利尻礼文サロベツ花紀行3 – 林道コースはニ面相
■礼文林道コース
礼文島2日目の午前中は、礼文林道コース。と…言っても香深の北にある登山口からレブンウスユキソウ群生地まで行って引き返す楽チンコース。林道コースを進み、やがて稜線に達すると、西側はお花畑、東側は笹原が続く。強い寒気を含む北西風が西海岸に吹付け、笹の根を凍らせるため、西側には笹が育たないそうだ。ところが笹原の下方には、松などの人工林が広がっている。これが自然環境に変化をもたらすことがあるのだろうか、少し心配だ。天候は霧で視界は悪く、眼鏡も曇りがち。レブンウスユキソウ群生地付近では、強烈な風によってハイマツの枝がなびいたまま成長していた。少し霧が薄くなると、眼下に元地港や、その北に海岸にそびえ立つ地蔵岩などが展望できた。




■出会えた植物たち
レブンシオガマ(礼文塩竈、ハマウツボ科シオガマギク属、Pedicularis chamissonis var. rebunensis)は、礼文島の固有種で、イネ科の植物に半寄生する多年草の高山植物。道外にも分布し葉が4枚ずつ輪生するヨツバシオガマの変種だが、本種は葉が5~6枚輪生する。草丈は50cm程度まで直立し、長い穂状花序を伸ばして薄紫色の小花を多数咲かせるので、草原の中では良く目立つ。


トウゲブキ(峠蕗、キク科メタカラコウ属、Ligularia hodgsonii)は、北海道、福島県や山形県、千島、樺太などの自生する多年草。 葉はフキのような円形で基部は心形、直立した茎の先に黄色い数個の頭花をつける。花期は盛夏なので未だ花はなく、見過ごしてしまいそう。

オオウバユリ(大姥百合、ユリ科ウバユリ属、Cardiocrinum cordatum var. glehnii)は、北海道や本州の中部以北、樺太、南千島に自生する多年草。道外にも自生するウバユリの変種だが、大型で草丈は2mにもなる。盛夏に多数の緑白色の花をつける。今回見たのは、立ち枯れして翌年まで残った株だ。

コケイラン(小蕙蘭、ラン科コケイラン属、Oreorchis patens)は、ササエビネの別名があり、桃岩コースにもあった。ちょうど、花は見頃だった。

ホウチャクソウ(宝鐸草、イヌサフラン科チゴユリ属、Disporum sessile)は、アジア大陸の東端に広く分布しチゴユリ属に分類される多年草。関東地方でもよく見かける。花の形がキジカクシ科のアマドコロやナルコユリに似ているが、6枚の花被片が合着せず、寺院建築の軒先に宝鐸に似ている。花期の最中だが、何故か花の数は少ないようだ。

ツボスミレ(坪菫、スミレ科スミレ属、学名 Viola verecunda A. Gray)は、東アジアに広く分布する多年草。ニョイスミレ(如意菫)の別名があり、ごく小型で、長く茎を出し、白い花をつけ、葉はハート形。関東地方では春に開花するが、利尻島では今が盛りのようだ。

マイヅルソウ(舞鶴草、キジカクシ科マイヅルソウ属、Maianhemum dilatatum)は、ユーラシア北東部や北アメリカ北西部に分布する高山植物の多年草。利尻島の姫沼にもあった。ここでは花期を迎え、大きな葉が敷き詰められた上に花序が飛び出し、群生をつくっていた。

ギンラン(銀蘭、ラン科キンラン属、Cephalanthera erecta)は、地生ランの多年草。利尻島でも咲いていた。関東地方では、ほぼ同時期に咲くキンランとギンランを伴に観賞するのが春の楽しみだが、北海道にはキンランは自生していないようだ。

サイハイラン(采配蘭、ラン科サイハイラン属、Cremastra appendiculata var. variabilis)は、日本では全国区の多年草。花序の形が、戦場で指揮官が兵を指揮する采配に似ているためこの名がある。関東地方にも多く、最盛期には多数の半開きの花が下向きにつくが、ここでは未だ成長の過程のようだ。

