マユミ – 謎の秋美人
マユミ(真弓、檀)は、ニシキギ科ニシキギ属の落葉樹。名の由来は、材質が強くよくしなるため弓の材料に使われたとか、かつてマユミの樹皮で和紙を加工したものを檀紙(だんし)と呼んだところから檀と表記したとか諸説ある。日本の山野に自生するが、庭木としての需要もある。それは、赤い果実や種子、鮮やかな紅葉が秋の風物詩となり、鑑賞に値するためだ。一方で、新芽は山菜として天ぷらやおひたしになったりするが、成葉を食べると下痢を引き起こし、果実に至っては有毒で筋肉の麻痺を引き起こすので、少々付き合い方に気遣いが必要だ。しかし、有毒の果実は、コゲラやメジロなどの鳥は好んで採食する。これは自然界の不思議な摂理だ。

【基本情報】
・名称:マユミ(檀、真弓)
・別名:ヤマニシキギ(山錦木)
・学名:Euonymus sieboldianus var. sieboldianus
・分類:ニシキギ科 ニシキギ属の落葉低木ないし落葉小高木
・原産地:日本の在来種、中国でも自生
・分布:日本では北海道から屋久島まで
・花言葉:艶めき、真心、あなたの魅力を心に刻む
■生態
雌雄異株で鮮やかな果実は雌株だけに稔る。樹高は3~10mになり、枝はよく分岐し、こんもりとした樹形になる。幹の樹皮は灰白色で、縦の裂け目が走る。1年目の枝は、しなやかで稜があり、暗緑色をしている。葉は互生し、葉身は楕円形で細かな鋸歯があり、葉脈は目立つ。落葉樹なので、秋には紅葉するが、その時期でも緑色の葉は残り、一部の葉が綺麗に紅葉する。



■花
本年枝の葉の脇から花序を出す。成長すると集散花序を形成し、多数の小さな球形の蕾がつく。やがて、開花するが花は小さく、遠くからは目立たない。花の構造は白い花弁が4枚、萼片も4枚、雄蕊も4本あるのは共通だが、雌雄異株なので、雌株と雄株では花の形が異なる。雌花の雌蕊は周囲の雄蕊より長いが、雄花は雌蕊より周囲の雄蕊が長く、区別が可能だ。







■果実
晩春になると、雌花の後には未熟な淡緑色の果実ができる。果実は蒴果で、形は4稜のある角張った球体だ。秋になると、果皮は淡紅色に変化し熟す。やがて果皮が4裂し、赤朱色の薄い仮種皮を持つ4個の種子が現れる。この様子を繭(まゆ)にたとえ、繭実(まゆみ)が命名の由来であるとする説もある。 枝に鈴なりに鮮やかな果実がつく風景が、マユミの特徴を印象付けている。晩秋には、果皮から種子が落ちたり、鳥に菜食され運ばれたりして、冬になっても暫くは果皮は残る。







■紅葉
ニシキギ属の落葉樹は一般的に紅葉が綺麗だが、マユミは葉が秋遅くまで緑で残ることが多く、そのうちの一部が鮮やかに紅葉する。木全体としては、紅葉が美しいとは言えない。やがて葉は枯れて、落葉する。


■マユミと日本人
マユミは日本の在来種でもあり、実用面では功罪あるものの、秋の果実の美しさは格別で、庭木としても利用され、万葉集や源氏物語にも登場し、日本人にはお馴染みの植物と思っていた。ところが、市販のマユミは雌木しか出回っていないが、雌木1本で果実がなるとか言われている。そして、雌蕊の花柱には短いものと長いものあって、雄花と雌花に見られていたようだが、雌蕊の花柱の短いものは結実しにくい傾向があるだけで、雌雄同株とする新しい説があるとのこと。そうすると果実のならない雄株は存在しないのだろうか?…などと、物好きな者どもが首をひねっているが、そんなことは知ったことじゃないとマユミは思って人間界を眺めているのだろう。本当はどうなのか、未だ謎は残る。