キョウチクトウ - 美しさ、強さ、危険が隣り合わせ
キョウチクトウ(夾竹桃)は、キョウチクトウ科キョウチクトウ属の常緑低木。インド原産で、日本には観賞樹として江戸時代中期に渡来した。また、同属にセイヨウキョウチクトウ(西洋夾竹桃)と呼ばれ、地中海沿岸を原産とし明治時代に渡来した種がある。両者の間には、香りの強弱、花の形や色に相違があると言われているが明確に区別ができず、園芸ビジネスの世界では兎も角、植物学上は一属一種として扱われている。名の由来は、葉が竹に似ていて、花が桃に似ていると中国人が考えたため。
日本では、花の少ない盛夏に、代表的な八重の桃色や一重の白の他、赤、黄色などの花も咲き、竹のような葉が繁る枝先に鈴生りに花が連なる風景は、鮮烈であり異国風でもあり、鑑賞樹として高く評価されるのは良く理解できる。また、大気汚染や乾燥などの環境にも強く、高速道路沿いの植栽や、かつての公害都市川崎市の緑化樹となったり、被爆地の広島市でも焼土にいち早く花を咲かせたため復興のシンボルにもなっている。
しかし、キョウチクトウには強い毒性があり、危険な植物でもある。誤って口に含むと嘔吐や下痢などの症状が出る。枝を串焼きに使って死亡事故が起きたり、飼料にキョウチクトウの葉が混入して乳牛が死んだり、葉を刻んで味噌汁に入れた殺人未遂事件など、トラブルには事欠かない。このため、長崎県佐世保市では市の花に指定されていたが、毒性を理由として指定が解除された。身の回りでも、最近は公園や緑道にあったキョウチクトウの株は伐採され、随分と数が減ったように思う。
生態的にも風変わりな点がある。花の構造が特殊で蜜も少ないので昆虫が集まらず、自家不和合性があるキョウチクトウは、日本の挿し木によるクローン栽培では、結実することもは稀なようだ。

【基本情報】
・名称:キョウチクトウ(夾竹桃)
・別名:ミフクラギ(目膨木)、半年紅
・学名:Nerium oleander var. indicum
・分類:キョウチクトウ科 キョウチクトウ属の常緑低木
・原産地:不詳、地中海沿岸地域や中東、インドなどと推定されている
・分布:日本には江戸時代中期に、中国より渡来
・花言葉:危険な愛、用心、油断大敵、たくましい精神、心の平和
■生態
キョウチクトウは雌雄同株の常緑樹で、花は両性花のみ。樹形は、枝が分岐して広がり、こんもりとした姿になり、樹高は3~5m程度。幹は数本が地面から立ち上がり、株立ち状に伸びる。樹皮は灰褐色で、表面には小さな斑点がある。冬には枝先には冬芽がつき、葉も繁っている。葉の形は長楕円形で先端が尖り、葉縁は滑らかで、表面には光沢がある。葉はつき方は特殊で、枝の節から3枚ずつ生える"3輪生”が多い。






■花
春になると花茎が伸び、分岐した茎の先にも蕾がつき、集散花序を形成する。若い蕾は、深く5裂した萼片に包まれているが、開花が近づくと蕾の色が花冠の色に変化していく。一重咲きの花では、花冠は基部が筒状で先端が5裂し、中央にヒラヒラの副花冠に囲まれた葯の付属物が見える。八重咲きの花でも、花冠の構造以外は一重咲き種と同じだ。雌蕊の柱頭は雄蕊の花糸に囲まれていているので外からは見えず、ふわふわの葯の付属物のみが外に飛び出している。






キョウチクトウは園芸種でもあるため、様々な色や咲き方のバリエーションがある。良く見かける赤と黄色の花を挙げておく。


■果実
日本では稀にしかキョウチクトウの果実が出来ないので、残念ながら未だ実際に見たことはない。長い鞘のような形状で、その中に褐色の長い毛がついた多数の種子が含まれ、風によって拡散する風媒花とのことだ。
■キョウチクトウと日本人
キョウチクトウが渡来した江戸時代には、観賞植物として美しさを愛でられ、第2地世界大戦後の復興期や公害をも生んだ高度成長期には力強いシンボル樹として賞賛され、世の中が落ち着いてくると内在する有毒性が注目され危険な植物になってしまった。人の評価基準は時代の風潮によって変化するのは仕方ないけど、人の手に依存して生きる宿命を負っているキョウチクトウにとっては、日本で生存を続けられるか否かは、ひとえに日本人の意思にかかっている。結構、難しい選択だと思う。


