レンゲショウマ - 幽玄な高嶺の花

 レンゲショウマ(蓮華升麻)は、キンポウゲ科レンゲショウマ属の多年草。日本の固有種で1属1種。名の由来は、花がハス(蓮)に似ており、葉がサラシナショウマ(晒菜升麻)に似ていることから。夏の盛りに涼しげに下向きに咲く神秘的な花は、"森の妖精"とか"森のシャンデリア"とか呼ばれ人気がある。奥多摩の御岳山には群生地があり保護されているが、各地の自生種は乱獲による絶滅が危惧され、各地の自治体が絶滅危惧種に指定しているところもある。花の美しさ故に、過酷な運命を背負ったレンゲショウマだが、最近は株分けや種子に依る栽培も盛んになり、身近な場所でも楽しめるようになってきた。果たして森に自生するものと、庭先に植栽されるものは、等価と言えるのだろうか？

【基本情報】
 ・名称：レンゲショウマ(蓮華升麻)
 ・別名：クサレンゲ(草蓮華)
 ・学名：:Anemonopsis macrophylla
 ・分類：キンポウゲ科 レンゲショウマ属の多年草
 ・原産地：日本
 ・分布：東北地方南部から近畿地方太平洋岸の湿気の多い林に自生。園芸用には各地で植栽。
 ・花言葉：伝統美

■生態
 レンゲショウマの地下茎は横に伸び、節から茎を出す。葉は茎の下部につき、2～4枚の小葉がつく三出複葉でやや複雑だか、個々の小葉の形は卵型で、葉の両面ともに無毛で、葉縁の鋸歯は粗い。葉が出揃う頃、花茎を上に伸ばし、茎先に疎らな円錐花序を作る。夏になると、花弁の先が藤紫色をした白い花が咲く。花が終わり果実ができる頃、地下では次年の芽が形成され始める。晩秋には地上部の茎は枯れ始め、冬芽が成熟する。

■花
 花序に出来た蕾は球形で、表面は褐色を帯びた赤紫色の萼(外花被)に覆われている。開花を始めると、外側の萼の内側にも白い数枚の萼があり、これらはほぼ平らに開く。これらの萼に囲まれるように中央が膨らんだ円柱形のように10～12枚の花弁(内花被)がある。花弁の先は藤紫色をしている。これらの花弁に囲まれて、2～5本の雌蕊と多数の雄蕊がある。雌蕊の花柱は白くて細長く、花弁の先を超えて伸びる。雄蕊は、キンポウゲ科独特の力強さがあり、太く黄色い葯から花粉を出す。白い花被は薄く、太陽が当たると光は半ば透過し、逆光だと輝いて立体的に見える。また、雨の日には花被のあちこちに水滴が載り、花の形を際立たせてくれる。花期の期間には、花序はゆっくりと個々の要素が変化していくので蕾、花、未熟な果実が混在する。また、花粉の受け渡しは、マルハナバチなどが行っているようだ。

■果実
 花が終わり、花弁が落ちると、雌蕊の部分が太く緑色になり、未熟が果実が出来る。果実は袋果(ふくろか)と呼ばれ、熟すと裂開して、種子が出る。レンゲショウマの繁殖は、この種子による方法のみならず、地下茎による栄養繁殖の方法も可能だ。

■レンゲショウマと日本人
 日本固有のレンゲショウマは、真夏の暑い時期に暗い森の中で、白い花弁を開きながら点々と宙を浮いているように咲く姿を"森の妖精"になぞらえた。このような風景に遭遇するには、遠方にある御岳山のような山野の群生地を訪れなければならない。文字通り、レンゲショウマは高嶺の花だ。北海道の実家にも庭にレンゲショウマの株があり、帰省するとちょうど花盛りで、植物としてのレンゲショウマの観察はしてきた。これはこれで大きな楽しみだ。だが、御岳山のレンゲショウマとはだいぶん雰囲気が異なる。御岳山では、森があり、涼しい湿気のある空気があり、レンゲショウマは自然の一部として"森の妖精"になり、自然の幽玄の世界を感じさせる。自生が良いとか、栽培が便利とかいう問題ではなく、それぞれにメリットはある。しかし、たまには自生地に行ってみたい。