ボケ - 洗練された帰化植物

 ボケ(木瓜)は、バラ科ボケ属の落葉低木。このボケの名称は、果実の形が瓜に似ているので、木になる瓜"木瓜"で、もけ、または、ぼっけが転訛したとの説がある。中国原産で、平安時代に日本に渡来し、観賞用に栽培された。ボケと言えば、早春になると鈴なりに枝に連なる華やかな花と、秋に結実する歪な形をした果実が目に浮かぶ。原種は緋色の5弁の花だったようだが、大正時代に品種改良が進み、現在では花の色は赤や白、紅白混交のもの、また八重咲きのものまで多くの品種が創り出された。また、果実は観賞的には見飽きることはない個性的な形をしているが、実用的には木瓜(もっか)と呼ばれる生薬になるばかりでなく、ジャムや果実酒として食用にもなる。ボケは、日本人にとってはすっかり馴染み深い植物になってしまった。一方で、日本には同属で在来種のクサボケがある。生態は類似しているが、花は緋色で、枝は横に這うような低木で、確かに見映えが良いとは言えない。時として、人間の審美眼は容赦はなく、植物の運命を決めてしまうこともある。

ボケの花 (‎‎‎‎2012‎年‎4‎月‎1‎日 所沢市)

【基本情報】
 ・名称:ボケ(木瓜)
 ・別名:カラボケ(唐木瓜)、マボケ(真木瓜)
 ・学名:Chaenomeles speciosa
 ・分類:バラ科 ボケ属の落葉低木
 ・原産地:中国大陸
 ・分布:日本には平安時代に帰化し、本州以南で観賞用として栽培
 ・花言葉:先駆者、早熟、平凡

■生態
 ボケは、樹高は2m程度までの落葉低木で、雌雄同株。幹は密集して株立し、枝分かれが多いので、樹形は自然に丸く広がる。地面から株立した幹の樹皮は、年季が入ると灰褐色から灰色に変化し、皮目がある。若い枝の樹皮は、滑らかでやや黒ずんだ褐色。葉のつき方は、枝の頂芽以外の芽から出る葉は束生し、前年のものはトゲとして残る。一方、幹や枝先の頂芽から伸びる長い枝には、托葉のある葉が互生する。葉は硬質で光沢があり、形は楕円形で葉縁には細かな鋸歯がある。

ボケは幹は密集して株立し、枝分かれが多いので、丸い樹形になる (‎‎2014‎年‎4‎月‎9‎日 所沢市)

株立した幹の樹皮は、年季が入ると灰褐色から灰色に変化し、皮目がある (‎‎‎2026‎年‎1‎月‎31‎日 東京都薬用植物園)

幹の頂芽以外の芽から出る葉は束生し、前年のものはトゲとして残る (‎‎2014‎年‎3‎月‎29‎日 所沢市)

幹や枝先の頂芽から伸びる長い枝には、托葉のある葉が互生する (‎‎‎2014‎年‎4‎月‎9‎日 所沢市)

葉は硬質で光沢があり、形は楕円形で葉縁には細かな鋸歯がある (‎‎‎2006‎年‎3‎月‎26‎日 所沢市)

■花
 早春になると、古い枝にも昨年伸びた新しい枝にも、互生して冬芽が並ぶ。先ず花芽が膨らんで蕾となり、その後に葉芽が成長する。蕾になると、次第に花被片が色づいていく。ボケの花色は、大別して3通りあり、原種を引き継ぐ緋色のもの(緋木瓜)、品種改良で生まれた白色のもの(白木瓜)、そして紅白が入り混じったもの(更紗木瓜)だ。また、花被片は通常5枚だが、品種改良によって八重咲きになったものもある。満開の様々な色や形のボケの花を見ていると、ピンク一色のサクラとは異なり、絢爛豪華な印象を与える。ボケの花期は桜の時季と重なるが、品種によっては晩秋に咲く寒ボケもある。

早春には、新しい枝に冬芽が並ぶ、先ず花芽が膨らむ (‎‎‎‎2026‎年‎2‎月‎15‎日 昭和記念公園)

花芽が蕾になると、花被片が色づく (‎‎‎‎2021‎年‎3‎月‎4‎日 所沢市)

ボケは園芸種であり、開花すると花の色も多種多様 (‎‎‎‎‎2023‎年‎3‎月‎27‎日 所沢市)

赤花の品種は、ヒボケ(緋木瓜)と呼ばれ、原産種 (‎‎‎‎‎‎2012‎年‎4‎月‎8‎日 所沢市)

白花の品種は、シロボケ(白木瓜)と呼ばれる園芸種 (‎‎‎‎‎‎‎2013‎年‎3‎月‎24‎日 所沢市)

紅白が入り混じった品種は、サラサボケ(更紗木瓜)と呼ばれる (‎‎2012‎年‎4‎月‎1‎日 所沢市)

