新交響楽団第266回定演 - 硬派と革命児
3ヶ月毎に開催されるアマチュアオーケストラ新交響楽団(新響)の第265回定期演奏会に出かけた。会場は池袋の東京芸術劇場。今回のプログラムは、ヨーロッパで長年活動していた湯浅卓雄の指揮で、オネゲルとストラヴィンスキーの作品。オネゲルはフランス6人組の一人でスイス人。6人組の中では新古典主義的な手法を使いながら、独自の主張をする硬派。一方、ストラヴィンスキーは現代音楽の革命児で、バレエ音楽を始めあらゆる分野で作品を残した。この両者の組み合わせは、如何にも新響らしいプログラムだ。
1曲目は、オネゲルの交響詩"夏の牧歌"。オネゲルの管弦楽曲と言えば"ラグビー"とか機関車の"パシフィック231"の様なダイナミック作品もあるが、"夏の牧歌"はアルプス地方の朝の情景を描いた処女作。弦楽器と一管編成のシンプルな編成で、大変分かり易い曲だった。
2曲目は、やはりオネゲルの交響曲第3番"典礼風"。楽器編成は三管編成。第2次世界大戦直後に作曲され、3楽章構成。第1楽章"怒りの日"、第2楽章"深き淵より我は叫びぬ"、第3楽章"我らに平和を与え給え"。何か宗教的な雰囲気もするが、レクイエムのような定型的なものではなく、第2次世界大戦でオネゲルが経験した不条理を"鳥の主題"に託して表現された独自なものだ。果てしなく自問自答を繰り返し、何やら哲学的な難しさを感じる。ドビュッシーやラベルのようなフランスのエスプリとは別世界だし、ハッピーエンドの世界でもない。こちらは大変難しい曲だった。
3曲目は、ストラヴィンスキーのバレエ組曲"春の祭典"で、第1部"大地礼賛"、第2部"生贄"の全曲版。楽器編成は、特殊な楽器や様々なパーカッションが追加され、ステージは満杯。従来の印象主義的な香りがする"火の鳥"や"ペトルーシュカ"とは一線を画し、原始時代の儀式をベースにした超自然的ストーリ、目まぐるしく変化する旋律や強烈なリズムに溢れ、音楽は進行していく。これ程大規模な管弦楽を、CDなどの再生装置で聞くと、混濁や音域の狭さを感じてしまうが、やはり生演奏の臨場感は素晴らしい。本来のバレエを伴う春の祭典が初演されたのは、百年ほど前の1913年。バレエの振付もさぞかし難しかったと想像する。今度は、バレエ付きの本物の春の祭典の舞台を見てみたいものだ。


