キササゲ - 謎を秘めた外来樹
キササゲ(木大角豆)は、ノウゼンカズラ科キササゲ属の落葉高木。中国原産で、日本に渡来したのは奈良時代以前説と、江戸時代初期説がある。前者は”万葉集”に詠まれた久木(ひさぎ)が本種であり、後者は貝原益軒の"大和本草"(1709年)に梓として登場したものが根拠らしいが、今となっては真偽は不明。日本では薬用植物として栽培され、果実は利尿剤などの生薬"梓実(しじつ)”として利用されたが、次第に野生化もし庭木にもなって、現在では日本全国に分布している。また、キササゲは”雷電木”とも呼ばれ、神社仏閣や屋敷内に植えると雷除けになるとの説もあるが根拠は不明、樹高が10mを超えることもあるので避雷針代わりになるのだろうか。そう言えば、所沢市の荒幡浅間神社の本殿横にも植えられていた。名称のキササゲは、果実が野菜のササゲ(大角豆)に似ており、束になって枝にぶら下がるのでキササゲ(木大角豆)と呼ばれる。キササゲの見所は、この秋の果実の姿と、初夏の漏斗状で淡い黄色の花だ。夏に鮮やかなオレンジ色の花を咲かせるノウゼンカズラ(凌霄花)よりは地味だが、同じノウゼンカズラ科だけあって、花の構造は良く似ている。日本の文化の中では、薬用や観賞樹、雷除け信仰で馴染みはあるが、万葉集などに登場する梓の正体は、実はアカメガシワやミズメだとの説もある。馴染み深い一面はあるものの、外来種らしく謎を秘めた面も併せ持っている。

【基本情報】
・名称:キササゲ(木大角豆、楸、木豇)
・別名:アズサ(梓)、ライデンボク(雷電木)
・学名:Catalpa ovata
・分類:ノウゼンカズラ科 キササゲ属の落葉高木
・原産地:中国
・分布:日本では、北海道から九州まで
・花言葉:強い愛情、持続の愛、夢心地
■生態
キササゲは雌雄同株。幹は地面から真っ直ぐに伸び、枝は少ないが横に広がって自然な樹形になり、樹木内の風通しは良い。幹の樹皮は灰褐色で木目があり、成長すると縦に裂け目が入る。冬には、葉痕と冬芽がつく。これらの位置関係は、葉痕の上に冬芽があり、このセットが枝に対し3輪生、もしくは対生する。キササゲの葉柄が太いためか葉痕は大きく、維管束痕は10個を超える。冬芽は芽鱗が10個程度あり、半球形をしている。新緑の頃には、冬芽が展開し若葉が現れる。葉柄は長く、葉は大きな広卵形で浅く3~5裂し、鋸歯はなく、先端が尖る。葉のつけ根に濃紫褐色の蜜腺がつくものもある。葉痕と同様に、葉は枝に3輪生、または対生する。








■花
花期は初夏で、樹冠を覆うように薄黄色の花を多数つける。枝先から円錐花序が立ち上り、漏斗形の花を多数つける。花冠は5裂して唇形になり、縁が縮れ、2つの半球形の萼が支える。正面から見ると、暗紫色の班紋と下方の2本の黄色い線が目立つ。花は両性花で、虫媒花。花の構造は、雌蕊が1本、雄蕊は葯付きが2本、葯無しが3本らしいが、花冠が奥深いせいか判然としない。昆虫は、花の黄色い2本のガイドと、中央の濃い暗紫色の班紋を目指して頭を突っ込むと、花冠上部の2つの葯に接触する仕組みのように思う。花の時期には、蕾、花、若い果実が混在して、それぞれが成長していく。






■果実
花期が終わり、花が落ちると、細長い若い果実が成長を始める。果実は線形の蒴果で、長さが30cm程もあり、枝から多数が垂れ下がる。果実は始めは緑色だが、成熟するにつれ果皮は褐色に変化する。やがて、果実は縦に裂け、中から多数の種子が現れる。種子は扁平な長惰円形で、両端に長い軟毛が密生し、風で拡散する。裂けた果皮は、冬芽が出来る頃や、新緑の頃にも枝に残っていることもある。繁殖は実生によるものと、植栽では挿し木による方法がある。







■キササゲと日本人
現代に生きる日本人にとって、キササゲとの接点は何だろうか? 迷信や信仰に近い側面もあるが、長い歴史をもつ薬用植物としての存在が重要と思う。長野県松本市の地方新聞Web版に"聖南中、全校でキササゲの実収穫"という記事が掲載されていた(詳細はここをクリック)。筑北村の聖南中学校では、敷地南隣に林立しているキササゲの実の収穫作業を例年全校的に実施しているとのこと。キササゲの収穫は、最初は農家が、その後は地元のNPOが引き継ぎ、聖南中学校の生徒もこの活動に参加している。この地域一帯には古くからキササゲが自生しており、昭和36年の水害時にはキササゲ林が水流を弱め一帯の被害を軽減したという。キササゲが郷土の連帯や経済活動に寄与しているようで感慨深い。


