コナラ - 里山の気になる木

 コナラ(小楢)は、ブナ科コナラ属の落葉高木。日本の里山や雑木林に自生する代表的な樹木。材質の強度が高く、美しい木目を特徴とする楢の木は、大柄なミズナラ(水楢、別名:大楢)と、やや小振りなコナラ(小楢)が代表格で、この対比によって本種の名が定着したとの説が理解し易い。コナラは、萌芽更新が容易で定期的な伐採に適しており、樹液が様々な昆虫を集めるので、里山の生態系を維持する存在になっている。資源としては、薪炭材やシイタケ栽培のほだ木、重厚な木質のため家具や漆器の素地になどもなる。また、果実は絵に描いたようなドングリであり、子供達のおもちゃとして人気がある。随分と身近な存在になっているコナラだが、生態的には、根につく菌類による生育のための光合成との共生作用、風による花粉の媒介、ドングリの重力落下のみならず鳥や小動物による種子拡散など、様々な因果関係によって人里近くに繁殖するようになったようだ。ところがつい最近、ある昆虫が媒介する菌によって集団枯死する"ナラ枯れ病"が発生し、感染阻止のため多くのコナラが伐採されている。環境の変化に対しても強く生き抜いてきた樹木なだけに、この先どうなるのか、気になる木だ。

コナラの果実 (‎2024‎年‎9‎月‎21‎日 航空公園)

【基本情報】
 ・名称:コナラ(小楢)
 ・別名:ハハソ(柞)、ナラ(楢)
 ・学名:Quercus serrata
 ・分類:ブナ科 コナラ属の落葉高木
 ・原産地:日本を含む東アジア(朝鮮半島、中国、台湾)
 ・分布:日本では、: 北海道南部から本州、四国、九州までの山野や里山に自生
 ・花言葉:勇気、快活、独立

■生態
 雌雄同株の落葉高木。樹形は、自然のままの自生株だと幹が直立し樹冠は箒状に広がり球形に近くなるが、里山で薪炭材として繰り返し伐採されると、萌芽更新により根元から複数の幹が再生して株立ちの状態になる。幹の樹皮は灰褐色で、不規則な深い縦模様があるのが特徴だ。春になると、枝先の冬芽が膨らみ、新しい葉と花序が同時に展開を始める。葉が若いうちは細かな毛が密集して表面が銀色を帯びるが、成長するにつれ消えていく。葉には短い葉柄があり、枝に互生する。葉の形は、長楕円形の倒卵状で、先端が尖り、葉縁には鋸歯がある。秋には紅葉し、始めは黄色、次第に朱色に変化するが、陽の当たり方などの環境によっては局所的に疎らに色は変化する。紅葉の時期には、既に葉の腋に濃赤褐色で卵形の冬芽が出来ている。

樹形は、自然のままだと幹が直立するが、里山で再生萌芽した個体は株立する (‎‎2026‎年‎4‎月‎8‎日 昭和記念公園)

幹の樹皮は灰褐色で、不規則な深い縦模様がある (‎2025‎年‎4‎月‎9‎日 所沢市)

春になると、枝先の冬芽が膨らみ展開を始める (‎‎2026‎年‎3‎月‎24‎日 所沢市)

やがて、新しい葉や花序が姿を現す (‎‎2025‎年‎3‎月‎30‎日 所沢市)

葉が若いうちは細かな毛が密集して表面が銀色を帯びるが、やがて消える (‎‎2026‎年‎4‎月‎8‎日 昭和記念公園)

葉には短い葉柄があり、枝に互生するが、先端部は集中傾向がある (‎‎‎2026‎年‎5‎月‎2‎日 所沢市)

葉の形は、長楕円形の倒卵状で、先端が尖り、葉縁には鋸歯がある (‎‎2025‎年‎6‎月‎6‎‎日 所沢市)

秋には紅葉し、始めは黄色、次第に朱色に環境によって局所的に変化する (‎‎‎2001‎年‎11‎月‎24‎日 昭和記念公園)

紅葉の時期には、葉の腋に濃赤褐色で卵形の冬芽が出来ている (‎‎‎2001‎年‎12‎月‎24‎日 所沢市)

