顔を出す。また、今年出現した新参者は何処から来たのか推定するのも重要だ。かつての新興住宅地であったため、客土を盛って宅地造成が行われた経緯もあり、植生への影響も感じる。そして、草苅りをしていると地面からアリやダンゴムシの様な昆虫やヤモリのような爬虫類も飛び出して来るが、これらが植物の分布に影響を与えるのだろうかとの疑問も湧く。隣近所にも住宅緩衝地帯はあるが、雑草防止シートや除草剤などによって、雑草は皆無。我が家の部分だけが目立ち、孤高の小宇宙になっている。さて、どうしたもんやら。

草刈り後の住宅緩衝地帯