色の相違の他に、花被片が通常の5枚より多い八重の品種もある (‎‎2014‎年‎4‎月‎8‎日 所沢市)

秋に咲く寒ボケの花は、見た目は春咲きのものと区別はつかない (‎2006‎年‎10‎月‎15‎日 所沢市)

 ボケの花は、生態的には同じ株に両性花と雄花が存在する。両性花は、5本の雌蕊と多数の雄蕊があり、受粉すると果実ができる。また、雄花には雌蕊はなく雄蕊のみで構成されるので、両性花の雌蕊に花粉を供給するが、雄花は結実せずに、やがて枯れ落下する。両性花では雄蕊と雌蕊が隣接しているので、雄性先熟の傾向があるのかもしれない。

両性花は、5本の雌蕊と多数の雄蕊があり、受粉すると果実ができる (‎‎2011‎年‎5‎月‎8‎日 所沢市)

同上、両性花の中心部の詳細 (‎‎‎2012‎年‎3‎月‎24‎日 所沢市)

雄花には雌蕊はなく雄蕊のみで構成され、やがて花は結実せず枯れ落ちる (‎‎2012‎年‎4‎月‎22‎日 所沢市)

同上、雄花は上から見ると葯だけが目立つ (‎‎‎2011‎年‎4‎月‎3‎日 所沢市)

■果実
 両性花が受粉すると、次第に子房が膨れ、果実へと成長していく。果実の構造は、子房ばかりでなく花の基部である花托が発育した仁果に分類され、果肉部分の中心に芯があり、その中に種子ができる。同じバラ科のリンゴに似ている。しかし、果実は硬くて渋いので生食はできないが、薬用になる。果実の形は、バラ科のカリンに似ているが、形や大きさは様々で、なかなか個性的だ。秋になると成熟して果皮が黄色味を帯び、やがて落下する。場合によっては、冬を越して翌春まで枝に残ることがある。ボケの繁殖方法としては、この種子による実生の他、園芸植物として一般的な、挿し木や根伏せ(太い根を切って埋める)がある。

両性花が受粉すると子房が膨れ、果実に成長していく (‎‎‎‎2023‎年‎5‎月‎28‎日 東京都薬用植物園)

果実は花托が発育した仁果に分類され、硬くて渋いので生食はできないが、薬用になる (‎‎‎‎‎2023‎年‎6‎月‎21‎日 東京都薬用植物園)

果実は形や大きさは様々で、個性的 (‎2013‎年‎11‎月‎3‎日 所沢市)

秋になると成熟して果皮が黄色味を帯び、果肉の中に種子ができる (‎‎‎‎2013‎年‎10‎月‎14‎日 所沢市)

果実は冬を越して、翌春まで枝に残ることがある (‎‎‎‎2026‎年‎2‎月‎15‎日 昭和記念公園)

■近縁種 クサボケ
 クサボケ(草木瓜、学名:Chaenomeles japonica)は、ボケと同様にバラ科ボケ属の落葉低木。ボケと比較すると、樹高は1m以下と低く幹は横に広がって小さく見えるため、木本だが草本に見立ててクサボケと呼ばれる。日本で唯一自生するボケ属だが、基本的な生態はボケと類似する。花の色は緋色が基本だが、品種改良が進み、黄色や白、八重咲きの品種や、果ては矮性の園芸品種"長寿梅"が盆栽になったりする。

クサボケの樹高は1m以下で、幹は横に広がるので、ボケと比べると小さく見える (‎‎‎‎‎2014‎年‎6‎月‎13‎日 川越市)

クサボケの花 (‎‎‎‎‎2023‎年‎4‎月‎11‎日 東京都薬用植物園)

クサボケの果実 (‎‎‎‎‎‎2023‎年‎10‎月‎6‎日 東京都薬用植物園)

■ボケと日本人
 ボケの果実は、伝統的には生薬木瓜(もっか)として、補血、強壮、疲労回復、咳止め、食あたりのほか、筋肉のひきつり(腓返り)、暑気あたりに効用があるといわれている。最近、機能食品を開発している林兼産業が、食品開発展2025で"新しい認知機能サポート素材・ボケ果実抽出物"を発表した(概要はここをクリック)。同社では、認知症予防素材の探索を目的として、アミロイドβ凝集阻害活性や神経伝達物質分解酵素阻害活性などの複数の作用機序をもつ素材のスクリーニングを行い、ボケ(木瓜)を見出し、その抽出物の販売を開始する計画だ。これに伴い、同社ではインビトロ試験、認知症モデルマウス試験においてボケ果実抽出物の認知症予防効果が示唆されたことから、機能性表示に向けて認知機能改善効果に関する臨床試験の準備をしている。
 未だ、商用化には段階を踏む必要はあるが、ボケを以てボケを制する時代が来るのかもしれない。