ベニバナボロギク - 不憫な美しい野の花
ベニバナボロギク(紅花襤褸菊)は、キク科ベニバナボロギク属の一年草で、アフリカが原産地。日本には、第2次世界大戦後の1950年頃に福岡で見つかり、現在では北は東北地方、南は沖縄まで自生している帰化植物。戦前の台湾では、既に帰化が確認され、現地の日本兵が"昭和草"とか"南洋春菊"と呼んで、春菊に似た野菜として食用にした。名の由来は、やはり帰化植物のダンドボロギク、ノボロギクに似た姿をしている赤い花なので紅花襤褸菊となったと言う説と、種子の綿毛の様子がボロ布のように見えるという説があるが、何れにせよ悲惨な名前をつけられた。新参者の雑草のためだろうか。生態的な特徴としては、森林伐採地や山火事の跡、林縁、道端などに一斉に出現するパイオニア植物であり、元の植生が戻ると姿を消す。環境省の侵略的外来種リストには掲載されているが、"その他の検討対象種"の範疇に留まっている。ベニバナボロギクは菊の仲間だが、筒状花を束ねた頭花の先端だけが赤味を帯びるので、良く目立つ。また、花の時期は夏から初冬までと長く、花茎には常に蕾や花、果実が存在し、賑やかだ。野の花としては見応えがあるが、新参者の帰化植物を愛でる文化は、日本にはない。海外では、人間の食用や家畜の飼料として重宝されているのだが…。

【基本情報】
・名称:ベニバナボロギク(紅花襤褸菊)
・別名:ショウワグサ(昭和草)、ナンヨウシュンギク(南洋春菊)
・学名:Crassocephalum crepidioides
・分類:キク科 ベニバナボロギク属の一年草
・原産地:アフリカ
・分布:日本では、1950年頃に九州から東北、沖縄に拡散
・花言葉:大切なのは外見より中身
■生態
ベニバナボロギクの株は直立して伸び、あまり分岐せず、草丈は数十cm程度。葉は茎に対し互生するが、葉の形は茎の上下で異なる。茎の上部ではほぼ卵形だが、中程なると不規則に浅い羽状の切り込みが入り、下部になると深く羽状に裂ける。葉の縁には、まばらな鋸歯がある。葉の基部は茎を抱かない。そして、茎や葉には、全体的に短い毛が生える。





■花
茎の先端で分岐した先に花序をつくり、数個の蕾をつける。蕾は円筒形で線状の総苞片に包まれ、花柄から萼片のようなものを介して繋がっている。花期は長く、夏から初冬に及ぶ。ベニバナボロギクの頭花には舌状花はなく、全てが細長い両性の筒状花からなる。頭花は始めに、うつむきながら朱赤色に咲き始める。筒状花は雄性先熟で、始めに雄性期となり、雄蕊から花粉を放出する。その後、雌性期になると雌蕊の花柱が2烈して巻き、他の花からの受粉が可能となり、自家受粉を回避する。花期が終わりに近づくと、雌蕊が伸びて頭花は上向きになる。






■果実
花が終わると放射線状に綿毛が広がり、先端部に雌蕊の痕跡が残る。やがて、綿毛はランダムにバラけ、ボロ布の様に見えるので、 ホロギクの名の由来になったと言われる。果実は、冠毛のついた痩果で風によって拡散する。



■ボロギク仲間
ベニバナボロギク、ノボロギク、ダンドロボロギクは、"ボロギク"の名を含み、頭花が筒状花のみで構成され、植物分類上は大括リでキク科サワギク連に属し、日本に帰化した雑草であることが共通点。海外の異なる地域から、明治以降に渡来した似た者同士の外来種が、日本でともに自生しているのは、何故だろうか。
ノボロギク(野襤褸菊、学名: Senecio vulgaris)は、キク科キオン属の一年草、または越年草で、ヨーロッパ原産。花期は通年で、花の色は黄色、葉は肉厚で切れ込みがある(詳細はここをクリック)。

ダンドボロギク(段戸襤褸菊、学名: Erechtites hieracifolia)は、キク科タケダグサ属の一年草で、北米原産。花期は、ベニバナボロギクと重なるが、花は薄黄色で、葉は羽状のものもあるが、茎を抱くようにつく。

■ベニバナボロギクと日本人
残念ながら、ベニバナボロギクと日本人の間には良好な関係は築けていないが、世界的にはベニバナボロギクは、熱帯や亜熱帯地域では、野菜や飼料として利用されている。これに着目して、琉球大学の研究グループが、"チッソ、リンおよびカリウム肥料がベニバナボロギクの生長形質に及ぼす影響"を公開した(詳細はここをクリック)。これは、ベニバナボロギクの生長に対する化学肥料の影響を調査したものだ。肥料を施した試験区を8区画設定した。①チッソ(N)、②リン(P)、③カリウム(K)、④チッソ+リン(NP)、⑤チッソ+カリウム(NK)、⑥リン+カリウム(PK)、⑦チッソ+リン+カリウム(NPK)、及び⑧無施肥。植物の栄養状態を把握するために、葉に特定の光を当て、光の吸収度合いを数値化したSPAD値を指標とした。葉のSPAD値は、N、NP、NK、NPK区においてP、K、PK区より高い値を示し、Nを施肥しない区では、最も早く落葉した。草丈、葉数および分枝数については、NPK区で栽培した植物体に次いでNKとN区の植物体で高い値を示した。また、Nを施肥しない区の植物体は、より早く開花することがわかった。全新鮮重と全乾物重では、NPK区に次いでNK区、N区の順に高い値を示し、P及びK肥料の単独施肥またはP及びKの混合施肥によって、全新鮮重、全乾物重及び生長形質への影響は認められなかった。
この研究は、試験区、すなわち畑地における実証実験であり、目的にあった野菜としてベニバナボロギクを育成する方法が提案された。山野や休耕地に咲くベニバナボロギクについても、計画的に施肥すれば、野菜として育成できる可能性がありそうだ。そのためには、日本人はベニバナボロギクを雑草としてではなく、美味しい野菜と認識する必要がある。出来るだろうか。