シャク(杓、セリ科シャク属、Anthriscus sylvestris)は、全国に分布する多年草。この地域ではよく見かけ、利尻島にもあった。大形のセリ科の植物はゴツい物が多いが、本種はアンバランスな花弁の形状や、薄く細かく裂けた葉などが繊細で、区別が容易。

エンレイソウ(延齢草、シュロソウ科エンレイソウ属、Trillium smallii)は、日本では北海道から九州に、東アジアではサハリンや南千島に自生する多年草。開花すると、3枚の萼片、3枚の大きな葉を持つ。本種は花弁はないが、近縁種のミヤマエンレイソウやオオバナノエンレイソウは3枚の花弁を持つ。


ミヤマエンレイソウ(深山延齢草、シュロソウ科エンレイソウ属、Trillium tschonoskii Maxim.)は、日本の在来種であり、東アジアにも分布する多年草。近縁種のエンレイソウとの相違は、3枚の花弁があること。花期は5月で、花弁の色は本来は白だが、枯れ始めたためか褐色を帯びている。


バイケイソウ(梅蕙草、ユリ目シュロソウ科シュロソウ属、Veratrum oxysepalum var. oxysepalum)は、桃岩コースの草原にもあったが、木々が並ぶ林道の脇にもあった。草丈が人の背程あるので、良く目立つ。

エゾニワトコ(蝦夷接骨木、ガマズミ科ニワトコ属、Sambucus racemosa ssp. kamtschatica)は、北海道と本州中部以北に自生する落葉広葉樹。ニワトコの亜種と言われ、樹高も高く、葉も大きく、小葉は丸く、花がより密に付くらしい。現在は、花が終わりに近づき、緑色の若い果実が出来始めたところ。秋には赤く熟す。

クルマバソウ(車葉草、アカネ科ヤエムグラ属、Galium odoratum)は、利尻島にも桃岩コースにもあった。小さいので、他の植物の葉に隠れることが多いが、群生すると存在感が増す。

レブンコザクラ(礼文小桜、サクラソウ科サクラソウ属、Primula farinosa subsp. modesta var. matsumurae)は、礼文島に自生する多年草。ユキワリソウの変種で、本種の方が全体に大きく、一つの花茎に10個前後の花がつく。花期が過ぎた個体が多かった。

イワベンケイ(岩弁慶、ベンケイソウ科イワベンケイ属、R. rosea L.)は、世界的には亜寒帯、日本では北海道から中部地方に自生する多年生草本。雌雄異株で多肉質の葉を持つ。この写真の花は黄色く雄蕊が飛び出しているので雄株。雌株の花は黄緑色で、果実は赤く熟す。

ハクサンチドリ(白山千鳥、ラン科ハクサンチドリ属、Dactylorhiza aristata)は、桃岩コースにもあった。この時期には、島内では良く見かける。

サクラソウモドキ(桜草擬、サクラソウ科サクラソウモドキ属、Cortusa matthioli var. sachalinensis)は、桃岩コースにもあったが、ここでは藪の中で群生していた。

キジムシロ(雉筵、バラ科キジムシロ属、Potentilla fragarioides)の分布は、礼文島のみならず、全国区。旅先で見知った友人に遭遇した気分だ。

エゾニュウ(蝦夷丹生、セリ科シシウド属、Angelica ursina)の花期は、盛夏。桃岩コースで見た個体は未だ花序は出ていなかったが、ここでは葉に包まれた蕾を見ることが出来た。

シラゲキクバクワガタ(白毛菊葉鍬形、オオバコ科クワガタソウ属、Veronica schmidtiana subsp. schmidtiana f. candida)は、北海道、サハリン等が原産の多年草。崩れた砂礫地に生えるパイオニア植物。茎の先に総状花序をつくり、4裂した紫色の花冠を持ち濃紫色の斑紋がある花を咲かせる。雌蕊1本と雄蕊2本が突き出る。ややこしい名前は、全体に毛が多く、葉が菊のように羽状になっているクワガタソウの一種だから。


