確定申告 - 年金生活者の心得

 毎年2月から3月にかけて、所得税に関し前年分の確定申告書を作成し、税務署に提出している。企業に勤めていたときには、他に収入はなかったので、企業が年末調整をして、その結果を個人に代わって税務署に申告してくれたので、殆ど気にすることがなかった。退職して企業から離れると、給与所得はなくなり、年金が生活資金となる。年金は、国の厚生年金の他に、企業年金もある。企業年金は、勤務先の変更や企業再編などがあると、年金支払い元も変わるので、前年末までに送付されてくる年金の源泉徴収書は数種に及ぶ。これらが収入金額等になる。一方、課税対象になる所得から差し引かれる項目もある。社会保険料や生命保険、地震保険、医療費、更にはふるさと納税や寄付金などだ。これらの控除額を申請し、税金の取られ過ぎを防ぎ、妥当な還付金を確保するのが確定申告の役割と理解している。

■方法
 今年1月に、税務署から"令和6年分 確定申告のお知らせ"の葉書が届いた。これは、国税庁ホームページの確定申告書等作成コーナーを利用した人に送られてくる。そこには申請書の受付期間の他に、申請書の作成方法について幾つかの例を示している。今回、目新しいのは、マイナンバーカードとマイナポータルとの連携で自動入力できたり、スマホによるe-Tax申請法などが紹介されていた。マイナポータル連携による自動入力は魅力だが、全てのデータが入手できるかは疑問だし、やり直しの人手入力もありそうだ。また自動入力のための環境整備にも少なからず手間と費用がかかると予想される。このため、今回も従来通り国税庁ホームページの確定申告書等作成コーナーを利用して、面倒な計算式を考慮せずに自動計算してくれた結果を、紙に印刷して申告書を作成し、税務署に郵送することにした。

税務署からの確定申告のお知らせ葉書

幾つかの申請書作成方法の提示

■必要なデータ
 典型的な年金生活者は、事業にはもう従事していないので、白色申告になる。申告に必要な書類は、相続など特別な事象がなければ、おおよそ次の通り。書類は年末を中心に、随時発生するので、抜けがないように収集しておくことが重要だ。
(1)収入に相当する公的年金などの源泉徴収書(国、及び企業年金)
(2)所得からの控除される項目の領収書など
・生命保険料
・地震保険料
・配偶者の収入関係資料
・医療費
・寄附金(ふるさと納税、公益団体への寄付など)

■入力
 国税庁の確定申告書等作成コーナー(https://www.keisan.nta.go.jp/kyoutu/ky/sm/top#bsctrl)を利用して、集めたデータを入力し、自動計算をすることにする。過去に、このコーナーを利用した場合は、その過去のデータを利用して、項目の修正、追加、削除をしていく。申請者の過去の保存データは、例えば"r6syotoku.data"と言う名称で、申請者が保存していることが前提だ。入力は対話形式で進む。収入金額や控除金額を入力すると、そのたびに確認画面も出るし、入力途中でもその時点での還付金額も分かるので、見通しが良い。また、聞き慣れない用語が出てくると、パソコンでは別画面で説明が表示できる。様々な工夫がされており、このアプリケーションは使い易いと感じた。
 入力で最も手間がかかったのが医療費控除だ。高齢になると病院にかかる機会が多くなるためだ。このため、表計算ソフト形式の医療費集計フォーム(iryouhi_form_v3.xlsx)だ用意され、入力データとして取り込めるようになっている。それでも申請書作成時間の半分位は医療費のリスト作成に費やした気がする。

国税庁の確定申告書等作成コーナーを利用して申告書を作成する

■申告書の提出など
 全て入力が終わると、pdf形式の申請書(ファイル名:r6syotoku.pdf)が完成する。これの控え部分を除き、添付資料を2ページ目の台紙に証拠として貼り付けて提出する。添付資料とは、本人確認書類(マイナンバーカードの写しなど)、各種保険料の証明書、寄付金の受領書などでかなりの量がある。添付書類の提出を不要にするには、e-Taxを利用すればよいのだが、パソコンで実施する場合はカードリーダーの購入が必要だったり、スマホ用電子証明書はAndroid™にしか対応していないなど、環境を整備するのは容易ではないと思われた。国税局には、アップデートを進めて、より簡単な手続きで納税ができるシステムを検討してもらいたい。
 自動計算で作成した申告書は全9ページで、予想したこととは言え、医療費控除の明細書が5ページもあった。入力データをチェックするにあたり、所得から差し引かれる金額のリストが、入力値に自動計算で補正値になっているので、分かりづらかった。入力値も表記してくれると確認し易い。

完成した確定申告書

 かつて企業が年末調整をしていた時代から、現在は人材の流動性が増し、副業も可能な時代になってきた。また、ふるさと納税など、個人が税金の納入先を選択できるようにもなってきた。そうなると納税方法は、一律的な企業による年末調整よりも、個人の生活スタイルに合わせて確定申告するほうが合理的に思える。今更だけど、サラリーマンでも若いうちから確定申告をしたほうが、社会制度の理解や納税意識の向上に有用ではないかと、退職した年金受給者は思う。