クコ - 有用な観賞植物
クコ(枸杞)は、ナス科クコ属の落葉低木。原産地は日本を含む東アジアだが、実は中国原産で古い帰化植物との説もある。何れにしても、日本の在来種と言ってよいだろう。古くから漢方の世界では、果実や花、根、葉を生薬の材料とし、滋養強壮、血圧降下、解熱などに効能があるとされている。奈良にある久米寺開祖の久米仙人はクコを愛用し186歳まで長生きしたと"今昔物語"や"徒然草"で紹介されている。身近なところでは、赤く熟した果実を薬膳の粥の具や杏仁豆腐にトッピングされたりする。クコと人間は、実用的には良い関係を続けてきた。植物的には、ナス科の植物で、野菜の茄子と較べると、花も果実も形は良く似ているが小さいので、葉や枝に隠れがちで目立たない。夏から秋にかけて花が咲くが、野に咲く花としては珍しい淡紫色だ。秋から果実が熟し始め、赤く光沢のある輝くような果実ができる。昆虫であれば花を目指し、鳥であれば果実を啄むのに躊躇はないだろう。これらは何か特別な存在のようでもあり、鑑賞の対象としても優れている。有用でもあり、美しくもあるクコの実態は、果たしてどのようなものだろうか。

【基本情報】
・名称:クコ(枸杞)
・別名:カラスナンバン、カワラホオズキ、アマトウガラシ、英名:Chinese wolf-berry, Goji berry
・学名:Lycium chinense
・分類:ナス科 クコ属の落葉低木
・原産地:日本を含む東アジア(中国原産の古い帰化植物説もある)
・分布:日本では北海道から沖縄の平地に分布
・花言葉:長寿、健康、お互いに忘れよう
■生態
株元からは細い幹が多数伸びるが、人の背の高さ程度になると、先端は下向きに伸び、枝分かれも多く、こんもりとした塊になる。茎は上方ばかりでなく、地上をはうようにも伸び(匍匐茎)、枝先が地面に接すると発根して繁茂するので、やがて群生することもある。なお、繁殖は種子でも挿し木でも可能だ。葉は、先がやや尖った楕円形で、革質で縁がなめらかで、数枚ずつ集まるように枝から出る。クコの葉に寄生するクコフシダニによって虫瘤ができた葉は良く見かける。また、枝には所々に鋭い刺があるので、防犯目的の生け垣として植栽されることもある。




■花
花期は初夏から晩秋までと長く、株の中で花は順次咲くので、秋頃には花と赤く熟した果実が同時に存在する。葉の脇から1~4本の花柄が伸び、その先に蕾や花がつく。花は両性花で、形は茄子に似て花冠の先が深く5裂し平らに開く漏斗型で、5枚の萼が支える。花の中央に雄蕊5本と雌蕊が長く突き出す。充分に開花すると、長く白い雄蕊の花糸と黄色い花粉で膨らんだ葯が、花冠の淡紫色によく映える。花の構造上、自家受粉も可能なので、近くに他の株があることが望ましい。枝の葉の脇から花序を出すので、枝に沿って花が連なる。花の盛りが過ぎると、葯の花粉がなくなり、花の周辺が白っぽくなり、やがて花冠全体の色が白くなる 。








クコの花に集まる昆虫も様々。ミツバチなどは密を求め集まり花粉を媒介する。アリなどの目的は密、それともは樹液か?


■果実
花が終わると初秋には果実が出来る。始めは緑色だが、成長し熟すにつれ赤く変化する。果実は液果で、形状は長さ2cm程度の楕円体。果実の中には、歪んだ扁平楕円体の2mm位の種子が10~20個程度入っている。冬になっても果実は自然に落ちることなく、枝上に残る。その一部は鳥に啄まれ、遠くに運ばれて種子散布される。





■クコと日本人
所沢辺りでは、クコの群生地は見当たらず、人家の生け垣や、畑の脇に植栽されているのを見かける。伝統的に人間にとっては薬用や食用として有用な植物であり続けているが、現代人に取っては、直接的にはその恩恵は分かり難い。同じナス科の植物で、親しみのある有用植物は、ナスやトマトだ。ナスは花は紫色で黒紫色の果実を持ち、トマトは花は黄色く赤い果実を稔らせる。クコと比べるとこれらは、花の形こそ相似形だが、果実は圧倒的に大きい。栽培植物として長い歴史のあるナスやトマトは営々と品種改良が行われた成果なのだろう。しかし、ナス科一族と雖も、薬用目的が重視されたクコは別の道を歩んだ。その形態は鮮やかな淡紫色の花冠と立派な蕊群、そして小さくとも光沢ある赤い実ができるが、その組み合わせには鮮やかな美しさがあり、もはや観賞植物の領域に達している。現在では、クコの実はドライフルーツとなって一般に流通しているが、もし、クコが品種改良されトマトのような大きな果実ができれが、是非味わってみたい。どんな味がするのだろう。


