利尻礼文サロベツ花紀行5 – 原生花園の借景は利尻富士
■礼文島からサロベツ原生花園へ
本日が、利尻礼文サロベツ花紀行の最終日。早朝にホテルから香深港に移動し、フェリーで稚内港に向かう。天気は雲が多く、展望が良くない。離れゆく礼文島も、近づきつつある礼文島も裾野の部分しか見えない。ところが、稚内港に近づくと、雲が薄くなり、市街や風車が見えてきた。稚内に着くと、昼食を兼ねた自由時間で、稚内港付近(稚内副港市場)を徘徊した。ここには多数のお土産屋さんがあり、隣接して稚内市樺太記念館があった。かつては、アイヌや日本人、ロシア人が雑居していた樺太が、日露戦争や太平洋戦争によって庶民が経験した歴史や悲劇を、豐富な写真や展示で説明しており、大変感銘深かった。さて昼食は、ホテルの朝食がビュッフェ方式で食傷気味だったので、北海道が誇るコンビニ”セイコーマート”でおにぎりを買って、バスに乗り込んだ。




バスが稚内市街の丘を超えると、風景は一変。家屋が消え、道路の両側には原野が広がる。この辺は湿原で、かつて生えていた植物が分解されずに泥炭となって残っている。今ではエネルギー源としての効率が悪いため放置されているので、貴重な自然が残っているようだ。天候は午後になると奇跡的に回復し、車窓からは海に浮かぶ利尻岳が展望できた。おにぎりを食べながら、車窓からお花畑を観賞したが、バスは高速で進むので、景色は一瞬のうちに流れ去るが、次々と変化しながら続いていく。サロベツ原生花園で迎えてくれたのは、この地域の産業遺産となった泥炭採掘の現場で使っていた浚渫船だった。サロベツ原生花園(正式名はサロベツ湿原センター)には幅が広い木道が設置され、段差もなく、誰でも歩き易い。原生花園は比較的単調な景色の連続だが、どの位置からも利尻富士がよく見え、木道のどの辺りを歩いているのかが良く分かる。





■出会えた植物たち
コバイケイソウ(小梅蕙草、シュロソウ科シュロソウ属、Veratrum stamineum)は、日本の北海道や本州中部地方以北の湿気のある高山に自生する多年草。礼文島や利尻島で見たバイケイソウとの相違は、コバイケイソウの方がやや小型で、花の色は純白で、全体的にかなり柔らかな印象を与える。サロベツ原生花園ではコバイケイソウは群生していたが、何故かバイケイソウは見当たらなかった。



タテヤマリンドウ(立山竜胆、リンドウ科リンドウ属、Gentiana thunbergii var. minor)は、北海道と本州の中部以北の日本海側に分布する越年性の高山植物。本州以南に自生するハルリンドウの高山型の変種といわれ、全体的に若干ハルリンドウより小さく、花の色はやや薄い。

カキツバタ(燕子花/杜若、アヤメ科アヤメ属、Iris laevigata)は、日本からシベリア南部ににかけて分布する湿地を好む多年草。よく似たアヤメの花弁の付け根は網目模様だが、カキツバタは白い一筋の線が入る。公園で園芸種を見る機会はよくあるが、原種も同じたたずまいだ。


ヤマドリゼンマイ(山鳥薇、ゼンマイ科ヤマドリゼンマイ属、Osmundastrum cinnamomeum var. fokeiense)は、日本の在来種でもあり、世界でも広く分布する大型の羊歯の多年草。株の周辺には羽状複葉で緑色の栄養葉、内側の茶褐色の葉は胞子葉と呼ばれ花に相当するもの。この胞子葉が山鳥の尾に見たて名がついた。 サロベツ原生花園では、彼方此方に群生していた。


ワタスゲ(綿菅、カヤツリグサ科ワタスゲ属、Eriophorum vaginatum)は北半球の高山や寒冷地に分布し、日本では北海道から中部地方以北の自生する多年草。別名はスズメノケヤリ(雀の毛槍)。春に黄緑色の小さな花が穂のようにつき、初夏になると花被片に相当する綿毛が伸びて集まる。これは、種子を運ぶ綿毛では無いようだ。

イソツツジ(磯躑躅、ツツジ科イソツツジ属、Ledum palustre subsp. diversipilosum)は、アジア北東部、日本では北海道から東北地方の亜高山帯から高山帯に自生する。ちょうど今が花期で、白い5弁花を球状につけ、長い雄蕊や雌蕊が花から飛び出す。葉は楕円形の革質で縁が内側に巻き込む。背が低いので、草原から僅かに白い花が顔を出す。

エゾカンゾウ(蝦夷萱草、ワスレグサ科ワスレグサ属、Hemerocallis middendorffii var. esculenta) は、北海道と本州北部に自生する禅庭花の一種。花は一日花で、次々に咲く。礼文島にも利尻島にもあったが、サロベツ原野では群生して広がっている。


ショウジョウバカマ(猩々袴、シュロソウ科ショウジョウバカマ属、Heloniopsis orientalis)は、北海道から九州までのやや湿った場所に生える多年草。春にロゼット状の葉から花茎が伸び、その先に淡紅色の花をつける。その後花茎は伸び、花の色は失せ緑色がら褐色になり夏を過ごす。原生花園では、ちょうどこの状態の花があった。

ミズバショウ(水芭蕉、サトイモ科ミズバショウ属、Lysichiton camtschatcensis Schott)は、利尻島に葉が大きく伸びた状態のものがあった。それに加え、ここでは花序に小さな花が出来た後に、果実になったものが残っていた。これは人間には有毒だが、冬眠から目覚めたがクマが整腸剤として利用するらしい。

マイヅルソウ(舞鶴草、キジカクシ科マイヅルソウ属、Maianhemum dilatatum)は、礼文島でも利尻島でも見かけたが、ここでは木道の近くに群生していた。

ツマトリソウ(褄取草、サクラソウ科オカトラノオ属、Trientalis europaea)は、礼文島にもあった。ここのものも花弁は7裂していた。黒い湿地の上に咲いていためか、写真では白い花の詳細な描写が飛んでしまい残念。

アキタブキ(秋田蕗、キク科フキ属、Petasites japonicus subsp. giganteus)は、日本原産で、主に本州北部、北海道、千島、樺太に分布。寒冷地に合わせフキが変異したらしい。特徴は、何と言っても巨大なこと。葉の直径は最大1.5m、草丈は最大2mにもなるらしい。ここで見たものはそれ程でもないので、未だ成長過程と思われる。関東地方のフキとは確かに別物だ。

今回は、礼文島や利尻島、サロベツ原野の花を楽しむために、パックツァーを利用した。限られた時間で、多くの場所を訪問でき、効率は抜群。添乗員さんが、花ガイドの専門家が説明した植物名を時系列にリストにしてくれたので、写真を整理する際に助かった。しかし、突き合わせてみると、2割程度は見落としていた。散策路の人の流れに従って、構図やピントを確保して写真を撮るには、どうも修行が足りないようだ。また、一度に多くの植物を見たが、初めて見たもの、関東にもあるもの、そして似ているが少し違うものなど様々。種や環境の相違によるものか、改めて生物多様性の意味を確認できた。機会があれば、季節を変えて植物に会いに行きたい。


