オニノゲシ - 一目瞭然の悪人面
オニノゲシ(鬼野芥子)は、キク科ノゲシ属の越年草。ケシ科のケシ(芥子)とは葉が似ているだけで、全く別の種類。欧州原産で、世界中に帰化している。日本では、1892年(明治25年)に東京で"発見"され、現在は日本各地で道端や畑地で自生している。日本には在来種で同属のノゲシ(野芥子)があり、姿形はよく似ているが、オニノゲシは葉に光沢あり、葉縁のトゲは痛いほど硬く、やや大きく荒々しい感じがある。ノゲシにオニを加えた命名は素直に納得できる。タンポポにそっくりな黄色の花を咲かせるが、株には多数の花をつけ、春から秋まで長い間咲き続け、草丈は1m程度にもなり、尖った葉の異様なボリューム感は半端ではなく、周囲の雑草を圧倒する勢いだ。この異国からの渡来人は、どのような性格をしているのだろうか。

【基本情報】
・名称:オニノゲシ(鬼野芥子)
・別名:花叶滇苦菜(中国名)、spiny sowthistle(英名)
・学名:Sonchus asper
・分類:キク科 ノゲシ属の越年草
・原産地:欧州
・分布:日本では全国各地、また世界中に帰化
・花言葉:毒舌
■形態
花期は春から秋だが、冬はロゼット状の葉が残って寒さに耐え、春を迎える。しかし、温暖な地域では季節に関係なく咲き続ける傾向がある。人家に近い日本全国の畑地や道端で見かけ、草丈は1m程にもなり、茎は中空で5~6個の稜角がある。春になるとロゼット状に広がった中心から茎が伸びる。葉の形はこの時から既に、オニノゲシ特有の形をしている。葉は羽状に裂けるものが多く、葉質は硬くて光沢がある。縁には鋭い棘があり触れると痛い。葉の基部は茎を両側から挟み込むように密着し、その先は丸く張り出す。これがノゲシとの際立った違いだ。上部の茎には腺毛があるが、花柄にはない。この腺毛が生えるタイプをケオニノゲシ、無いタイプをケナシオニノゲシ(狭義のオニノゲシ)と区別することがあるが、このような変種扱いの曖昧さは、勢いのある雑草の特徴かもしれない。また、因みに在来種のノゲシと本種のオニノゲシの間にアイノゲシと呼ばれる雑種があり、姿形はそれぞれによく似ており、繁殖場所もほぼ同じだが、不稔と言われている。似た者同士の接触は変化の兆しになるようだ。





葉の基部は茎を両側から挟み込むように密着し、その先は丸く張り出す (2024年11月22日 所沢市)


上部の茎に腺毛があるがあるが、これがケオニノゲシか (2024年11月22日 所沢市)

■花
春から秋にかけて長期間にわたり、タンポポとそっくりだが、少し小さめの黄色い花を咲かす。茎から枝分かれして、その先に頭状花をのせるが、1本の枝には数個の花がやや散らばってつく。花はタンポポと同様に、全て舌状花で構成されている。開花は、頭花の周辺から中心に向かって、舌状花が咲き始める。始めに舌状花の中の筒状の雄蕊から花粉を出し、その後に雄蕊の上に雌蕊の花柱が伸び柱頭が2裂する。この時間差によって雄性先熟のルールにより、自家受粉を防いでいる。繁殖は、昆虫の媒介による花粉の授受により行われる。





■果実
花が終わると、白い綿毛のような冠毛ができ、その基部に果実がつく。果実は痩果で、扁平な楕円体の両面に縦筋がある。この冠毛により、風が吹くと果実が空中に拡散され、やがて別の土地で発芽する。また、冬になり茎が枯れた後にも、地中の株からロゼッタ状に葉を残し、春が来ると蓄えた栄養分で繁殖期に逸早く成長する。




■オニノゲシと日本人
オニノゲシは何か役に立つのだろうか。近縁のノゲシと同様に、茎が立つ前のロゼット状の葉は、実は茹でるとシャキシャキして刺も気にならない美味しい野草であり、おひたしや胡麻和えに調理できるらしい。また、駆除のため根から引き抜いたオニノゲシは、山羊の餌になるとの記事もあった。しかし、馴染のない新参者を手なづけ、どうにか利用できるようにするには試行錯誤が必要だ。勇気のある人は新たな調理や飼料に挑戦するかもしれないが、凡人は季節感もなく生育をし続けるオニノゲシの姿を、何の関心もなくタンポポの花を眺めるように見ているだけである。