イワツツジ(岩躑躅、ツツジ科スノキ属、Vaccinium praestans)は、北海道や本州の亜高山帯に隔離分布する落葉性の矮小性の低木。樹木の大きさは精々15cm程度で、小さな花は葉に隠れて見つけ難い。花は釣鐘状で先が5裂し淡紅色、葉は緩い楕円形。

レブンハナシノブ(礼文花忍、ハナシノブ科ハナシノブ属、Polemonium caeruleum ssp. laxiflorum f. insulare)は、礼文島のハイキングコースでは、草丈も高く鮮やかな紫色の花なので、目にする機会が多い。

ツマトリソウ(褄取草、サクラソウ科オカトラノオ属、Trientalis europaea)は、日本では北海道と本州の中部地方以北に分布する多年草。花冠は7裂し周辺が、薄いピンク色で縁取り(褄取り)されることがある。葉は広披針形で先が尖り互生する。

オオヤマフスマ(大山衾、ナデシコ科ノミノツヅリ属、Arenaria lateriflora)は、北半球の温帯に広く分布する普通の多年草。花茎は1cm程度で、花弁は白色で5弁、葉は緩い楕円形。小さくて目立たないためか、ヒメタガソデソウ(姫誰が袖草)の別名もある。ツマトリソウと混在していると、花弁数で区別できる。


レブンウスユキソウ(礼文薄雪草、キク科ウスユキソウ属、Leontopodium discolor)は、日本では礼文島以外は道内の何か所かで隔離分布する多年草の高山植物。別名はエゾウスユキソウ(蝦夷薄雪草)。毛で白く見える葉を薄く積もった雪にたとえて名がついた。ヨーロッパに分布するエーデルワイスの仲間でもある。開花すると、星状につく苞葉の中に、黄色い頭花が連なる。しかし、レブンウスユキソウの群生地であっても花期には少し早く、露に濡れるた白くなりかけた若い株を眺めるのみ、残念。

ネムロシオガマ(根室塩竈、ハマウツボ科シオガマギク属、Pedicularis schistostegia)は、花期を迎えたためか、礼文林道コースでも良く見かけた。ただ、花序の下方から枯れ始めた個体も散見し、余り長持ちしないようだ。

タカネナナカマド(高嶺七竃、バラ科ナナカマド属、Sorbus sambucifolia)は、日本では北海道と本州の中部地方以北の高地に生育する落葉低木。葉は奇数羽状複葉で、枝先に複散房花序をつくって紅色を帯びた多数の白い花をつける。ちょうど見頃だった。秋には、果実は赤く熟成する。


ナナカマド(七竈、バラ科ナナカマド属、Sorbus commixta)は、日本全国の山地に自生するバラ科の落葉樹。タカネナナカマドと同様に、葉は奇数羽状複葉で、複散房花序をつくり多数の5弁花をつける。花の色は白で、今が咲き始め。果実は赤く熟して美しいので、北海道では街路樹にもなっている。

アサギリソウ(朝霧草、キク科ヨモギ属、Artemisia schmidtiana)は、北海道、東北、北陸、樺太、南千島の高山や海岸の岩場に分布するの多年草。名は、細かな毛で覆われた白い姿を朝霧にたとえて。秋になると枝が伸びて黄色い花をつけるが、今は針のような細かな葉が広がっているが、霧の水滴を貯めて美しい。

レブンイワレンゲ(礼文岩蓮華、ベンケイソウ科イワレンゲ属、Orostachys furusei)は、礼文島と知床山系に自生する常緑の多年草。現在は多肉質の葉でロゼットを形成しているだけだが、秋には中心にから花茎を伸ばして総状花序を付け、多数の黄緑色がかった白い花をつける。一度は見てみたいものだ(2026年7月5日追加)。

次は礼文島北部をハイキングする。


