タケニグサ - のっぽで厄介な変わり者
タケニグサ(竹似草)は、ケシ科タケニグサ属の多年草。日本の在来種。名の由来は、茎が中空なので竹に似ているとの説が一般的。また、異国風の姿を思わせ、ベトナム中部のチャンパ地方に由来すると思われ、葉が菊に似ているのでチャンパギク(占城菊)の別名もある。地表の安定していない地面に、いち早く進出する先駆(パイオニア)植物の代表的雑草。草高は2mにも及び、直立する白い茎と菊のように深い切れ込みが入った葉、そして多数の花がついた円錐花序が野性的で独特な風貌を備えている。このため、欧米では観賞用に植栽されている。そう言えば、北海道のガーデン街道の一つでは、園芸植物のように植えられていた。葉や茎の乳液に有毒物質アルカロイドを含み、誤って口にすると大脳中枢の麻痺など命にかかわる危険性がある一方、古来皮膚病やたむしの治療に民間療法として使われてきた。人とは、付かず離れずの関係のようだ。夏に所沢近辺を散歩すると、道路脇に圧倒的な迫力で繁茂する雑草タケニグサの生活史を探ってみよう。

【基本情報】
・名称:タケニグサ(竹似草、竹煮草)
・別名:チャンパギク(占城菊)、ササヤキグサ(囁草)
・学名:Macleaya cordata
・分類:ケシ科 タケニグサ属の多年草
・原産地:日本(本州以南)、中国、台湾、ベトナム
・分布:日本では、植栽を含めると北海道を含めた全国
・花言葉:素直、隠れた悪
■形態
春になると、株元より茎が伸び若葉が出る。しかし、なかには秋に葉を出し越年する株もある。葉にキクのような切れ込みがあるが、物理的にはかなり大きい。葉は互生。葉の裏や茎は粉をふいたように白っぽい。茎の先には、円錐花序がつき、草の高さは2mにもなる。



■花
茎の先から、花序は真っ直ぐに長く伸びる。花は下の方からゆっくりと開いていくので、花序の先には蕾、中程に花、基部には若い果実が同時に存在する期間がある。蕾は最初は黄緑色、成長すると白い楕円体になるが、表面の白いものは花弁ではなく萼。開花すると萼は落ち、雄蕊と雌蕊が露出する。雄蕊は多数あり白い花糸の先に葯がある。雌蕊は花柱が白く、その先の2分裂した柱頭は赤味を帯びる。タケニグサは虫媒花でもあり、風媒花でもある。花序の中で、隣接して花が咲き進んでいくのは都合が良く出来ている。







■果実
受粉した花の雌蕊の花柱は、白から山吹色に変化して果実をつくる。果実は扁平で長楕円形で、枝から下に垂れる。花序全体の生育が進むと、枝に大量の果実がぶら下がる。成熟すると、その表面は白みを帯びる。果実は蒴果で、中に6個程度の黒い種子がある。風が吹くと中の種子がカサカサと音を立てて揺れるので、ササヤキグサ(囁草)という別名もある。この種子には、脂質などに富んだエライオソームを持ちアリを誘引するので、種子が地上に落ちるとアリによって散布されることがある。



■タケニグサと日本人
タケニグサは、未だ植物が育っていない陽当り良好な荒地に、真っ先に成長するパイオニア植物だ。そう聞くと、何か強力な侵略的植物に思えるが、実態は異なるようだ。ケシ科のタケニグサは大量の種子を作り、アリの助けもあり、周辺に種子を撒き散らす。春の発芽は他植物より遅めなので、そこが陽当りの良い場所ならば育ち、そうでなけれは前年の枯死体が周辺の植物の養分になる。種子は地中で生き延びるが、その先も情況が変わらなければ消えていく。結局、繁殖は陽当り次第なので、人との共存は可能かもしれない。植物としての生き方には共感できる。一方、欧米人がタケニグサを観賞用に栽培するとは驚きだ。構成要素も単純で、繊細さに乏しく、ほぼ夏季限定。良い点は大型で、周りを圧倒するダイナミックな姿形。こればかりは趣味の問題なので、蓼食う虫も好き好きとしか言えない。日本人にとってタケニグサとは、生き方には共感できるところはあるが、異形な容姿には少し引いてしまう、微妙な関係かもしれない。