利尻礼文サロベツ花紀行4 – 岬巡りは体力勝負
■岬めぐりコース
礼文島2日目の午後は、北部のゴロタ岬、スコトン岬、そして澄海(すかい)岬を、ハイキングと観光バスを併用して巡った。実に忙しなくも効率的な旅だった。先ず、自動車幹線道路沿いの江戸屋集落から少し山中に入った駐車場でバスを降り、ゴロタ岬を目指す。始めは、お花畑が広がる緩やかな丘をハイキング気分で楽しんでいたが、やがて海から垂直に切り立ったような岩塊が目に入ると、傾斜は急な登山道となり、不規則な段差やぬかるみに足を取られながら、ひたすら登り続けた。ゴロタ山につき、その先のゴロタ岬の展望台で漸く一休み。今回の旅行で、一番ハードなコースだった。おかげで展望は素晴らしく、北にはスコトン岬やトド島、南には礼文島の背骨に相当する丘陵が続いている。





ゴロタ岬を後にして、スコトン岬に向かう。同じ急坂を下るのでバランスが取りにくく亀のようにゆっくり進むが、お花畑を見渡せるので景色は素晴らしい。再び観光バスに乗車し、ストコン岬の手前で降り、最北限の地と呼ばれている所に向かう。そこには場違いと思われるお土産屋さんがあり、店員さんはユニフォーム姿で、冷蔵庫や冷凍庫も完備され、商品のディスプレイも整然としており、喫茶店まで併設して、まるで都会のアンテナショップに迷い込んだようだ。ここは、礼文島を始めとする北海道の名産品をオンラインショップを中心に販売するブランド"島の人"の利尻島本店だったのだ。運営会社の"レブニーズ"にとっては、この店は単なるシンボルに過ぎないのかもしれないが、地方発のビジネスの拠点になっているようだ。外に出てスコトン岬に行くと、冬になるとトド(海驢)が集まり現在は無住のトド島があるだけで、最果ての地に立っている気分になる。



スコトン岬から澄海岬までは、観光バスで直行。本来はトレッキングコースの一部だが、自動車道路や展望台付近の散策路も整備され、誰でも手軽に行ける観光地になった。ここでの見処は、断崖の岬に抱かれた湾と透明度の高い海のコントラスト。荒々しと美しさが同居している。中島みゆきさんの"銀の龍の背に乗って"のミュージックビデオや、吉永小百合さんの映画"北のカナリアたち"のロケ地になたのも納得。

■出会えた植物たち
オオカサモチ(大傘持、セリ科オオカサモチ属、Pleurospermum uralense)は、桃岩コースでも見かけた。オオハナウドとと似ているが、羽状で切り込みの深い葉が特徴。

チシマアザミ(千島薊、キク科アザミ属、Cirsium kamtschaticum)は、利尻島の姫沼にもあったが、ここでは未だ蕾の状態だった。


エゾノリュウキンカ(蝦夷立金花、キンポウゲ科リュウキンカ属、Caltha fistulosa)は、本州北部から北海道、樺太、千島などに自生し、黄色い5弁の花をつける多年草。ここでは、花が終わり、若い果実が出来始めていた。

センダイハギ(千代萩/先代萩、マメ科センダイハギ属、Thermopsis lupinoides)は、初夏を代表する黄色い蝶形花で、島内に広く分布していた。

チシマフウロ(千島風露、フウロソウ科フウロソウ属、Geranium erianthum)は、利尻島でも礼文島でも彼方此方で見かけた。この時期を代表する紫色の花だが、花の寿命は数日で、同じ花序に蕾や花が混在する。

イワベンケイ(岩弁慶、ベンケイソウ科イワベンケイ属、R. rosea L.)は、林道コースのものは開花していたが、ここでは未だ蕾の状態だった。

エゾオオバコ(蝦夷大葉子、オオバコ科オオバコ属、Plantago camtschatica)は、北海道、本州、九州の日本海側、オホーツク海沿岸に分布する多年草。白く柔らかい毛が密生し、全体が白っぽく見えるので、他のオオバコとは区別できる。ここで見た個体は、花が終わって花弁が枯れ落ち始め、若い果実が出来始めるところ。

ノコギリソウ(鋸草、キク科ノコギリソウ属、Achillea alpina L.)は、日本では北海道や本州の高山に自生する多年草、宿根草。葉は掌状に中-深裂し、裂片には鋭い鋸歯がある。葉は長くノコギリのように深く裂けている。花期は盛夏で、5~7弁の舌状花が散房花序をつくる。現在は成長の過程で、まだ頭花らしき物も出来ていない。

チシマキンレイカ(千島金鈴花、スイカズラ科オミナエシ属、Patrinia sibirica)は、日本では北海道にのみに分布する高山植物。葉はヘラ状で不揃いな鋸歯があり、長い花茎の先に散房花序を出し、小さな黄色の花を多数つける。ちょうど今が花の盛りだった。

エゾカンゾウ(蝦夷萱草、ワスレグサ科ワスレグサ属、Hemerocallis middendorffii var. esculenta)は、今が花盛りで、山地のお花畑のみならず、海岸沿い草原にも群生をつくっている。

澄海岬から香深への帰途にレブンアツモリソウの群生地がある。もう既に花期は過ぎつつあるが、幸運には見学することが出来た。レブンアツモリソウ(礼文敦盛草、ラン科アツモリソウ属、Cypripedium marcanthum var. rebunense)は、礼文島のみに生息する野生のラン。他のアツモリソウとは、袋状の大きな唇弁が白色から黄色であるのが特徴。現在、レブンアツモリソウは絶滅危惧類になっている。その原因は、花の美しさ故に盗掘され個体数が激減したこと。レブンアツモリソウは昆虫の餌になる蜜を分泌せず、花粉も花粉塊となるので大量には出来ない。しかも花粉塊を媒介するのは、ニセハイイロマルハナバチの単独で巣を作り始めたばかりの越冬女王蜂であり、これが次の花に入り込んだ際に受精が完了する。しかし、このハチが蜜のないレブンアツモリソウに何故取り付くのかとの疑問が残る。実は、同時期に同じような淡黄色の花をつけるネムロシオガマの花をレブンアツモリソウの花と誤認するためではないかともの説もある。これは、幾つかの条件が満たされなければ繁殖が出来ないということだ。レブンアツモリソウを人工的に栽培する方法も研究されているが、花をつけるまで十数年かかるらしい。どうやら、レブンアツモリソウにとって最大の天敵は人間のようだ。レブンアツモリソウの群生地では見学の他に、貴重な花を咲かせ続けるために、"礼文島リボンプロジェクト"として自然保護資金の寄付を募っていた。せめてもの罪滅ぼしのためにノッてしまった。





明日は、北海道本島に戻り、サロベツ原生花園を訪ねる。


