ニシキギ - 美点も特徴も謎も多い
ニシキギ(錦木)は、ニシキギ科 ニシキギ属の落葉低木で、日本の在来種。名の由来は、真っ赤で鮮やかな紅葉の美しさを"錦"に例えたため。スズランノキ、ニッサボクとともに世界三大紅葉樹と呼ばれている。他の顕著な特徴としては、枝につく翼だ。緑色の葉の延長のような翼に出会う機会はあるが、コルク質の翼はニシキギだけだ。また、葉に隠れて咲くような、小さな黄緑色の花は見落としがちだが、秋に熟す橙色の果実は美しく、庭や公園に植栽される理由は納得できる。ニシキギは、在来種であり由緒ある名前なので、平安時代の"倭名類聚鈔"や、江戸時代の貝原益軒による"大和本草"にも登場する。しかし、木材や民間薬としての一部の用途はあっても、葉や果実などは食用にはならず、詩歌や文芸などには縁がなく、やや存在感は薄い。また、生態的に株や花に雌雄の区別ができるのかとの疑問もあり、謎も多い植物だ。

【基本情報】
・名称:ニシキギ(錦木)
・別名:ヤハズニシキギ(矢筈錦木)、カミソリノキ(剃刀の木)
・学名:Euonymus alatus
・分類:ニシキギ科 ニシキギ属の落葉低木
・原産地:日本を含むアジア東北部
・分布:日本では、北海道、本州、四国、九州の低地、山野に自生する他、庭に植栽される
・花言葉:危険な遊び、深い愛情、あなたの運命、あなたの定め、あなたの魅力を心に刻む
■生態
諸説あるが、ニシキギは雌雄同株と思う。幹は地面から立ち上がり、上方で枝分かれするので、樹形は広がりやすく、樹高は3m程度になる。幹の樹皮は灰褐色で、縦に筋がはいる。冬芽が出る頃には、若い枝には節ごとに方向を変えながらコルク質の板状の翼がつく。この冬芽の配置からも分かるように葉は枝に対生し、葉の形状は長楕円形で、細かな鋸歯があり、先端が尖る。この葉は、秋になると鮮やかに紅葉する。




■花
初夏に葉の脇から集散花序を出し、数個以内の小さな黄緑色の花をつける。雄花らしきものは。花盤の中央に雌蕊らしき突起があり、周辺に4本の雄蕊があり、その先に黄色い葯がついている。花盤の外側には4枚の小さな花弁とその下に萼がある。一方、雌花らしきものは、雌蕊の先が多少長く、雄蕊の葯がない程度の違いだ。枝につく雄花と雌花の割合は、雄花のほうが多いように思う。花の後になる果実の数も、ほぼ花の数に相当するように見える。雌花だけが果実になるとすれば、果実の数はかなり少なくなる筈だ。そうすると、雄花らしき花は、実は両性花なのかもしれない。若しくは、雄花と雌花の構造は良く似ているので、両性花が時期によって雄性になったり雌性になったりしているのかもしれない。この点は、様々な見解があり謎が残る。



■果実
花の後には、若い果実がつく。果皮は黄緑色だが、次第に丸みを帯びてくる。熟すにつれ、果実の外皮は紫色を帯び、自然に裂けて橙色の仮種皮が露出する。 果実は蒴果で、1~2個の分果からなり、その中に種子がある。花と同様に、果実も翼付きの枝に鈴なりになる。果実には、人間には有害な成分(トリグリセロール)を含むが、野鳥が果実を食べて仮種皮を消化吸収して、種子を排泄して、種子が拡散される。






秋になると紅葉するが、その色調は環境によって黄色、ピンク、赤などに変化する。このため、紅葉が始まった頃は、1本のニシキギの中でも、陽当りの程度によってグラデーションになることもある、陽当りの良い場所では、葉は真紅に染まり見事だ。




■ニシキギと日本人
ニシキギの特徴といえば、赤く美しい果実や紅葉を思い出すが、枝につくコルク質の翼は、同じニシキギ種(Euonymus alatus)のケコマユミ、ケニシキギ、コマユミ、オオコマユミなどにはなく、ユニークなものだ。
このニシキギの翼について、興味ある解説が日本植物生理学会の記事に載っていた(詳細はここをクリック)。この翼はワインの栓のコルクと同質のもので、枝についていても光合成の役には立たない。コルク層の発達が特に生存・繁殖にとって不利でも有利でもなかったため、所謂中立的変異として残ったらしい。生物の形態の進化は、用不用説だけで決まるものではないらしい。また、園芸界の都市伝説では、ニシキギには、翼ができる個体とできにくい個体があり、野生種よりも園芸種の方がきれいな翼になりやすいとのこと。これもニシキギの謎の一つに加えておこう。


