年賀葉書きじまい – 利便性の限界
■年賀状を貰うのは嬉しい
毎年、年末になると年賀状を作るのが、恒例行事になっている。新年の挨拶の習慣は、古代からあったようだが、明治時代に郵便制度ができ、手軽に遠方にも届けられる手段として1873年(明治6年)に葉書きが登場し、これを年賀状として使うようになってから、全国的な習慣となった。年賀状は新年を祝う気持ちの表明と、自分や家族の近況報告、相手に旧年中の感謝を伝えるのが目的だ。海外でも時期はずれるがクリスマスカードを送る習慣があり、これらは1年に一度、自分の現在の立ち位置を率直な気持ちで確認する普遍的な感情であり、良い習慣だと思う。
■年賀状作りは楽しくもあり、工夫も必要
年賀状の差出人は、年末の忙しい時期に、お世話になった多数の人々に葉書きを作成しなければならない。その手段として、昭和の時代には、彫刻刀で馬鈴薯に図柄を彫った芋版画や、より精巧で多色摺りも可能な木版画があり、それなりに図柄や内容を吟味したものだ。1977年(昭和52年)に理想科学工業から、黄色い箱に入った家庭用簡易孔版印刷器RISOプリントゴッコが発売された。印刷用の原紙を作るための光源ランプやら、インクや手動で押し付けるプリンタがセットになっていて、手書きの絵を多色刷りでプリントできた。色を重ねたり細かな表現は構造上できないが、意図する図柄を綺麗に印刷できたので、画期的な方法だった。やがて1990年代になると、パソコンやインクジェットプリンタ、デジタルカメラが普及し始めると、年賀状の作り方は一変する。デジカメによる個人的な写真の他に、インターネットを利用すると葉書きに適したテンプレート、イラスト、デザイン文字などを容易に入手でき、これらを部品として組わせて年賀状を構成する。表現の幅は飛躍的に拡がった。100mmx148mmの葉書きサイズに、ストーリ中心も好し、デザイン中心も好し、どのような展開にも対応できるようになった。
■通信手段の多様化
日本の郵便制度が出来てから150年余りが経過した。その間に戦後の電話の普及、20世紀末のインターネットの利用が、家庭のみならず個人レベルまで普及した。人口が減少している日本では、集配に人手がかかり、配達時間が必要な郵便制度はニーズが減って維持が困難になりつつあり、とうとう2024年10月1日から郵便料金は値上げした。今後もこの傾向は続き、特殊な場合を除き、郵便の利用はなくなると思われる。そうであれば、年賀の挨拶は、早晩インターネットを利用した方法になるだろう。郵便料金のみならず、印刷の手間も省け、合理的だ。
■年賀葉書きじまい宣言
これらの事情を考慮して、葉書きの年賀状は、2025年を最後にすることにした。今後は、電子的な通信手段により新年の挨拶をすることにする。但し、電子的な通信手段といっても、電子メールあり、LINEやSNSなどもあり一様ではない。ネットワーク上のサーバーにアクセスしてもらう方法も良いかもしれない。またコンテンツは、長年培われた年賀状レベルのものにするか、別の形式が良いのかも考える必要がありそう。それ以前の問題として、同年代でもネットをやらないのが正義と心得ている強者もいるので、どうしたらよいものか悩ましい。今後は送付先のメールアドレスの確認とともに、これらの課題を暫く考えて、新たな新年の挨拶のスタイルを探っていきたい。
