ナガバギシギシ - ザ・雑草
ナガバギシギシ(長葉羊蹄)は、タデ科ギシギシ属の多年草。日本で生育するギシギシ属の植物には、4種類ある。日本の在来種のギシギシ、欧州原産で明治時代に渡来したナガバギシギシ、エゾノギシギシ、アレチギシギシ。これらは、何れも日本各地の市街地や人里周辺の荒地に跋扈し、代表的な雑草として根付いている。ギシギシとは、穂を振ると"ギシギシ"と音を立てるほど、鈴なりの花や実が鳴るとの説がある。また、ギシギシは薬用にもなり、花の形が羊の爪に似ているので、生薬名を"羊蹄"として漢字を当て嵌めた。雑草にしてはトピックスが多そう。当地では、ギシギシの仲間では、ナガバギシギシが優勢。何も無い春の荒地に逸早く葉を出し、人の背ほどの高さに達すると、花や実をつけて、初夏には早くも株は褐色に変化する。この時期の草原には、緑の雑草が繁茂する中、褐色になったナガバギシギシが電信柱のように立っているのは強烈に印象に残る風景でもあり、この植物の特異性と雑草としての強さを感じさせるものでもある。

【基本情報】
・名称:ナガバギシギシ(長葉羊蹄)
・別名:英語名はCurly dock
・学名:Rumex crispus
・分類:タデ科 ギシギシ属
・原産地:欧州、西アジア
・分布:日本では北海道から沖縄の荒地や路傍
・花言葉:押しの強い
■生態
茎は直立して伸び、上部で枝分かれする。葉には、根元につく根出葉と、茎につく葉がある。根出葉は長楕円形で、長い葉柄があり、縁は細かく波打つ。上につくほど葉は小さく、葉柄は短くなり、互生する。長い総状花序を構成し、花は多段に密に輪生する。雌雄同株で両性花を持つ。



■花
枝分かれした花茎にそれぞれ総状花序をつくり、緑色の目立たない花を輪生させる。花被の外に出た黄色い雄蕊の葯が見えるので、花だとわかる。茎から伸びた葉柄の先には、順番に3枚の外花被(萼相当)、3枚の内花被(花弁相当)、雄蕊、雌蕊がつく。雄蕊は6本で黄色い葯がつく。雌蕊は1本だが、3本の花柱がある。



■果実
果実は痩果で、3枚の内花被が大きくなり果実を包む。果実の内花被は広卵形、縁にギザギザはなく、中央にこぶ状の突起があるがその大きさはばらつく。果実はこの中に入っているのではなく、内花被3個に包まれた部分に1個だけある。果実は3稜形で茶褐色。果実を含む花被は、部分的に赤くなり、やがて褐色になると、内花被を翼として、風によって運ばれる。ギシギシの仲間は、目立った花弁もなく、密の分泌もないので、昆虫には相手にされないのだろう。しかし、土壌に埋められた種子は、20年後でも8割以上の発芽が可能との報告もあり、雑草らしいしたたかな生き様だ。




■ナガバギシギシと日本人
ナガバギシギシの仲間で、在来種ギシギシについては根を生薬にしたり、若い芽を新鮮野菜のように扱っだ事例はある。しかし、今の日本では、ナガバギシギシにそこまでの役割を求めていないだろう。原産地のヨーロッパでは、ハーブティーとしてのニーズはあるようだが…。現在のところ、ナガバギシギシは侵略的外来種として指定されていない。しかし、最近は在来種ギシギシとの交雑種の存在が明らかになった。交雑種の問題は植物界に限らず、動物界でも先を見通せない課題となっている。そのためにも、タフな生命力を持つ雑草ナガバギシギシについては、今後も注目していきたい。