■花
 コナラの花は、同じ株に雄花と雌花がつき、両性花は存在しない。春になると、葉の展開と同時に、長い雄花序が新しい枝の葉の腋から垂れ下がり開花する。長い雄花序には多数の雄花が連なるが、個々の雄花の花被は短く、雄蕊は数本あり、雌蕊は見当たらない。一方、雌花序は小さく、枝先の葉の腋から出て総苞に包まれた数個の雌花をつける。雄花と比べると、地味で目立たない。

葉の展開と同時に、長い雄花序が新しい枝の葉の腋から垂れ下がり開花する (‎2014‎年‎4‎月‎25‎日 昭和記念公園)

長い雄花序につく雄花は、花被は短く、雄蕊は数本、雌蕊は見当たらない (‎‎2026‎年‎4‎月‎8‎日 昭和記念公園)

雌花序は小さく、枝先の葉の腋から出て総苞に包まれた数個の雌花をつける (‎‎2026‎年‎4‎月‎8‎日 昭和記念公園)

■果実
初夏になると、雌花は小さな若い果実になる。秋になると、果実は成長して膨らみ、所謂ドングリになる。果実は堅果で、鱗模様の帽子のような殻斗(かくと)に支えられている。果実は熟すと茶色になり、殻斗を枝に残して地面に落下したり、鳥や小動物によって拡散する。冬に果皮が破れ、発芽して根を伸ばすものもある。春になると、ドングリの栄養を使って、根と上胚軸を伸ばし、実生の苗が育つ。人為的に伐採された場合でも、根元から若芽が出て、萌芽更新されるケースが多い。

初夏になると、雌花は小さな若い果実になる (‎2024‎年‎6‎月‎8‎日 所沢市)

秋になると、果実は成長して膨らみ、所謂ドングリになる (‎2024‎年‎9‎月‎21‎日 航空公園)

果実は堅果で、鱗模様の帽子のような殻斗に支えられている (‎2024‎年‎9‎月‎21‎日 航空公園)

果実は熟すと茶色になり、殻斗を枝に残して地面に落下したり、鳥や小動物によって拡散する (‎‎‎‎2025‎年‎3‎月‎21‎日 所沢市)

冬に果皮が破れ、発芽して根を伸ばすものもある (‎‎‎‎2025‎年‎3‎月‎21‎日 所沢市)

春になると、ドングリの栄養を使って、根と上胚軸を伸ばし、実生の苗が育つ (‎‎‎‎‎2015‎年‎5‎月‎3‎日 日和田山)

人為的に伐採された場合でも、根元から若芽が出て、萌芽更新されるケースが多い (‎‎‎2026‎年‎5‎月‎2‎日 所沢市)

■コナラと日本人
 コナラは日本の自生種であり、縄文時代には重要な食料資源として、ドングリのアク抜きの工夫をしながら利用した。やがて、日本人が定住生活に移行すると住居の近くにコナラなどを植栽し、薪や炭などのエネルギー源として利用し、樹液などを媒介とした小動物との共生も含め、里山における循環型のエコシステムを維持してきた。
 ところが近年は、里山の樹木をエネルギー源として利用することがなくなり、樹木は放置されたまま成長し、幹が太くなった老木が増えてきた。これが、カシノナガキクイムシの格好の繁殖環境になり、"ナラ枯れ病"が蔓延した。カシノナガキクイムシは体長5mm程度の昆虫で、養菌性キクイムシと呼ばれるグループに属し、大径木の内部にトンネルを掘って棲息する。そのトンネルの内壁に繁殖した菌類を食べて生活しているが、この菌は"ナラ菌"と呼ばれるカビであり、カシノナガキクイムシはこれを他の木にも運び、コナラなどが集団枯死する。ナラ枯れ病が発生すると、その樹木の周辺には細かな木屑が散乱し、葉が落ち、太く高い枯れた木が残る。感染の拡大と倒壊の危険性を排除するには、重機を使って伐採せざるを得ず、森林の風景がすっかり変わってしまった。この樹木の感染症は、日本人の生活様式の変化の産物であり、予期せぬ現象だったが、改めて森林管理の重要性を再認識した。