アーモンド - 中央アジア起源の華麗なサクラ属
アーモンド(英名: Almond)は、バラ科サクラ属の落葉樹。原産地は遠く中央アジアだが、世界各地の乾燥した温暖な地域で栽培されている。サクラ属ではあるが、アンズ、モモやウメの近縁種で、果肉は薄く、種子の殻を取り除いた中心部(仁)を食用にする。ちょうどイチョウの果実の銀杏のイメージだ。アーモンドと言えば、風味の高いナッツとして食用にしたり、料理やお菓子の材料、アーモンドミルクにして飲料にしたりと、現代人にとってはお気に入りの食材だ。しかし、日本でのアーモンドの需要は、主に米国カリフォルニア州からの輸入に頼っている。日本には明治期に渡来したものの、本物のアーモンドの樹木を見る機会は、一部の植物園や庭園に限定されている。日本の気候は温暖であっても多湿であり、アーモンドの栽培には適していないこと、そしてアーモンドに似た多くの桜や桃が既に存在していたので、普及しなかったのだろう。しかし、このハンディを克服して、国産化の動きも始まった。また、良く見ると、少し大きめで色彩の鮮やかな花は多少異国風でもあり、現代の庭木としてもなかなか個性的だ。

【基本情報】
・名称:アーモンド(英名: Almond)
・別名:ヘントウ(扁桃)
・学名:Cerasus dulcis
・分類:バラ科 サクラ属の落葉樹
・原産地:中央アジア
・分布:日本では温暖地で、果樹や庭木として植栽される
・花言葉:花には永遠の優しさ、真実の愛、希望;果実には無分別、愚かさ
■生態
株から幹が直立し、枝は頻繁に分岐し横に広がり、樹高は数m程度になる。古い幹や枝は灰褐色で横方向に皮目がつき、前年の小枝は茶色を帯びる。葉は長楕円形で先は尖り、 細かい鋸歯があり、枝に対し互生する。



■冬芽
冬芽は新しい枝に、周期的につく。1箇所に1~3個程度集まってつき、冬芽の表面は白く短い毛に覆われている。春になると、冬芽の先端が赤みを帯び、蕾になる。冬芽は花芽であり、葉は開花後に出る。



■花
未だ葉のない枝に、花が咲く。咲き始めは花弁の縁が桃色で目立つが、開花が進むにつれて全体に淡い桃色となる。花の構造は、先端に小さな切り込みが入った花弁が5枚、それを支える赤紫色の萼も先が5裂し、花の中央には雌蕊の花柱を囲んで先端に黄色の葯がついた多数の雄蕊が並ぶ。花と枝の間は、モモと同様に、短い花柄でつながっているので、長い花柄を持つサクラとは区別できる。開花後に若葉が伸び始め、花弁の中央部や雌蕊と雄蕊の花糸が次第に赤紫色を帯びて、花の雰囲気は艶やかに変身する。このような花が、枝に隙間なく並ぶ様子は、見慣れた日本のサクラとは一線を画す。花は両性花で、通常はミツバチなどの昆虫によって他の木の花粉を授受する。やがて、花弁や雄蕊が落ちると、いよいよ花から果実のフェーズに移行する。






■果実
アーモンドの果実は、形は楕円体で、表面に密に短い毛で覆われている。果肉はモモのように厚くも柔らかくもなく、薄くて堅いので、食用にならない。食用にできるアーモンドの部分は、果肉の内側にある硬い殻を除いた"仁"という部分で、アンチエイジングの健康食品として脚光を浴びている。アーモンドは、元来乾燥した気候に適した植物なので、地中海沿岸や米国のカリフォルニア州で多く栽培されている。日本へは明治期にヘントウ(扁桃)の名で果樹として導入されたが、果実のなる時期が日本では梅雨に当たり、腐り易いためか、殆ど普及してこなかった。



■アーモンドと日本人
日本では、アーモンドと言えば、アーモンドチョコレート。1958年(昭和33年)に発売以来、現在ではグリコ、明治、ロッテなどが発売している。食べられる仁の部分をチョコレートで包んだ構造で、甘いチョコレートと、サクサクのアーモンドとの調和が絶妙。仁を包むチョコレートの部分が果肉にあたり、なかなかリアルな構造。望むらくは、モモまでとは言わないけれど、精々ウメ程度まで果肉部分のチョコレートが厚けれが病み付きになるのだが…。

国内でのアーモンドの栽培は、小豆島や鹿児島県、山形県、埼玉県などで行われている。海外のように大規模で自然のままの栽培方法とは異なり、日本固有の多湿に強い品種選定や、害虫対策などの課題があり、未だ試行錯誤が続いているようだ。高品質の国産アーモンドの普及に期待したい。